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展覧会 #21 福田平八郎×琳派@山種美術館

日本画家 福田平八郎 (1892年~1974年)の没後50年記念展覧会を観に行きました。
山種美術館では12年ぶりの開催となる今回の特別展では初期から晩年の絶筆に至る作品と、平八郎に影響を与えた古典として琳派の作品が紹介されています。

【特別展】没後50年記念 福田平八郎×琳派
会期:2024年9月29日(日)~12月8日(日)
観覧料:一般 1,400円、大学生・高校生 1,100円、中学生以下 無料

山種美術館
東京都渋谷区広尾 3-12-36


この日はあいにくの雨模様。
恵比寿駅西口から徒歩10分くらいで美術館に到着。中に入ると思ったより多くの人が訪れていました。


福田平八郎の芸術

福田平八郎は大分県生まれ。京都の美術学校で学び、1918年(大正8年)に帝展に初入選を果たしました。
大正期は写実的な作品を制作していましたが、昭和に入ると単純な色面と大胆な構図による独自の芸術を確立していきます。

平八郎は自身の画風について「写実を基本とした装飾画」と述べています。

こちらは唯一撮影可能だった作品。単純な色面と大胆な構図という特徴が良く表れている一枚。

《彩秋》 1943年(昭和18年)

私が面白いと思ったのは、一つの絵に写実的な部分と単純化したデザイン的な部分があり、それが違和感なく融合している作品。

《筍》1947年(昭和22年)※チラシより

こちらの作品も餅は陰影を使った表現、折り鶴はかっちりとした輪郭線で描かれています。

《紅白餅三鶴》1960年(昭和35年)※チラシより

花菖蒲》という作品も花の部分が写実的に描かれているのに対して茎と葉は少し平面的に見える描写が面白いです。

展示の中でひときわ目を引いたのは《》(さざなみ)という作品。
同じタイトルの作品がいくつか存在していて、文化遺産オンラインで出てきた作品のリンクを参考までに載せておきます。

出品されていた作品(個人蔵)は青色の波模様が数えるほどで抽象画のように見えるものでした。水面のきらめきを捉えたという作品は他とは明らかに違う雰囲気。すごくポップで現代的な表現。

ウキをにらむ眼を水に移して見ますと、肌にも感ぜぬ微風に水は漣をたてて美しい動きを見せることに気がつきました。(中略)
波の形は瞬間の動きでまことに掴みにくいものです。その写生にはいろいろな試みをして実態を掴むのに苦心しました。結局よく見ることが何よりのたよりとなるものです。

《漣》の解説文より福田平八郎の言葉

スケッチ作品には写生について述べている言葉が添えられていて、これはスケッチ以外の作品を観るときにもヒントになって良かった。

写生の対象から、まず何を一番強く感ずるかと言うと、形や線よりも先に色彩を強く感じる。対象の色彩を追求していくと自然に対象の形を捉えることができる。

展示の解説文より福田平八郎の言葉

琳派の世界

琳派は俵屋宗達がやまと絵の様式を基盤としながらデフォルメやトリミングといった創意工夫により斬新でおおらかな作風を確立しました。そして宗達に私淑した尾形光琳がその画風をもとに平面性と装飾性を際立たせた画風を展開していきます。
ここでは俵屋宗達酒井抱一鈴木其一酒井鶯蒲の作品が紹介されていました。

俵屋宗達の作品では《軍鶏図》と《鹿に月図》の迷いのない颯爽とした筆運びが気持ちよく、線というより墨の面で表現している描き方が面白いです。

酒井抱一の花鳥画はどれもすごく素敵で、中でも《飛雪白露図》は雪がぱっと散っている表現に臨場感があって目を引かれました。

近代・現代日本画にみる琳派的な造詣


展示の最終章では琳派と共通した表現や造形上の関連が見出せる作品を3つの視点で紹介していました。

「琳派に私淑する」では、琳派の技法やモティーフを用いた作品として、速水御舟小林古形など。
「自然をデザインする」では、平面的な画面構成や対象の単純化によって自然美の新たな表現を目指した作品として、山口蓬春富取風堂など。
「斬新な構図を求めて」では、大胆なトリミングや意外な視点を取り入れた作品として、菱田春草吉岡堅二など。

今回の展覧会では学生時代から絶筆までの作品を通じて画風の変化を見ることができ、多彩な描画とそれをミックスした表現に魅力を感じました。


余談ですが、帰りバスクチーズケーキ専門店「BELTZ」でケーキを購入。チーズケーキ大好きなので、美味しいお土産もゲットできて嬉しい一日になりました。

※ケーキのことはこちらの記事に書いています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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