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ロックへの道 ~自律神経が出張、いや失調する~
高三の初夏、私はついに呼吸困難で救急車で運ばれた。
自律神経の失調による過呼吸というやつだった。
受験のために塾にブチ込まれた数か月後だった。
めまいと過呼吸とパニック障害も併発し、いよいよ学校に行けなくなった。
そもそも受験勉強の開始が遅い上に致命的な状況だった。
受験期間中も吐き気を我慢しながら受けていたので、全滅だろうな、
と思っていたが、ギリギリ某短大にひっかかった。
絶対に浪人したくなかったので、助かった。
不安定な状態は短大入学後も続いていた。
しかし、そこで出会った友人のおかげで私の症状は劇的に改善に向かったのだ。今でも命の恩人、くらいに思っている。(言わないけど)
彼女に、うちの学校を選んだ理由を聞いた。
「渋谷に近いから」
・・・え?そんだけ?
学校帰りに買い物できるじゃん、と。ただそれだけの理由だったらしい。
「語尾に’ぷー’ってつけると全てが台無しになるよな。我思う、故に我あり‥ぷー、みたいな。」
’ぷー’の破壊力を語る彼女。
アホである。くだらない、実にくだらない。
しかし彼女はただのアホではなく、非常に博識だった。
江戸川乱歩の面白さも彼女に教わった。
彼女の視点は独特だった。初めて乱歩の「鏡地獄」を読んだ私は、彼女に
「なんか怖いよ・・」と感想を言った。
「いやいや、よく考えて想像してみなよ。暇を持て余した金持ちが鏡の球体を作って中に入るって、ウケない?何やってんだよ、っつう。」
視点が全然違うのだ。視点を変えて読むと、確かに笑える。ツッコミどころが満載だ。ひとつの事を様々な角度で見てみると、答えがひとつではないこともこの時知った。
私は全作を読破して、乱歩について語り合った。
何だかよく分からないが、私は悩み苦しみ過呼吸になっている事がアホらしく感じた。
次々と繰り出される彼女のアホトークに爆笑し、先輩のしょうもないエピソードに爆笑し、いつの間にか私は大分元気になっていた。
ライブにも普通に行けるようになった。
学校の尿検査の列に並びながら、横浜の今ハマってるバンドの人と初デートするんだ、という話を彼女にしたら、
「よかったじゃん!・・・つうか初デートの日に検尿してるアンタ・・笑」
確かに。何で今日検尿なんだ!しかもタンパクが出て引っ掛かった。
彼女は爆笑していた。
今もし自律神経系の病で苦しんでいる人がいたら言いたい。
深刻さがまるでない人と友達になれ!
それが難しければ、昔と違って今は非常にいい薬がある。
絶対治るから、大丈夫。
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