3年半かけて中量級ボドゲを1本作った話(イグナイター制作記録)
こんにちは。きよみずかつやです。
2024年春のゲームマーケットで「イグナイター-魔窟の結晶-」という協力型バッグビルドの中量級ゲームを販売予定です。
「イグナイター」は構想から入稿まで3年半ほどかかったゲームで、このゲームを作った経緯や苦節などを自己満足的に残しておこうかなと思ったので記事を書きます。
中量級ボードゲーム制作の一つの例として、これから中量級ゲームを作りたいと思っている方の参考になれば幸いですが、どちらかというと自分用の備忘録的なものを主に書いていくので、ぶっちゃけあまり読む価値はない記事かもしれません。
それでも良いよという物好きな方のみこの先にお進みください。
制作のきっかけ
2020年の夏ごろ、身内のボドゲ会で「クアックサルバー」というゲームに出会ったのがすべての始まりでした。
知らない人向けにざっくり説明すると、
…といった感じで、チップを使ったデッキ構築であるいわゆる「バッグビルド」というシステムのゲームでした(当時はバッグビルドという言葉すら知らなかった)。
これが、超面白かった。
マクベスの三人の魔女のごとく、鍋に怪しげな材料をポンポン放り込んでいく世界観と、吹きこぼれないようにぎりぎりを攻めるというシステムはテーマ的にもかなり親和性が高くて納得感があったし、自分だけのデッキを作り上げていくカスタム性や、ゲームが進むにつれより強力な手が打てるようになっていく拡張性など、デッキ構築ならではの要素はやはり楽しい。
何より、このバッグビルドのシステムだと、チップは毎回同じコンポーネントを使っていても、そのチップの効果を説明するカードを別途複数用意すれば、毎回違ったルールで楽しめて、リプレイ性が非常に高い!
カードを使ったデッキ構築だと、どうしてもカード全てに効果テキストが必要だから、拡張セットがどんどん膨大な量になっていくけど、これなら効果カードだけ1枚ずつ追加してあげられればルールはいくらでも拡張できる。
これ、作りたい…
そう思ったのが「イグナイター」誕生のきっかけです。
最初期
テーマ・世界観の検討
オリジナルのバッグビルドを作るにあたり、テーマはあまり悩むことなく思いつきました。
それが「属性付与された剣」というテーマ。
RPGをやっていても、あるいはトルネコのようなローグライクでも、武器に追加効果を付与するシステムは人気が高いと思います。実際自分も大好きなシステムです。
「剣の打撃で10ダメージ、さらに火属性の追加効果で+3ダメージ」とかそういうのが男の子はみんな大好きだと思います(女の子も)。
そこで、元となった「クアックサルバー」の各要素を以下のように置き換えてみました。
そして、身内ボドゲ会での運用を中心とする前提だったのですが、身内でバチバチの対戦ゲームが苦手な方がいたので、システムとしては「協力ゲーム」を選択。
これで「協力×バッグビルド」という、今の「イグナイター」の原型のテーマが出来ました。
モックの作成~初のテストプレイ
モック(テストプレイ用の試作ゲーム)を作るにあたり、バッグビルドに必須な大量の「チップ」をどうしようか悩みました。
手芸屋さんでボタンを大量に購入することも考えたのですが、いろいろ探しているうちにホームセンターの「ワッシャー」という選択肢に思い至りました。
これなら安価で大量に仕入れることが出来るので、さっそくホームセンターで100個ほど購入。
これに100均の丸シールを貼って、色別のチップを作成しました。
当時のタイトルは「アミュレット」。
テーマとしては、
「封印された魔王の復活を止めるため、アミュレット(魔力を持ったお守り)に5属性の加護を集める」
「魔物を倒してダンジョンを進み、階層に応じて得られるポイントで加護を購入し、剣に加護を付与することで剣を強化していく」
みたいなそんな感じでした。
そしてシステムとしては、
「ダンジョンに潜り、1階から順に攻略していく」
「出したチップの数字の合計がダメージになる」
「刃こぼれチップが4枚出たら剣が折れて戦闘不能になる」
という、現在の「イグナイター」とはちょっと違うシステムでした。
そして過去に下記の記事で紹介したようにパワポでそこそこクオリティのモックを作り、「めっちゃ力作のボードゲームが出来た!」と意気込んで身内ボドゲ会に持ち込んだのです。
テストプレイ会の評判はお察しの通り、
ボロクソでした。
要因はいくつかありましたが大きかったのは、
あたりが問題だったと考えています。
