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備えない

昨夜は雷が暴れた。大音響に目が覚めた。カーテンを開くとそこはロックンロール。一年以上ごぶさたのライブ会場だった。レーザー光線ピカピカ、雷(いかづち)男dismたちが、「せーの!」とドラムやギターを大音量でぶちかましてた。

「備えあれば憂いなし」というが、ぼくに言わせれば「備えるから憂いあり」。しかも昨夜の雷なんてのは備えられない。

「最悪の事態に備えよう」と思っていても、そもそも最悪の事態は備えられない。なぜなら、思いつく最悪の事態なんて、たいしたことないからである。自分の小さな脳で生み出す「最悪」を、現実は遥かに超えてる。昨夜の雷がそうだ。朝日新聞によれば、近畿地方全体で1万5000軒が停電し、メトロ駅舎(朝潮橋駅)もやられたという。ここまで想像できない。コロナちゃんが登場したときも、まさにそれから一年半、えんえん先の見えない毎日になると誰が予想できたろう。飲食店の命であるお酒の提供ダメよ、となるとは誰も備えられなかった。だからこれから先も、コロナちゃんがどうなるのか、わからない。

備えるから、憂いが生まれる。だから、備えない。人間、バカじゃない。目の前に逆風が吹いた。逆を順にする工夫は、きっとできる。右に行こうが、左に行こうが、出た結果が良い結果になるようにする。それは瞬間の営みであり、備えから来るものではない。

備えは過去、対処は現時点の瞬間なのだから。

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