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# 連載コラム 書籍化作家になろう! 第1回 そもそも書籍化ってなに? 書籍化する作品に共通する○○とは!?

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はい、よーいスタート。
どうも見ての通りの文学少年、野良小説編集の小山です。
今回からKADOKAWA、講談社、TOブックスと大手出版社を渡り歩いてきた僕が経験してきたWEB小説やラノベ周りの話をしていくコラムを始めます。

僕は筆不精なものであまり普段から文面で情報を発信していくタイプではないのですが、さすがにフォローしてもらってる作家さんとか、これから書籍化してプロになる! という人たちに対して何も還元しないのは申し訳ないなぁと思ってこの連載を始めることにしました。
文面で書いておけばいつでも気軽に読み返せますからね。電子ページが擦り切れて穴が空くまでしゃぶりつくしてくれると嬉しく思います。
Xのスペースではよく創作論をしゃべっていますし、ココナラなどで編集のお仕事もお受けしているので、記事だけじゃ満足できないぜ! という人はそちらにお越しいただければと思います。

https://twitter.com/kk_9_0_0_0


☆誰でも書籍化できる方法論は実在する! (ドン!!!!!)☆


前置きが長くなりました。
みなさんお待ちかねだと思うので、本題の方に入っていきます。
ズバリ、誰でも書籍化作家になれる方法論はあるのか!?

結論から言ってしまえば、
YES! 誰でもプロになれる方法論が存在します!

ただし、方法論を理解することと実践することはイコールではありません。
言うは易く行なうは難し。
頭で理解しても心と筆が納得してくれない! ということもあるでしょう。
ですので、その目指すべき方法論を解説し、それを実践していくための具体的なテクニックを紹介していく、というのが本連載の趣旨になっています。

ちなみに、すべての人がこの方法論を完全に実践する必要はありません。
なぜなら、個々人の書き手によって得意も苦手もまちまちだからです。
全部試したら書籍化出来ました! という大器晩成な人もいれば、ある一点を改善してみたら書籍化できました! という早熟な方もいるわけです。
なので全部実行しなきゃプロにはなれない! と考えるよりも、自分に足りないところを一つずつ改善していくための足掛かりとして捉えてもらうのが良いのかなとは思います。
書籍化には運も絡みます。明確なラインがあるわけではないので、思い詰めすぎないように一歩一歩進んでいきましょう!

☆そもそも書籍化ってなに?☆


というわけでまずは目指す目標である書籍化とはなにかを言語化するところから始めていきましょう。
みなさんは書籍化と聞いて何を思い浮かべますか?

小説家になろうで20万ポイント集めて、年間ランキングに入って、たくさんの出版社からオファーがどしどしやってくる!
ですとか、
カクヨムで☆10000集めて、Xでバズって、コミカライズの話がいくつも舞い込んでくる!

そういうWEB小説ドリームを書籍化に夢見ている人が多いかと思います。
正直、その認識は間違っていません。
たくさんのポイントを集めた作品を書籍化するのは出版社側としても望んでいることですので。

では、書籍化する十分条件とは、小説家になろうで20万ポイント集めることでしょうか?
カクヨムで☆10000つけてもらうことでしょうか?

それは違いますよね。
そんなにポイントを取れていない作品だってたくさん書籍化して世に出ていますし、そこから100万部売れた作品も例をあげようと思えば両手で数えきれないくらいあるでしょう。

つまり、書籍化するために小説投稿サイトでトップの成績を残す必要は実はありません。
もちろん、そのレベルの人気作を作れるに越したことはないですが、それはいずれ辿り着く場所であって、最初からその域に届かなかったからといって悲観するものでもありません。

では、本当に書籍化するのに必要な条件とは何でしょうか?
「ポイントをたくさんとることじゃないなら、何をすれば書籍化できるかわからないじゃないか!」
そう言いたくなるのもよくわかりますが、実は簡単に数字で説明できます

☆書籍化する作品に共通する○○とは!?☆


十分条件と必要条件で論理学的に説明するのはちょっとわかりにくいと思うので後で言い換えますが、それぞれに対応するものは先に提示します。

  • 十分条件:編集者などの出版手続きを取れる人間の目に留まること

  • 必要条件:採算が取れると判断し稟議を通せるだけのセールスポイント

  • 必要十分条件:読んでもらえる・ファンになってもらえると出版社から太鼓判を押された作品であること

え、数字で説明できるんじゃないの? いきなりよくわからないこと言い出さないで? と思った方。
もう少しだけ待っていてください。まずは前提から話させてもらいます。

これを読んでいる方の多くは書籍化作家を目指して活動している方、もしくはすでにプロだけれどもっと活躍したいと考えている方だと思います。
書き手側であって、作品を作る時にも基本はどんなアイデアを使うか、どんなキャラを出すか、どんな展開にしたらいいかということなどを主に考えて執筆をされているはずです。
つまり、作家的な思考で作品を作るのが当たり前ということです。

