暇と退屈の倫理学を読んで

年始、やっと本を読む時間が取れたので、「暇と退屈の倫理学」という本を読んだ。
非常に楽しませていただいたので、感想を書いてみる。

この本のように理路整然としていない、思いついたままに書いた文になってしまいそうなのが心苦しいが。

人間である時点で退屈する

この本の良いところは、通読しないと結論がよく分からないところだ。

ビジネス書を読み漁っている時期があったが、通説の一つに、「本は全部読まなくてもいい」というものがある。
これは大いに賛同できるもので、本の中で重要な部分はごくごく限られた一部であることが多いからだ。

しかし、暇と退屈の倫理学は少し趣が違う。

もちろん結論なので、その本で言いたいことは結論を読めば書いてある。
ただ、繰り返しになるが結論だけではよく分からないだろう。

文中に登場した用語があるだけではない。
結論に至るまでに様々な観点からたくさんのことを考える、巻頭から結論に至るまでの思考プロセスが重要なのだ。

著者の國分功一朗先生の優れた思考プロセスが追体験できるだけで、なんだか自分も賢くなったかのような心地よさがある。
なにより、説明と論理が分かりやすいので、「分かった!」と思える気持ちよさがあるのだ。

「分かった!」の楽しさ

この本では本当にたくさんの書物から考えを引用し、批判的に考えを進めていく。

なるほどな、と思える論理展開が繰り返される。

その結果、読者であるぼくが得られる感覚は「分かった!」だ。
理解、納得と言い換えてもいいかもしれない。

この「分かった!」をどこでどのように感じるかは、読んだ人ごとに異なるだろう。

だからこそ、結論も人によって感じ方が変わる。
ちなみにぼくは國分先生の考えに思いっきり乗っかって読んだ。賢くなって気分でとても楽しかった。

さて、この「分かった!」という感覚。
これこそが人生における退屈への対処法と述べられている。

人生は興味がかけらもない人の話を聞く時間のような、外部からの強制によって引き起こされる退屈と、非常にやっかいな、なんとなく退屈が起きる。
後者が本当にやっかいだ。

なにせ、なんとなくである。
明確な理由もないまま退屈なのだ。

それを打ち破るにはどうすればいいか。

日常生活を楽しめばいいのだ。

日常生活を楽しむには?

当然の疑問として、普段の生活を楽しむにはどうすればいいのか?

これは無限の可能性がある。少なくともぼくは読んでそう感じた。

日本人として例を挙げてみるなら、道だろうか。
茶道や弓道などのことである。

やったことがないので想像を多分に含むが、弓道は正しい所作で構えて、矢を射り、的に中てるものだ。

ここに少し思考を巡らせると、いくらでも弓道の構成要素が出てくる。
弓一つとっても、形、材質とその産地、作り手、歴史、作る技術、木と弦の相性などなど…。

これらについて学んで知識を増やすと、弓についての理解が深まる。
ここを変えると、自分に良い変化があるかもしれない、と工夫もできるかもしれない。

この理解と試行錯誤こそが、楽しみとなる。
物事をより深く理解すると、「分かった!」と思える機会が増えていく。

これを、日常のあらゆる面に適用すればいい。

深い理解は楽しい思考につながる

ぼくにも、「あぁ、あれがそうだったのかなぁ」と思う経験がある。

趣味で使っているBlenderというCG制作のソフトがある。
これの使い方を学ぶためにチュートリアルを通してやってみた。

結果として、見事な作品が完成した。
チュートリアルの想定通りのすばらしい結果だ。
なんと面白いのだろう。

しかし、いざチュートリアルの内容を活かそうとすると、途端につまらなくなってしまった。
今思うと、チュートリアルの内容の理解不足が原因だろう。

学んだ内容を活かして制作するには、理解が足りなかった。
作りたい物に対して、学んだことをどう適用すればいいか分からない。

理解すれば、あんなこともできるかも、と試行錯誤につながる。
そのイメージがつかない段階では、楽しいとまで思えないだろう。

勉強は人生を楽しくするチャンスを増やしてくれる

つまり、たくさん学ぶことで、物事をより深く考えられるようになる。「分かった!」と感じることも増える。

これだけでも、ぼくの中で勉強する価値がかなり大きくなった。

これまではなにか達成したい目標があって、それに向けて突き進む学び方が多かった。

けれど、自分の興味のままに勉強して、理解できることを増やし、「分かった!」と感じる機会を増やすことができるということが分かった。

これは本当に嬉しい。
興味があることについて学ぶと、より深くそれを理解できる。
日常生活でその機会が増える。

学べば学ぶほど、たくさんの楽しさに出会えるだろう。

そうして、自分にめちゃくちゃ深く刺さる楽しいことを待ち構えるために、普段から学んで備えていよう。

いやー、年始からいい本を読めた。

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