ただし、「剣が刃こぼれする」というシステム自体は画期的で面白いという評価をもらえたので、以降この「刃こぼれ」を中心にゲームデザインを構築していくこととなります。
発展期
ゲームシステムの改良
この頃から、新しいルールを考えては試し、試しては作り直してまた試し…の繰り返しでした。
最初期のシステムでは、「1階では強さ3、2階では強さ4…」という感じで固定で設定してあった敵のパラメータが、作業感の主な原因ではないかと考えました。
そこで魔物を固定式ではなく「カードごとに異なる」「段階的に強くなる」方式にして、魔物カードを用いた今のシステムに近い形を考案しました。
参考になったゲームは「Verflucht/呪われたクリーチャー」や「イーオンズエンド」あたりでした。
魔物をカード化することで、魔物のステータスに個性を付けやすくなったのと、ランダム性を持たせることでゲームに変化をもたらせると考えました。
これらの魔物カードが一定ターンごとに出現するので、それを倒していって最終的に全滅させれば勝ち、というルールにしました(勝利条件をわかりやすく)。
また、武器の強化にあたる「加護を購入」するシステムが、クアックサルバーのシステムそのまんまだったのでこちらも調整し、魔物カード同様「強化素材カード」を作り、これらを魔物カードと一緒にシャッフルすることで、魔物が出たら戦闘、強化が出たら武器強化を行える、というシステムにしました。
武器強化の方法も、
とバリエーションを持たせて、デッキの強化方法も自分に合ったスタイルを選べるようにしました。
(注:この強化システムはその後ゲームデザインの改良の過程でボツになり、「イグナイター」には残っていません。が、結構面白いシステムだったんじゃないかな…とは思っています)
この時点で世界観からアミュレット要素が消えたので、武器を鍛造することからタイトルを「フォージドエッジ(=鍛造された刃)」に変更しました。
また世界観も魔王の封印ではなく、「ダンジョンからの脱出」に変更し、
「ダンジョンに湧いた魔物を倒して先に進む」
「フロアを進むごとに魔物が強くなっていく」
「全3フロアを突破したらクリア」
的なテーマ・システムにしました。
この辺は不思議のダンジョンを意識して作った感じはありますね。
この方式にしてから、かなりの数のシステムを考案し、モックにしては試し、またモックにしては試しと改善を繰り返してきました。
・階段カードが出たら次のフロアに進めるシステム
・道カードをつなげて階段を探すシステム
・一定数の魔物を倒したら次のフロアに自動的に進めるシステム
などを考案していった記憶があります。
作業感が払拭されたことで、テストプレイの手ごたえもだいぶ良くなっては来ました。
しかし依然として評価は低く、
などの課題が上がっていました。
この頃から、身内ボドゲ会で遊ぶだけではなく、クラウドファンディングなどを利用して製品版のボドゲを制作することを考えてはいたのですが、
「現時点では人に売れるレベルではない」
という評価だったので、引き続き改良を進めていくことになります。
迷走期~休眠へ
スランプ突入
どうしたら、売り物として成立するレベルのきちんとしたゲームになるか。
当時僕が考えていたこのゲームの課題は以下の点でした。
これらの課題を解決するため、様々なアプローチを試し、そのたびにうまくいかず挫折してきました。
ワーカープレイスメント、ダイスロールなどありとあらゆるボドゲのメカニクスを試してみたのですが、どれもしっくり来ず、次第に「面白くないゲーム」のソロでのテストプレイが苦痛になってきます(この頃は模索の時期だったので、身内ボドゲ会には持ち込まず一人で回すことが多かったです)。
良いアイデアが思いつかずいよいよ手詰まりになり、潮時と感じたのと、他にもやりたいことがあったため、2022年の夏ごろ、一旦このゲームのことを考えることをやめました。
最初の構想を思いついてから2年ほどたった頃のことでした。
それでも
「剣に属性効果を付与する」
「刃こぼれチップが出ることによるペナルティ」
これらの要素は自分でもかなり面白いゲームのポテンシャルを秘めていると感じていたため、いつか何かのきっかけでいいアイデアが思いついたらまた着手しよう、くらいに考えていました。
再燃期
突然降ってきたアイデア
それから1年がたった頃のことでした。
それまでも時々ゲームのことを考えたり、別のゲームの構想を練ったりすることはあったのですが、ある日突然思いつきました。
最初から魔物カードを全部並べておけばどうなるだろうか?