でも論理的に考えていくと、書籍化という事象を作家的な思考で考えるには限界があることが分かるはずです。
なぜなら書籍化するか決定するのは作家さんではなく出版社だからです。

・十分条件:編集者などの出版手続きを取れる人間の目に留まることについて

これ、実は盲点だと思うんですが、どんな傑作を書いている作家さんでも出版社の編集者に声をかけられたからデビューしているんです。
コンテスト受賞の方たちも、編集者や選考委員に選ばれたからデビューしているわけです。
そう、どんな歴史に残る名作を書いていたとしても、出版手続きを取れる人間の目に留まらないと販路には乗らないのです。

もちろん例外として自費出版やインディーズがありますし、そちらで結果を残してプロを名乗ることもできると思います。
でも僕はそちらにまったく造詣がないので、残念ながら説明もできません。ぜひ他の方からお話を聞いてみてください。

ちょっと脱線しましたが、次にそういう人間の目に留まるとはどういうことなのかを編集者サイドから説明していきます。僕自身が編集者なので少しだけ贔屓目が入ったお話になります。

僕たちは小説投稿サイトを巡回したり、レビュアーの方やプロの作家さんがおすすめしている作品を読んでみたりして、毎日面白そうな新企画について考え続けています。
そして、その中でこの作品なら、この作者さんとならやっていける! とピンが立った時に打診というお声がけをするわけです。

このピンさえ編集者に立てば、ポイントも何もかもを無視して企画が進むことはままあります。
低ポイント書籍化と呼ばれるものは、大体このピンがその編集者にとってとても大事なもので、その煮えたぎる情熱で障害すべてを蹴散らした時に実現しています。ファンになってしまったのだから仕方ないですね。

そういう例は少数ではありますが、すべからく全ての商業出版はこのピンが立った作品だけで成り立っています
逆に考えるとこれは当たり前で、担当編集者がいないのに出版社から本が出たらホラーになってしまいますからね(本が自分で勝手に動いている!笑)

・必要条件:採算が取れると判断し稟議を通せるだけのセールスポイントについて

そして、上記の気に入った作品を出版したいと思った時に障害として立ちはだかるのが出版枠や予算の問題です。
編集者も大体は会社員ですので、自分の惚れこんだ作品があったとしてもそれを出版するためには上司の許可を取る必要があります。
つまり、その作品を書籍化した時にコストよりも利益が上回る見込みが高いと上司を説得しなければなりません。

本当はこの作品を出版したいのに上司を納得させられずに企画がポシャってしまった……というのは編集者あるあるです。
僕も編集長と散々っぱら喧々諤々戦って何度も何度も敗けました。
幸いなのは僕が声をかけたいと思った作家さんは大体他社で書籍化していることです。
僕が担当するかどうかは大して問題じゃなくて、作家さんが活躍できるかどうかが重要ですからね。
そういう意味では何も不幸は起こっていません。僕の心が致命傷を負っただけで済んでいるので。

まぁそんなわけで作品の利益性を追求する時に流行やトレンドという言葉が絡んでくるわけです。
流行だから売れる、トレンドだから売れる、というわけですね。この辺の話はまた連載が進んだ時に言及させていただきます。
そしてそうやって売れることを目指せばいいのかというと、ここで忘れてはいけない大事なことが一つあります。
売れるということは買ってくれている方たちがいるということです。

・必要十分条件:読んでもらえる・ファンになってもらえると出版社から太鼓判を押された作品であることについて

作り手側、出版側に立つとしばしば失念してしまうのですが、売り上げが立つということはその数だけ購入してくださる方がいるというのが道理です。

そう、つまり書籍化する作品というのは言い換えると、たくさんの人たちに買って読んでもらえると見込まれた作品のことです。
出版すれば読者さんは面白いものが読めてハッピー、作家さんも自作が評判になってハッピー、出版社も売り上げが立ってハッピーと、誰もが喜ぶ三方ヨシの作品である、と言えます。
そして、この三方ヨシになるラインはある程度数字で説明できます

長かったですがやっと数字の話に辿り着いた! みなさんお疲れ様です! まぁまだお話は続くんですが。

というわけで、ここでいう数字とは何を指すのか。
小説投稿サイトのポイントじゃないなら、何の数字を参考にするのか?
それは買ってくださる見込みの読者さんの数です。

これについては目安程度ではありますが誰でも導き出すことができます。
小説家になろうにはブックマークという機能があって、作品を継続して読んでくれる人は大体そのブックマークをしてくれています。
そして、書籍化した時に紙の本を買ってくださる読者さんの数は、大体そのブックマークの1/6~1/5ほどは必ずいると言われています。(俗説ですが出版界でこの数字を出して通じなかったことがないので、まぁまぁ参考になる数字です)

