ARコンテンツを自然に体験させる 「見立て」 の技術
この記事はAR Advent Calendar 2018 17日目の記事です。
目次
▪️はじめに
▪️ARコンテンツの「不自然さ」
▪️テクノロジーを「見立てる」
▪️ARコンテンツにおける「見立て」の技術
▪️さいごに
▪️はじめに
初記事なので、自己紹介から。
初めまして、kiyossyと申します。
大手広告制作会社で主にアプリケーションやARなどの新しい技術を使ったコンテンツの開発をしています。
主に作ってきたものはこちら
▪️ARコンテンツの「不自然さ」
ところで皆さん、最近、ARコンテンツがどっと増えてきたと思いませんか。
わかりやすいところでいうと、「Pokemon GO」、エンジニアの方にはARKitなど、開発がしやすい環境が整ってきたことがわかりやすい変化でしょうか。
そんなARコンテンツを眺める中で、
「なんでカメラをかざすんだ?」
「街中にARが出てきたけどこれは不自然だな...」
と、「なんかこのAR、不自然だな....」と感じたこと、ありませんか?
特にAR技術は体験に伴う、技術的制約や必要な行為 (マーカーを使う、地面を写す、カメラをかざす等) が多く目立つこともあり、「不自然な体験」というものが顕著に感じられることが多いのではないかと思います。
そのため、自分はずっと「いかにARコンテンツを自然な体験として受け入れさせることができるか」と思いながら、いくつか作品を作りながらうまくその方法を言語化できない日々が続きました。
▪️テクノロジーを 「見立てる」
かの有名な「シーマン」を生み出した斎藤由多加さんの著書、
『「ハンバーガーを待つ3分間」の値段』の中に、それを言語化するヒントがありました。
「携帯電話と名付けられた無線機」という話の中で、
「技術的にはただの無線機である携帯電話が、なぜここまで普及したのか」という疑問を紐解いていく中で、「電話」というメタファーを与えたことがその理由ではないか、という仮説が出てきました。つまり、
ただの無線機 →「携帯電話」
ただの周波数としての数字 → 「携帯番号」
と名付け、捉えさせることで、使い慣れた「固定電話」の延長のもののように感じさせ、自然と受け入れられたのではないか? ...と。
この話を自分なりに解釈してみました。つまり、
「新しい技術を既知の物事・体験をメタファーとして、意識させる」
ということです。いわば「見立て」です。
ずっと自分がモヤモヤと考えてきた、「いかにARコンテンツを自然な体験として受け入れさせるか」という方法をうまく言語化するヒントがここにあるように思えます。
▪️ARコンテンツにおける「見立て」の技術
これで、自分の中での考えをうまく言語化できたような気がしました。
ここで自分が作ってみたAR作品を例に、実際にARコンテンツではどう「見立て」の技術を使うのか、少し考えてみたいと思います。
・SPELL MASTER
このSPELL MASTERは、魔法陣型のシートに呪文(英単語)を書き込み、それをアプリで読み込むことで、書いた英単語の物体を召喚できる、という英単語学習を魔法習得体験へと変える、知育玩具です。
このSPELL MASTERというコンテンツにおける、技術的制約や必要な行為が以下のようにあります。
・ARマーカーに文字を書く
・そのARマーカーにカメラをかざす
・モノがARとして出てくる
単純にこのままだと、いわゆるARコンテンツです。
新しい体験ではありますが、馴染みがないですし、文字を書くという行為もぱっと見納得がしづらく、不自然です。
そこで、これを「見立て」てデザインの要素を加えます。
・ARマーカーに文字を書く → 魔法陣 に 呪文を書く
・そのARマーカーにカメラをかざす → 魔法を詠唱する
・モノがARとして出てくる → 物体を召喚する
一般的な体験ではないですが、漫画やゲームなどで見慣れている既知のイメージ(呪文で魔法を唱える)をベースに、技術的制約をデザインの中に落とし込むことで、技術が目立たない「見立て」を実現してみました。
実際、動画をみていただけた方の中には「AR技術」ということを意識せずに、「呪文を書いてものを召喚する魔法体験」というイメージを持っていただけた方もいらっしゃるかもしれないです。
その技術的なことを意識させずに自然な体験として納得させることができるのが、「見立て」の技術です。
▪️最後に
今回、自分がものづくりをしていく中で、「ARコンテンツにおいて、どうすれば自然な体験を生み出せるのか」というテーマでずっと考えてきた方法を「見立て」の技術という形で言語化してみました。
この考え方はAR以外のテクノロジーにおいても当てはめられるとは思いますが、
・現実空間を利用して使われること
・現在、生活に根ざす形で普及が進められていること
という2点から、既知の情報や現実の体験に「見立て」る技術は特にAR技術で重要になってくるのではないかと考えています。
今回は主な考えの始まりをまとめてみましたが、今後もっと具体的な実践方法を作ったデモなどと一緒に公開できたらと考えています。
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