課題はこうでした。
「魔物がだんだん強くなっていくシステム」
「武器強化と魔物出現のバランス」
「フロア移動があると単調になる」
思いついたアイデアはこうです。
こうするとどうなるかというと、まず魔物が最初から強いの弱いのまぜこぜでうじゃうじゃいるので、プレイヤーは倒しやすい弱めの魔物から倒していきます。
弱い魔物が減ると、必然的に強い魔物だけが残っていくので、ゲームが進むにつれて難易度が増していきます。
そして、戦闘回数=強化回数になるので、無制限に強化できることもなく、かといって強化回数が不足することもありません。
また、同じことの繰り返しになるフロア制ではないため、ゲームに常に緊張感を持たせられるのではないかと考えました。
モチベーションの低下
このシステムをすぐに形にしてみたは良いのですが、3年前の熱量が当時の僕に残っていなかったのと、身内のボドゲ会でも散々ボロクソ言われていたので、持ち込むことに多少の抵抗がありました。
また、クラファンもその頃はもうやろうという気があまり持てていなかった(調べると結構面倒くさそうだと感じた)ため、そのころの気持ちとしては
「一旦ゲームとして完成させて、自分的に納得出来たらそれでこのゲームはおしまいにしよう」
という気持ちでした。
一度作り始めた自信作のアイデアだったので、どうしても一度完成形として残してはおきたかったんですね。
そこで、身内ボドゲ会以外でボードゲームのテストに付き合ってくれる場所を探していたところ、当時通っていたボードゲームカフェが「自作ゲームのコンサルサービス」をやっていることを知りました。
3000円という料金も当時はちょっと悩む額だったのですが、プロに見てもらって直すところ直したら踏ん切りがつくかなと思ったので、思い切ってこちらのサービスを利用してみることにしました。
ボドゲコンサルの結果
コンサル当日、池袋のボードゲームカフェONEで、上記動画にも出ていらっしゃる岩田さんにゲームをプレイしてもらいました。
テストが終わって開口一番に言っていただいたのが、
「これ面白いですよ!」
という思いもよらない言葉でした。
この頃すでに「イグナイター」というタイトルに路線変更していたのですが、少なくとも「フォージドエッジ」時代のゲームを持っていったらこういう評価にはならなかっただろうなと思います。
「自作ゲームとして持ち込まれるゲームは、大抵の場合そんなに完成度が高くない状態がほとんどだが、このゲームは今まで持ち込まれたゲームの中で一番面白い」
「販売した方が良い」
という言葉をいただき、忘れていたボドゲ制作熱が再燃しました。
その後、ボードゲームカフェONEに2週間ほどそのゲームを置かせていただき、10人以上の方にテストプレイをしてもらいました。
僕は直接聞いたわけではないのですが、反応は上々だったようで、値段次第では購入するという声も多かったとか。
これはもしかしたら、いけるかも?と思ったのと、2年間で貯金がそこそこできていたので、当初予定していたクラファンではなく、自費出版でのゲームマーケット出展を本気で目指すようになります。
成熟期
出展に向けて必要なこと
ゲムマに出すにあたり、ゲームを売り物として「完成させる」ことが必要になりました。
それまではゲームの大部分をフリー素材のイラストなどで固めていたのですが、販売するとなるとイラストもオリジナルのものが必要になります。
幸い、クラファンを検討していた時代に2~3枚イラストを描いてもらっていた友人がいたので、その友人に再度声掛けをすることに。