そしてこれは1~2年前の数字になってしまうのですが、小説家になろうでブックマーク9000、つまり書籍化した時に1500人の読者が見込める作品は、評価ポイントの方が15000~30000であることが多いという傾向がありました。
ブックマーク比でポイントが2倍~3倍という感じですね。今はもう少しインフレしています。
この時、総合ポイントは大体30000~50000で推移しています。
みなさん、この数字に見覚えがありませんか
もっとわかりやすく言うならば、編集者というのは他の編集者に先に声かけされるのを嫌う生き物ですので、更にポイントが伸び切っていないタイミングで声をかけたがります。
そしてそれは大体、20000~25000ポイントに到達したあたりになります。
もうおわかりですよね?

はい。
これが書籍化ラインと言われるポイントの正体です。

多分みなさんにとってこれが一番目新しい情報なのではないかと思います。
書籍化ラインがそこにあることは分かっていても、なぜそうなっているかを知っている人は少ないはずですので。
でもプロたちは自分の出版経験からなぜその数字を取ればいいかを知っています。
なのでまずはそこに並べるように前提条件を揃えましょう。

書籍化ラインにポイントをのせることが偉いのではなく、そのポイントに達した時についているファン、想定顧客数が出版社にとって望ましい数字だから書籍化するんですね。

なのでWEB小説投稿サイトで戦っていくにあたって本当に見なくてはいけないのは、ポイントでもなくランキングでもなく、ファンの数なんです。

カクヨムもフォロワー数と市場での物理書籍の売り上げ冊数について相関関係が存在するはずです。
まだ商業化した作品が少なく、僕が詳細なデータを持っていないので具体的な数字を示すことができないのが申し訳ないですが……。

話を戻します。
たまにランキングにまったく上がってこなかったのに、急に話題になる作品がありますよね。
最近で言えば「魔女と傭兵」などが該当するカテゴリです。
では、それらの作品が評価されていなかったかといえば、そんなことはまったくありません。
スコ速を始めとしたレビュアー&スコッパーの棲み処にいるディープな読書家たちはその存在をずっと噂していたはずです。
「薬の魔物の解雇理由」「サイレントウィッチ」、未だ表には出ないというかずっと隠れた名作扱いされそうな「ギスギスオンライン」……。
それらの作品は市場に出るのにたくさん時間がかかります。事情通は知っていてもなかなか編集者の目が届くところに出てこないからです。
でも、ファンの数や質は凄まじいものがある。
だから、一度その人気が爆発すると凄まじい結果を残すのです。

☆終わりに☆


そろそろまとめに入りましょう。
長々と話してきましたが、今回の第1回で話したかったのは、書籍化するために大事なのはポイント<ファンの数であるということでした。
なので書籍化する作品に共通しているのは、一定以上のファンがついていることになります。
総合ポイントはある程度それを可視化してくれますが、ブックマークやフォローというもっと直接的な数字がそこには存在します。
Xでもいいねが1万以上つく万バズすることはとても名誉なことです。でも、普段のつぶやきの拡散率を考えるとフォロワーが多い方がいいですよね?

あなたを見て応援してくれる読者さんたちを大切にしていきましょう。
その方たちを喜ばせ続けていれば違う作品を書いた時も応援してくれますし、誰かが応援している作品や人を、他の方も応援したくなるものです。
ファンの輪を広げていって、それがあるラインを超えた時、その時から書籍化のチャンスが巡ってくるのです

というわけでまずは書籍化をする、ということをシステム的な方面から解説してみました。
あまり誰もしゃべらないことなので、少しは参考になったと思うのですがいかがでしょうか?

次回からは、もっと踏み込んで実際にファン数を増やしていくためにやるべきこと、箸休めの回ではそもそも書き続けるためにした方がいいこと、など色々な具体的なお話をしていこうと思います。
次の配信は9月18日(月)を予定しています。

参考になったという方はスキボタンを押したり、Xで拡散したりして反応をしてくださると非常に嬉しく思います。
コメント・感想もめちゃめちゃ喜びます。

スプリングをダメにしてしまうくらいベッドの上で跳びはねるでしょう。

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次回以降の連載では、無料部分では書籍化するための方法論、有料部分ではさらに発展した書籍化し続けるための方法論について書く予定です。
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第1回の有料記事はお礼の言葉だけですので、本当の投げ銭となります。

それでは、ここまでお読みくださりありがとうございました!
みなさんの反応、感想をお待ちしております!
見ての通りの文学少年の提供でお送りしました。


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