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主役の白えびに代わって

富山といえば白えび。
駅なかに白えび。
寿司屋に白えび。
居酒屋に白えび。
スーパーに白えび。
ポスターに白えび。


ところで私は白えびを食べたことがございません。一度エビの名がつく居酒屋さんで白い塊の乗ったネタを口に運びかけたら、すかさずそこにいた人が「それ白えびだよ!」と注意してくれたのでした。危ない、呼吸困難で救急車にお世話になるところでした。一度も食べたことがないのだからそれが白えびだとも気づかなかったのです。想定してきたえびよりも、ずっと白く小さく繊細なのでした。


以前同じくえびアレルギーの父親とともに富山駅を歩いていたら、えび三昧で苦笑してしまったものです。昔は好きだったのに、あるとき突然アレルギーになるものだから二人とも晴天の霹靂でした。アレルギー反応が出ると、全身が赤い世界地図のようにまだらになり、呼吸が上手くできなくなります。一説によると治ることもあるそうですが、治ったことを確かめるために危険を冒して自己実験する気には到底ならないので、やっぱり白えびの味は知りません。


それでも富山のお寿司屋さんやお魚をメインにした定食屋さんでは、白えびがこれでもかというほど主役になっております。我が物顔でお皿の上を占めています。メインを務める白えびを退けたら一体何が残るのだろうという不安を抱えながら、私は店員さんに「えび抜き」を頼みます。すると皆さんお優しいので、白えびの代わりに他の食材が出てきます。


こいつが結構面白いのです。主役の白えびに代わるのは?店舗によって、おそらくは時期によってもまちまちなのでしょう。白身魚の天ぷらだったり、鮪の刺身だったり、あるいはイモだったり。白えびの後釜となる食材ですから、主役を張って恥ずかしくないものたちが選ばれるわけです。きっとそうです。その予期せぬ登場にひっそりワクワクしてしまいます。


J

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喜代多旅館(富山)
休んでかれ。