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それでもわたしたちは




愛されないとしても


愛していると言っても
愛していると返ってくるわけではない。
大事に大事にしていても
大事に大事にされるわけではない。
嘘をついていなくても
嘘をつかれていないわけではない。

しかし、だからといって
愛さないわけでも
大事にしないわけでも
嘘をつくわけでも
ないでしょう?

人が人を想うとき
100%のお返しがあるなんて保証はない。
見返りなどいらないと言いつつも
無ければ寂しく思ってしまう。
でも、わたしたちは
いつだって人を愛してしまうのだ。

ならば
愛されないとしても
心ゆくまで愛してしまえばよい。




月がきれい


水面に映る月が波打って、真っ白な花を咲かせている。月が綺麗だと言ってしまえばいいのに、あの偉人のせいで言いにくい。

でも、ぼくはきみが好き。

きみが笑うと、体温計がエラーを起こす。冬はカイロなんて要らない。

手編みの青いマフラーに顔をうずめて、きみの優しさにどっぷりと浸かろう。

気恥ずかしくて目を逸らす日常。ふたりきりの図書室。夏祭りのファーストキス、嫉妬が揺れた遊園地。眠る前のLINEと、引っ越しの前日にきみが流した涙。

どうにも、素直になれなくて。

でも、でも、やっぱり君といたい。ずっと一緒に笑っていたい。
だから、ぼくはきみへの愛を紡ぐ。
きみに言えなかった言葉を、きみが読むことを信じて。




僕だけのダンスホール


秋と冬の間の少し肌寒い季節。
真夜中に飛び出した僕の行先は、人知れず佇むクリスマスツリー。
星々が煌めく漆黒の夜空にひっかかる繊月を頂点に飾って、送電塔が高く高く聳え立つ堤防の下。
光量を最小限に抑えてシャッターを切れば、地球規模のクリスマスツリーがそこにあった。
帳に星のカケラを散りばめて、誰も知らない聖夜の物憂げな香りを吸い込んだ。
寂しくないけど、少し寂しいって月に訴える。
午前2時の月明かりの下
わずかに影が落とされた、僕だけのダンスホール。




それでもわたしたちは


下弦の月の仰げば
月の向こう側から見たら上弦の月だねって
きみが言いました。
みんな同じ月を見てるんだよって
言ってみれば
じゃあ、ずっと一緒だねって
返ってきました。
オイルライターの灯火をゆらゆら揺らして
夜空に向かって掲げたら
ここにいるよって証明になりました。
いつかきっと
この夜を思い出して
泣いてしまう日が来るのでしょう。
それでもわたしたちは
指を絡ませあって歩んでゆくのです。




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