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「生きがい」は日常にある〜「生きがい」についての文献を調べてみた(1)

日本で最初の生きがいの研究を調べてみた

SNSで見つけたIKIGAIマップとの出会いや翻訳をきっかけに「生きがい」という言葉・概念が、日本独自であることを知りました。

「生きがい」という言葉こそありましたが、戦後高度成長期以前には、くわしい考察や研究が行われきたわけではなかったようです。

「生きがい」についての初めての体系だった研究として神谷美恵子氏の『生きがいについて』が1966年に出版されており有名です。

『生きがいについて』は、以降の様々な生きがい研究の出発点になっていますので、少し取り上げてみましょう。

『生きがいについて』とは何か

著者の神谷氏は、精神科医として、らい病に苦しむ愛生園の多くの患者さん達と向き合い、精神医学的調査を行う中で、半数の人が「将来になんの希望も目標も持っていない」「毎日、時をむだにすごしている」などと悲観的に捉える人がいる一方、少数ですが生きるよろこびを感じながら前向きな回答をしている人がいることに気づきました。実際に会ってみたところ、彼らは決して虚勢ではなく「いきいき」と前を向いていると感じたことがきっかけで、生きがいについての研究をしようと試みたそうです。

同じ条件のなかにいてもあるひとは生きがいが感じられなくて悩み、あるひとは生きるよろこびにあふれている。このちがいはどこから来るのであろうか?

「生きがい」とは何か?

神谷氏は、本書で「生きがい」という言葉について、次のように述べています。

フランス語でいう存在理由(レーゾン・デートル)とあまりちがわないかも知れないが、生きがいという表現にはもっと具体的、生活的なふくみがあるから、むしろ生存理由といったほうがよさそうに思える。

「生きがい」とは「レーゾン・デートル」と比べると、より日常的な言葉であり、生活に密着しているということです。

「生きがい」の分類

神谷氏は、生きがいの対象の分類として、以下の7つを挙げています。

1. 生存充実感への欲求をみたすもの(日常のささやかな喜び)2. 変化と成長への欲求をみたすもの(学問、旅行、登山、冒険、物の収集)3. 未来性への欲求をみたすもの(種々な生活目標、夢、野心、卑近なものから壮大なものまで含む)4. 反響への欲求をみたすもの(共感、友情、愛、他者からの承認、他者から必要とされること)5. 自由への欲求をみたすもの(人の卑近・卑小さから、広く解き放つ物事や人物)6. 自己実現への欲求をみたすもの(その人でなければならない独自性)7. 意味への欲求をみたすもの(自分の存在意義の感じられるようなあらゆる仕事や使命)

ここで注目すべきことは、上記の分類は「金銭的な対価を得る」とはそれほど関係がないけれども、その一方で仕事を通じて経験し得ることができるものは多分に含まれています。

神谷氏の「生きがい」の研究から見たときには、「お金が手に入る・入らない」にかかわらず、人が日々の行為を通じて上記の欲求を満たすことができる、ことが「生きがい」であり「生きがい感」を感じられる、と言うことだと理解しました。

「おわりに」の中で、神谷氏はこうも述べています。

現代日本の社会、さらには現代文明と人間の生きがいの問題はますます大きくのしかかってくるであろう。現代文明の発達はオートメイションの普及、自然からの離反を促進することによって、人間が自然のなかで自然に生きるよろこび、自ら労して創造するよろこび、自己実現の可能性など、人間の生きがいの源泉であったものを奪い去る方向にむいている。どうしたらこの巨大な流れのなかで、人間らしい生きかたを保ち、発見して行くことができるのであろうか。

神谷氏が予見したように、技術の発達によって便利になることと、人がいきいきと生きがいを持って生きていくことは別のことであり、むしろ「生きがい」を奪い去る方向になっている側面もあるのは間違いないでしょう。

人が行う必要が減っていく時代の波がそこまで来ている今だからこそ、人がいきいきと過ごすための生きがいが重要になっていくのです。

『生きがいについて』は、先日からNHKの『100分 de 名著』の題材として取り上げられはじめたようです。このシリーズは難解な本をわかりやすく解説してくれるので、こちらも合わせて見てみると良いでしょう。

ikigaiの旅は続く。。。


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