子どもと話すのが一番いいよ
『マーケティングDX最新戦略』という本ができたので買ってね、という案内がきた。本体価格45万+税、書籍とオンラインサービス込だと675,000円+税。
価値があるなら買ってもいいが、そもそもDX(デジタル・トランスフォーメーション)を商売の種としてしかとらえてないんじゃないか。
2000年ごろ、「インターネット・マーケティング」を特集していたようなものだ。
「商売で一番儲かるのは、その商売で儲けようとしている人向けに商売すること」という格言があるが、まさに。
DXを組織内にインストールしようとして一番の障害になるのがタテ割り組織と社員の意識。この2つが「すべて平らにする」デジタルとまったく相性悪い。まず社内のこれを取り除かないと前に進めない非常に人間的な、泥臭い話なんだ。でもこの本では「先端企業150社のマーケティングDX事例を詳細解説」してくれているらしい。
でね。
デジタルの意識がアナログのそれと違うのはどこか。
仕事への向き合い方なんだ。
「ちゃんとしよう」(do things right)というのがアナログ。
「やるべきことを発見する」(get the right things done)がデジタル。
そうすると、会議はいらなくなる。なぜなら、会議というのは、既知のことがらについて「ちゃんとする」ためのものだから。
JOYWOWでは、この一年、会議数ゼロ。一年どころか、ここ数年ゼロ。
でも、おかげさまでうまくいってる。
なぜなら、ぼくがいつも、「いま、何をやるべきなのか」を発見しようとしてるから。
だから、会議しようがない。「いま目の前にないこと」について議論できないもん。
コロナになって会議が減ったというけど、減るだけじゃだめで、ゼロにしないと。ある会社で耳にしたのは「ZOOMになって却って会議が増えた」。
リアルにやるときは会議室の絶対数が限られてるから、ある程度の制限があった。しかしZOOMだと必要なのは参加者の時間だけだ。
ところが、ぼくたちにとって最も有限で、大切にしなければならないのは時間。
ドラッカー先生は「汝(なんじ)の時間を知れ」と言ってる。
ぼくが教科書のように何度も繰り返し読んでる傑作だ。邦訳はなんてタイトルだったかな。あ、『経営者の条件』だ。これはっきり誤訳。敢えて言うなら『成果を出すビジネスパースンになるための5つの方法』だろうね。経営者向けではなく、ビジネスパースン一般に向けた仕事術だから。かなり前の本だけど、ドラッカーはいつも本質を書いてくれているので、今でも十分勉強になる。
表紙にも副題で書かれているように「Getting the Right Things Done」(「やるべきことを発見し、実行する)がいまぼくたちに必要なことで、DXであろうがなかろうが、関係ない。
事例紹介、ケーススタディをありがたがるメンタリティは「ちゃんとしよう」(do things right)からくる。
これだけ前提がコロコロ変わるビジネスサーフィンの時代、他社事例をいくら研究したところで正解は見つからない。ケースの通りに「ちゃんとしよう」とするだけ時間の無駄。
それより身近な人とじっくり語り合い、インタレスト(興味関心)がどう変化していっているのか探るほうがマーケターとして最重要な課題だ。
子どもがいたら、子どもと話すのが一番いいよ。ぼくはそうしてる。
*カバー写真はうちのマンションエレベーター保護シートの落書き(笑)よほど好きなんだろうねー「きめつ」。