幸福の増税論vs日本を滅ぼす消費税増税
井手英策さんの「幸福の増税論」を読んだ後、思考を相対化する目的で、対極に位置するように見えるこちらの本「日本を滅ぼす消費税増税」を読んでみました。ただ、2012年とやや以前の本。
読んでみたところ、意外と、菊池さんの議論は井手さんの議論と乖離しているわけではなかった。
新自由主義や小泉構造改革への批判など、立ち位置が重なっていたのは意外な発見でした。
分岐点となるのは、「消費税増税なしで、社会保障費が賄えるかどうか」。
さらに言えば、菊池さんの、「緊急補正予算を各年20兆円支出を5年間実行することで経済が活性化して税収が増える、日本が成長軌道に乗る」という予測(図表6-1=182p)が、ありうると考えるか否かです。
この100兆円の財源については、40兆円~は「埋蔵金」をあてる、その後は「景気回復で税収が増えるので自然増収を新規の政府投資に充てる」。残りは国債発行、とのことです。
この点、井手さんは、他のOECD諸国の状況からして、一定程度豊かになった国においてはこれまでのような成長は見込めない、成長に頼らず維持していける仕組みを作るべき、と論じています。
今後も「成長」に頼り続けられるのかがそもそも懐疑的、との立場からは、この本の議論は相当楽観的だという感覚がぬぐえませんでした。あまり説得力を持って受け止められなかった要因は、上記予測の根拠となる「図表6-1」の根拠がよくわからなかった、という点が大きいかと思います。
「均衡財政を打ち破れ」。この議論も、「支出を増やせば増収して結局成長するのだ」という未来を信じることができればいいものの、素人考えですが、通貨価値がダダ下がりして激しくインフレに傾いてしまった国々の例に思いをはせると、やはり躊躇せざるをえないものがあります。