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江戸時代は「関係」で売っていた。「関係」で売れていた。
タイムマシンができたので、江戸時代へ飛んだ。
江戸といえば、鮨だろう。うまい鮨屋はどこだ?
何しろWi-Fi飛んでないし、スマホもないからグルメアプリを使えない。そんな中、「繁盛しているうまい鮨屋」を見定める方法は、のれんを見る。
のれんが汚れていたら、お客さんが多い証拠。
つまんだ指の汚れをのれんで拭って帰るってのが習わしだ。
さしずめ2022年なら、「衛生上ご遠慮ください。消毒液はこちらにご用意しておりますから」となる。あるいは、「素手でつまむのはお控えください。薄手のゴム手袋をご用意しております」かもしれない。
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軽く腹ごしらえしたので、蕎麦で仕上げよう。蕎麦の価格は16文。現在の貨幣価値に直すと300円か400円程度。スタバのほうが高い。
で、オヤジさん、なんでこの価格? と聞いてみた。江戸のプライシングはどうやっているのか。
「うちは二八蕎麦。うどん粉二、蕎麦粉八、二八の十六としゃれたわけでさ」
くーっつ!! しびれるねえ、オヤジ。
2022年ならこういう会話はまず、できない。自分でレジで「そばきり」をオーダー、自分でパネルをタッチし、「そばきり」をタップ、出てきた「16文」に「これでよろしいですか?」と聞いてきたのに「はい」。
小銭をマシンの受け口に転がし、パネル「決済」タップ。
転がりでててきたお釣りを自分で拾い集めて、終わり。
ものは試しと前にいるレジ担当のアルバイトに「ところでどうして16文なの?」と聞いてみる。
「さあ・・・」
江戸時代は「関係」で売っていた。「関係」で売れていた。
これぞ商いの原点であり、Wi-Fiも、電源も、スマホも、DXも(笑)要らない。
「自分でレジ精算しろ、買ったものもお前が持ってきた袋に自分で詰めろ、接客はしません」
多くのコンビニ、スーパー、ドラッグストア、チェーンカフェ、チェーンレストランがDXと称してやってる。これって、商いの原点である「関係」を捨ててしまうことになぜ気づかないのだろう。DXというのは、デジタルの力を使ってまるで夢の中にいるような楽しい顧客体験を生み出すことであり、「人の接客を略す」ことではない。
道頓堀今井大丸店でお弁当を予約した。取りに行った。
「袋、お持ちですか?」
持って行ってた。
「よろしければお入れしますが」
もちろん!
丁寧に、丁寧に、自分の商った商品のお弁当2つを、まるで宝物に触れるような手つきで袋に入れてくれた。
「ありがとうございます。助かりました!」
「いえいえ、またお越しください。ありがとうございます」
こういうお店「だけ」が、残っていくのだろうね。