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【ソシガヤ格闘記】ウィキペディアタウン@祖師ヶ谷大蔵を開催しました(後編)

お久しぶりです。
祖師谷・砧を盛り上げるために活動するキザシプロジェクトです。現在、祖師谷・砧地域の歴史や文化を探究し、この地域に住む人たちが気軽に繋がり合えるきっかけづくりをテーマに活動しています。

今回は、9月29日に開催した「ウィキペディアタウン@祖師ヶ谷大蔵」の振り返りを、前編・後編に分けてお届けします。内容が多いため、段階を踏んで振り返ります。前編では、開催までの取り組みについてお伝えしました。今回は当日の様子を詳しくご紹介します。

「今後ウィキペディアタウンを開催してみたい」「地域の歴史保全活動に取り組みたい」とお考えの方に、ぜひ参考にしていただければ嬉しいです。



開催趣旨に関して

今回のイベントは、祖師谷まちづくりセンターさん、祖師谷オリコミ誌実行委員会の方々、そして郷土史料を多数保管している世田谷区立図書館さんのご協力により実現しました。

当日使用した資料

特別講師として、山口県や石川県など全国各地でウィキペディア編集に携わり、様々なウィキペディアタウンで活躍されているあらいしょうへいさん(ウィキペディア日本語編集者)をお招きしました。基本的な編集方法から、編集作業のサポート・指導まで幅広くご協力いただきました。

当日の流れ

今回のテーマ

今回のテーマは、仙川(釣鐘池)の水害と治水を調査し、水と街の関わりを考えることでした。しかし、資料が十分ではないと判断し、同時に祖師谷の歴史も整理しました。

参加者は運営スタッフを含めて全9名。高校生から社会人まで、多様な方々が集まりました。開始早々、会場にプロジェクターがないことが判明しましたが、オープンチャットを活用して柔軟に対応しました。

午前の部(10:00~12:15)

祖師谷に関する説明(10:10~10:45)

最初に、祖師谷の歴史や魅力について、Wikipedia「祖師谷」を参照しながら解説。ウルトラマンだけでなく、仙川や釣鐘池公園など、祖師谷の魅力は一面では語りきれません。

Wikipedia祖師谷のページより引用

祖師谷の歴史についても簡単に触れました。過去には神奈川県に属していたことや、それ以前は農村地帯であったことなど、意外な歴史に参加者から驚きの声が上がりました。

資料より著者作成

まち散歩(11:30~12:15)

話だけでは街を理解するのは難しいため、実際に祖師谷の街へ!
祖師谷は仙川を中心に、川に向かって台地が形成されている独特の地形を持っています。実際に歩くことで、この地形を体感していただきました。

釣鐘池の写真

また、仙川から釣鐘池にかけて見られる暗渠(埋め立てられた川)をたどり、街の中で川の存在がどのように消失しているのかを体感。
釣鐘池からの帰り道では、神明社や祖師谷住宅などを巡り、祖師谷まちづくりセンターに戻りました。

昼食・自由行動(12:15~13:30)

街歩きの後は、各自で昼食と自由時間を過ごしました。
多くの参加者は、まちづくりセンターの前にある「旬彩 ともえ家」さんで食事を楽しんでいました。

午後の部(13:30~17:00)

午後は再び祖師谷まちづくりセンターに集合し、午前中に得た祖師谷に関する情報をもとに、編集作業に取り掛かります。

編集にあたっての心得伝授(13:35~14:00)

初めに、講師のあらいさんからウィキペディアを編集する上での心得について解説していただきました。

あらいさんによる説明

印象的だったのは、「資料を読み込むのではなく、資料を見よ!」という言葉。一つひとつの文献を丁寧に読むと、時間があっという間に過ぎてしまいます。そのため、まずは資料全体をざっと見渡し、重要なポイントを素早く見つけ出すことが効果的だと指摘されていました。

また、情報を自分なりに解釈しようとすると、どうしても主観が入り、伝えたい内容に微妙なズレが生じることがあります。その歯がゆさを実例を交えながら、優しい雰囲気で語っていたのが印象的でした。

ポイントを押さえたら、早速やってみよう!
ということで、事前にあらいさんが用意した記事をもとに、実際の体験談や簡単なワークを通して、編集作業のデモを行いました。

ワーク中の様子

案外苦戦するかと思いきや、参加者が資料から必要な情報を素早く抽出し、編集作業をスムーズに進めている姿に驚かされました。

編集開始・講評(14:00~16:30)

さてここから本番。2つのグループに分かれて編集作業を行いました。

  • グループA:祖師谷の歴史について

  • グループB:仙川の水害記録について

各グループで文献を整理し、パソコンで文章を入力し、記事を要約する作業を進めます。文献整理、PCで文字を入力する、記事を要約するなど、それぞれの興味・得意とするところで一緒に編集作業を行います。

