コラボを生み出すための話し合いのデザイン|③人々 -1[ギブ死に注意報]
目的の方に向かって進んでいくために、誰とコラボレーションするか。①召命、②目的に続いて、③人々について話し合ってみましょう。今回は③です。
最近知り合った方がこんなことを言っていました。
まじめで、やさしくて、責任感ある人から死んでいく。どうか死なないで欲しい。
人のためになろう、役に立とうとして利他的に動いた人が搾取にあって、すっからかんになって最後は、疲れ果ててしまうのです。
深刻な「ギブ死に」問題
これは社会イノベーターの「ギブ死に問題」として、社会の発展を妨げる深刻な社会問題だと、私が思っていることです。
こんなことを経験したことはありませんか。
たとえば、
・資料をダウンロードだけして帰る、お勉強家。
・「実績づくりだから、がんばれ」と若いクリエーターに低賃金労働をさせ、中間マージンを貪る企業人
・「若者たちがんばってるねえ」と相手を下げることで、自分の自尊心を癒して帰っていくオトナ。
・「わたしこれやりたいんです!私のことかまって欲しいんです!キラキラ」といって自由を謳歌して注目を集めてかき回したのち、その責任を取らずに帰っていくワカモノ。
こういう人たちとコラボレーションをしても、残念な結末しか待っていないことが多いのではないでしょうか。私たちに、お金や時間などのリソースが無限にあれば、「きっとどこかで素敵な誰かに出会うこと」というお花畑思想もありえます。特に私は、それだとモチベーションもリソースも尽きてしまうので、工夫をしていかなくてはなりません。
「与えよ、さらば与えられん」になるための環境づくりをしよう
これまで多くの現場で、人々が「ギブの精神」「お互いさま」を実践することで力強い変化を起こしていくことに立ち会ってきました。
彼らは、お互いの知恵や経験、時にモノや金まで融通し合うようなギフトエコノミーの中で、シナジー効果を起こして、自律的に助け合って働くことが多くあります。
しかし、テイカー(taker)たちによる略奪か搾取にあうと、いろいろな意味で「死んでしまう」わけです。
そこで、私は、イノベーターたち、つまり、本当にものごとを変えていく覚悟がある人や、誠実な貢献意欲がある人たちが大切にされ、彼らがいかんなくポテンシャルを発揮し、互いにギフトしあうために、安全な空間を徐々につくっていくことが、極めて重要だと思うようになりました。
それは、畑の土づくりに似ています。私たちが直接はたらきかけて改善できるのは土壌であって、種そのものではありまん。
種を、コントロールすることはできません。「はい種のみなさん、今からタイミングを指定するので、その時からお互いを信頼して、自分ごとで助け合って、たくさん芽吹いてくださいね!」。これはかなり賢くなさそうです。
「量を増やしたらいい」という幻想を手放す
その土壌を作ることこそが、多くの場合、大きな困難であり挑戦となります。
原因は様々にありますが、私の経験からするとこうです。
なぜか私たちは、”仲間”や”参加者”の数が多いと安心します。私たちは「人の量が多いと、したいことができるのだ」という、呪いのような幻想に取り憑かれていることがあるのです。私たちは新しいことをする時に、ついどんどんと人を見境なく誘っていきたくなります。典型的には、イベントやSNSのグループに招待するなどです。
そして、せっかく丹精込めてつくった豊かな土壌のモト(これは、プロジェクトの初期段階だと「コアチーム」に相当するつながり)の中に、誰も彼もを入れてします。すると、そこに集まった、肩書きばかりの“コアチーム”という「烏合の衆」が、土壌を荒らして取り組みが息絶えるケースが、残念ながら、少なからずあります。
最後には、その取り組みを呼びかけた、最初の種火の人はすっかり疲れてしまって、「ギブ死んで」しまうのです。イノベーターが温めてきた熱は、冷たい社会に消費されていきます。
土づくりの方針 = 関係性の質に注目する
どうすれば、それを避けられるでしょうか。本当に変化を起こしつづけたいのであれば、私たちは、むやみやたらに、あるいは無邪気に、すぐに人を「同志扱い」することはやめなければなりません。これを常に一般化して言うつもりはありませんが、多くの場合、それは戦略的ではないということです。
そのために、敷居を何段かに設けることが有効です。この大きな考え方について、詳しくは、別稿「火起こし理論」で書いています。
イノベーター、つまり、種火を中心にプロジェクトを組むという設計思想です。
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