コラボを生み出すための話し合いのデザイン|②目的 [目的と目標は違う]
この記事は、こちらの記事で紹介した目的論についての深堀りです。よかったら先にこちらをどうぞ。
私の仕事は「答えも終わりもない複雑なことにはたらきかけること」「まだ世界にないものをゼロイチでつくること」が前提としてあります。そのために、多様な利害関係者のコラボレーションを生み出そうとしています。
毎回、現場の状況が変わるので、誰かどこかに教わったテクニックを使い回すだけでは、太刀打ちできません。とはいえ、なんらかの形で知識を残していかないと、次につながりません。
そこで、原則という形が、実務的で、役立ちやすい残し方だと私は思っています。原則とは、知識でなく、メタ知識です。それについては、こちらで書いてみました。
教科書を読み込んだり、専門家に頼めば唯一の正しい答えがでてくる課題を扱う方には、おそらく効果的ではない働き方ですのでご了承ください。
目的がリーダーだ。
多様な利害関係者がコラボレーションをしようとする時に、誰がリーダーとなるのか、代表者となるのかを悩むことがありませんか。
もちろん、タスクベースでいうと、その目標の完遂について責任の所在を明らかにするために、「リーダー」と呼ばれる人を置くことはあります。(実際はそれはマネージャーのことだと思われます。追って説明します。)
しかし、プロジェクト全体においては、リーダーを特定の人間にしようとしない方がいいのではないかと考えています。
目的を、リーダーにすることで、みんなが力が発揮しやすいという経験が私は多いです。
目的とは何か
そもそも目的とはなんでしょうか。それは、私たちが進んでいきたい方向性(direction)のことです。
どんな社会に生きていたいか。どんな価値を実現したいか。たとえば、私たちの場合は、死にたくなる関係から生きていたくなる関係へのシフト/持続可能性に共同責任のある社会/量的拡大から質的発展への経営戦略のシフト…などという言葉で、大きな変化の方向性を言葉で保持しています。それ以外にも、絵や詩で表現することがあります。
目的は、目標とは違います。目標とは、到達点(destination)のことです。いつまでに、どこまでいくか、ということです。
目的とは、「離陸:理想へと飛び立つためのエネルギー」を生み出す。
目標とは、「着陸:現実に着陸するためのエネルギー」を生み出す。
目的をリーダーにするメリット
さて、なぜ「目的」をプロジェクトにおいて、リーダーにしたいのでしょうか。
1 みんなの声がフラットに聞かれやすい
私の経験上、なぜか私たちは「リーダー」などと呼ばれる役割につくと、さまさなエゴが暴走しやすくなるようです。そこで、「目的がリーダーであり、その前ではメンバーはフラットである」ことが、チームの力を高めます。
たとえば、ランクの低い人から、高い人に対して、やっている仕事の意味がわからない時に「これは目的にどう貢献するのですか」などと聞けるのは便利です。人間どうしが忖度しあうのではなく、人々が助け合って“目的に対して忖度”します。
2 手段の多様性を保ちやすい
目的に向かっていることさえ確認できれば、基本的には、そのための個々の手段を制約しないことも大切にしています。これは参加型でプロジェクトをすすめるときに力を発揮します。ひとりひとりがそれぞれに持ち合わせている、やりがいやスキルが、より柔軟に活かされやすくなります。
3 ふりかえりの時に人に指をささずに済む
私たちは「目的に対して、どのふるまいが機能したか」という問いで振り返りをします。もし何らかの仕事が望まぬ結果になったり、損害を出したとき、見直しの対象となるのはふるまい、すなわち、行為・不作為であって、人格ではありません。
「目的がリーダー」↔︎「目標でマネジメント」
「目的がリーダー」の対義語は、「目標でマネジメント」です。
繰り返しになりますが、目的とは、方向性(どのほうへいくか)です。
目標とは、到達点(どこまでいくか)のことです。「目標管理」とは、到着地点を定めて、人ごとに役割を与え、プロジェクトをコントロールすることです。これは決まった答えを再生産するためには有効ですが、新しいものを想像していくためには向いていません。
また、チームが「指示待ち」になる可能性を高めます。そのため私は「人が人を巻き込む」という言葉を、積極的に避けるようにしています。その言葉は、私の意図はともあれ、その受け手は、こんな意味を受け取ることがあります。
「この人がリーダーだ」つまり、「この人の言うことをきいていればいいんだ。」
すると、リーダーと指を刺された人/自分で指した人は、さらに孤独になり、また、プロジェクトが自律的に動いていく可能性はさらに減ります。
・・・・
目的が、人を巻き込みます。
ですから、「みんなで一緒に目的に巻き込まれること」。
いつも「巻き込まれ自己」でありたいものです。
なお、参考までに目的との関わり方でいうと、この記事の視点が、私には役に立ちました。
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