編集作業に没頭する様子

編集に取り掛かると、参加者たちの表情は一気に真剣そのものに変わりました。限られた資料から信頼性の高い情報を見つけ出すことや、事実確認に時間を要し、苦戦する場面もありました。

時間の経過は驚くほど速く、気がつけば残り時間はわずか10分。情報の取捨選択や表現方法について議論を重ねるうちに、時間がどんどん過ぎていきます。慎重になればなるほど時間が足りなくなるというジレンマを実感しました。

講評(16:30~17:00)

最後に、各グループの代表者が編集した記事の成果を発表しました。グループAは祖師谷の歴史について、グループBは仙川の水害記録について、それぞれの調査結果や編集過程で学んだことを共有しました。

Aグループでは、祖師谷のページの歴史部分を過去から順に記載していきました。彼らは、祖師谷に関する写真集を情報源として使用し、注釈を参考にして事実を補足するというユニークな手法を取り入れていました。また、情報をそのまま使うことなく、言葉を異なる形に言い換える難しさについても話していました。

祖師谷の歴史を残すチームの発表

Bグループでは、仙川の災害史に焦点を当てて編集を進めました。主な情報源は当時の新聞記事でしたが、詳細な事実があまり記載されていなかったため、資料の限界を感じたそうです。また、世田谷区や東京都の水害記録も確認したものの、河川の特定が難しく、調査に苦労したとのことでした。

最後に、講師のあらいさんから、記事の内容や編集手法に関する具体的なフィードバックがありました。

あらいさんからの講評

あらいさんの講評では、特に情報の信頼性や中立性、そして文章の明確さといったウィキペディア編集の重要なポイントを再確認する良い機会となりました。さまざまな記事を比較することで、編集者ならではの視点に気づき、言葉の一貫性や表記の統一といった細部への注意が記事の質に大きく影響することを改めて学びました。

振り返ってみて

立場の明確化と情報整理の難しさ

ウィキペディアの記事作成では、中立的な立場で情報を伝えることが求められます。しかし、実際に編集を始めると、どの視点から情報を整理し伝えるべきかを明確にするのに時間がかかることを実感しました。

また祖師谷の歴史を紹介する際、地元住民、歴史学者、観光客など、それぞれの視点によって強調すべきポイントや表現方法が異なるため、一貫性を持たせることが重要です。さらに、日本語の「も」「が」「に」といった一文字の選択でも、文章のニュアンスが変わります。事実に忠実でありながら、適切な表現を選ぶ難しさを痛感しました。

当たり前の生活は当たり前で浄化されがちなのかもしれない

日常の中で「当たり前」と感じている風景や出来事は、気づかないうちに見過ごされ、その価値が薄れてしまうことがあります。祖師谷の街並みや歴史も、地元の人々にとっては慣れ親しんだものであり、その特別さに気づきにくいかもしれません。

しかし、外部の視点や新たな視点で見直すことで、隠れた魅力や意義を再発見できます。今回のウィキペディアタウンを通じて、当たり前だと思っていた日常の中に、多くの歴史的・文化的価値が潜んでいることに気づきました。

一方で、当たり前すぎて消えかけているものもあるのではないでしょうか。特に今回焦点を当てた水害や洪水は、その例だと感じます。洪水が頻繁に起きていた時代には、それを記録に残すことはしませんでした。それが当たり前だったからです。

当たり前が当たり前になりすぎると、その感覚が麻痺してしまう恐れがあります。だからこそ、一度それを客観的に捉え、別の形で言葉に表すことで、新たな命を吹き込むことができるのではないでしょうか。資料が残っていなくても、このような編集活動を行う意義はそこにあると感じます。

今後の流れ

今後の流れ

今後の取り組みとして、より広範なテーマを扱い、多様なトピックについて学ぶ機会を提供していきます。主な活動は以下の通りです。

ウィキペディアタウン ver2.0 (2025年1月予定)

今回のウィキペディアタウンをさらに進化させ、2025年1月25日に再度開催予定です。より多くの方々が参加できる場を設け、地域の歴史や文化を共有し、再び編集活動を展開します。

インタビュー・聞き込み

地域住民や関係者への聞き込みを通じ、より詳しい情報を集めます。長年住んでいる方々の思い出や昔の屋号なども含め、通常は見過ごされがちな会話の中の言葉を大切にしたいと考えています。雑談形式で地域にまつわるエピソードを紡ぎます。

水車作りや双六作りの機会作り(検討中)

歴史を残す方法は一つではなく、ウィキペディアのような書き残す方法や口頭伝承、さらには物作りによる伝承も可能です。祖師谷にはかつて水車が存在したという話があり、現在、自宅の庭で水車作りをDIYしながら、子どもから大人までが楽しめる手作り体験の場を構想しています。

以上が今後展開していく活動内容となります。
興味のある方はぜひご参加ください!


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