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展覧会 #26 松谷武判 Takesada Matsutani@東京オペラシティアートギャラリー
今回東京オペラシティアートギャラリーを訪れた目的は、若手作家の育成・支援を目的として企画されている「Project N」という展覧会シリーズを観ること。でも美術館のメインは企画展なので先にそちらを鑑賞しました。
「具体」からパリへ、パリから世界へ飛躍した松谷武判の全貌を総数200点以上で大回顧。
半世紀以上パリを拠点に制作し、改めて国際的声価が高まる松谷の、今なお走り続ける姿を見せる国内初の包括的な展覧会。
「具体」といえば、数年前にこの美術館で開催された白髪一雄の個展がとても面白かったことを思い出します。
展覧会は5章で構成されていますが、展示にはキャプションや解説がついていません。
紙の作品リストには各章の解説と見取り図に作品番号が付いたものが載っているので、それを頼りに展示を観ていくことになります。
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松谷武判(1937-)は、60年を越える活動を通して、物質が示す表情や肌理、存在感と生命の波動、流動を交錯させる優れた制作を続けてきました。
う~ん、イントロダクションから難しい。こういうタイプで展示の中にキャプションや解説の助けがない場合は、たいてい途中で心が折れるだろうなと予測。
初期から「具体」での飛躍へ:「新素材」ボンドで未知の表現を拓く。
「抽象的」であることを標榜した具体美術協会にあって、抽象的でありながら官能的な暗示や連想を誘う松谷の作風は、きわめてユニークな存在でした。官能性や生命性、時間や運動、目には見えない「力」を、フォルムと物質の両面から語りかけるような表現として成立させること。それが松谷の出発点であり、少しずつかたちを変えながら生涯にわたって探求していくテーマでもあるのです。
「官能的」というのはすごく納得できました。
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ビニール素材が皮膚をイメージさせて、色使いも生々しい。
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口や瞳を連想させる形。このシリーズは見ていると背中がゾクっとする瞬間があります。
パリ時代初期:版画とハードエッジ
1966年に松谷は渡仏。パリを拠点に、当時現代アートの最前線であった版画の領域で新たな取り組みを開始する。平面メディアにおける空間性と時間性の探求から、やがて表現は幾何学的であると同時に有機的なフォルムと鮮烈な色彩による色面を特徴とするハードエッジの表現に移行。
この時期のシルクスクリーン作品はカラフル。
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「幾何学的であると同時に有機的なフォルム」というのも何となくわかる。
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紙と鉛筆から生まれる新たな挑戦:「黒」の世界での新境地。
1970年代後半、松谷は改めて紙と鉛筆という身近な素材を用いて制作行為の始原へと溯行しはじめます。やがて黒のストロークで画面を塗り込め、生命的な時間を胚胎させる表現を確立。ボンドによる有機的な造形にも改めて取り組み、そこに鉛筆の黒を重ねた作品で新境地を拓きます。永遠への射程を秘めた「流れ」のテーマが重要性を増し、以後の松谷はさまざまな作品系列やモチーフを行き来しながら、多様な作品を生み出し続けていきます。
黒の世界はかなりストイックな印象で、ちょっと引き気味に観ていました。
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その中で興味を引かれたのがボンドを流し込んだ作品シリーズ。
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表面にできた柔らかいひだの不思議な形状が面白い。
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このタイプの作品については、4階の映像コーナーで制作の過程を見ることができます。
松谷の今:融通無碍(ゆうづうむげ)の制作と表現レンジの拡大。
近年の松谷は、ひとつの手法や表現にとらわれることなく、その制作はますます自由で大らか、大胆にして密やかな繊細さをたたえて進行しています。日々出会ったモノや感覚に触発されながら、「日記」のように制作する松谷。今なお新鮮な発見と驚きに満ちた作品を自らの身体と五感を働かせて生み出し続けています。
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この後4階の展示に進み、「紙作品にみる形成期の模索と制作の裏側」では、ドローイングやスケッチブックなど制作の下地になる資料や制作風景の映像などを見ることができ、少し理解が追い付きました。
最初に思ったとおり3階の展示は途中で気持ちが折れました。
やはりこういうタイプの作品は展示の中で解説の助けがないとしんどいことを実感。
最後までお読みいただきありがとうございます。
松谷武判 Takesada Matsutani
会期:2024年10月3日(木)~12月7日(火)
東京オペラシティアートギャラリー
開館時間:11:00 ~19:00
東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティビル 3F
交通アクセス:
京王新線 初台駅 東口(直結) 徒歩5分
渋谷駅より 京王バス(渋63、64、66)都営バス(渋66)