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冬は義士、夏はお化けで飯を食いーー

昨日の浅草演芸ホールの空気に今も浸っている。女流講談師初の寄席のトリだそうだ。講談師の神田鯉栄師の千穐楽だった。
師匠である神田松鯉師によると、江戸の講談師は現在66名と、噺家に比べると1/10ぐらいだろうか。
いま講談界のニュースは多い。
先の師匠、神田松鯉師はこの夏に人間国宝(重要無形文化財の保持者)に認定された。

そして、松鯉師の弟子でもある神田松之丞さんの人気っぷりである。2020年2月には、真打になられて、松之丞改め六代目神田伯山を襲名される。(この真打昇進襲名披露興行に行けそうにないのが残念で堪らない涙)


話は戻って、神田鯉栄師の千穐楽。やはり、みんなあったかくて愛されている方なんだと感じました。

最後の演目は、「赤垣源蔵 徳利の別れ」。赤穂義士銘々伝の中で人気の名作である。

元禄15年12月14日、赤穂浪士の討入りを前にして、浪士の一人である赤垣源蔵は、兄の塩山伊左衛門の屋敷に最期の別れのため行くが、兄は留守であった。女中の竹には討入りのことは告げず、「さる西国の大名に召し抱えられることになった」とだけ言って、兄の羽織の前で別れの杯をする…。

討ち入りを果たして、形見を渡す源蔵の晴れ晴れしい姿と兄のキモチに涙がこぼれた。お竹のキャラがまた面白くて、笑いと涙のバランスがとてもステキな「徳利の別れ」だった。
鯉栄師の至芸の深さと情の深さがにじみ出てるんだと思う。

赤穂義士伝は冬の定番で、ものすごい演目数があるそうです。それほど昔から日本人に愛された噺だということでしょう。
神田愛山師から松之丞さんが教わったそうだが、赤穂義士伝に共通するテーマがある。その通底するテーマが愛される理由でもある。と。

それは、「別れ」である。
信頼する殿との別れ、国との別れ、夫婦の別れ、親子の別れ、この世との別れ、そして徳利の別れでは兄弟の別れである。決別する意志というものに、美しさを感じずにはいられない。


鯉栄師の千穐楽の想いと、これからの決意に感動したので、ご紹介させてください。(一部抜粋)

親孝行をするつもりで稼業を継ぐ約束を破って講談師にさせてもらいました。
随分と親不孝をしてしまいましたが、代わりに妹が親孝行をしてくれました。結婚も子供も会社も一手に引き受けてくれました。親にも妹にも頭が上がりません。
入門してからも男の美学を講談でやるには男でなくてはと真面目がヘンテコな方に作用してしまい、何を思ったか性転換をしたいと師匠にもちかけたり、精神的に参ってしまって約2年間高座に上がれなくなったり、芸の上での親である師匠を驚かしたり、心配をかけたり…
本当に親不孝ばかりでした。
この芝居の初日、そんな私のことを師匠は高座で「親孝行な子」だと言ってくれました。
浅草演芸ホールでトリをとることが自分のことのように嬉しいと言ってくれました。
人間としても講談師としても未熟な私ですがこれから、師匠にもっともっと
親孝行したいと思います。

幕が閉まるときに、笑顔で手を振っている神田鯉栄師の姿が、とってもキュートでしたよー
また、聴きに行きますね!

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