しかし友人がちょうど別の仕事で忙しい時期だったので、イラストの納品は2023年の12月ごろになる、ということでした。
当時2023年の8月。少なくともその年の秋(冬)のゲムマには間に合わないと判断したので、狙いを2024年春のゲムマに定めます。
ゲームシステムを精査し、改めて必要なイラスト数を出します。
自分の場合は以下のような感じでした。
だいたい魔物やパッケージのイラスト1枚書いてもらうのに1万円くらいを見越していたので、この時点でイラスト予算は7~8万くらいになりそうだなと見積もっていました。
ただ、これを原価計算に入れると単価がやばいことになりそうだったので、「友人に払った分は身内でお金が動いてるだけなのでノーカン!」として原価計算からは外すことにしました。
要するに「イグナイター」は全部売れても赤字であることが確定したわけです。あまり褒められたことではないですけどね…。
ゲームの改良①「スキル」不要論から見出した課題
さて、ボドゲコンサルで高評価をいただいたゲームですが、まだ完成ではありません。
というのもコンサルで高評価だった反面、いくつかの要素に改善の余地があるという指摘があったのです。
特に「スキルカードの効果が弱すぎる」というのは、自分一人では気づかなかったポイントでした。
スキルカードとは、魔物との戦闘で経験値をためてレベルアップしたときの成長要素の一つで、「特定の属性チップが出たときにクリティカルダメージを発生させる」というものでした。
当時、魔物との戦闘で得られる報酬は1種類だったので、基本的にデッキ構築要素としては「狙った魔物を攻撃することで、欲しい属性のチップを手に入れる」ことしかありませんでした。
しかし実際は、現実的に討伐可能な魔物カードは限られていて、ほぼ選択肢のない状態でした。
その状態でスキルカードの効果を解放しても、「デッキに効果対象のチップがほとんど入っていないから、出たらラッキーの運ゲー」になってしまっていたのです。
コンサルの岩田さんからは、スキルカード自体の廃止を推奨されましたが、
セットアップ時に配られる個人カードによって「この属性を集めると有利!」という道しるべがあれば、初プレイ時のデッキ構築の指標になると考えていたこと
「特定属性でクリティカル発生」というロマンに個人的なこだわりがあったこと
すでにスキルカード解放マーカーというトークンを販売用に400個ほど購入してしまっていたこと
などの理由から、スキルを活用できるようにシステム自体を改良して、スキルを存続させることを考えました。
改善したのは2つで、「①スキル解放時に、対象の属性のチップを1枚獲得できるようにする」ということと、「②魔物との戦闘で得られる報酬を2種類から選択できるようにする」ことでした。
これにより、スキル解放と同時にデッキ強化も行えるメリットを与えつつ、クリティカルの発生率を上げることが出来ましたし、魔物の報酬を選択制にすることでスキル抜きにしてもデッキ構築の自由度を高めることが出来るようになりました。
その分、必要なチップの枚数が増えたので、原価がじわじわと上がっていくことになりました…。
(そして、スキルカード解放マーカーはその後のシステム改修で不要になり、400個のコマだけが手元に残ったのでした)
ゲームの改良②難易度の適正化
ボードゲームカフェONEに置かせてもらったとき、確か15人程度の方に遊んでもらったと聞いたのですが、そのうちゲームのクリア率が8割程度だったという話を聞きました。
イーオンズエンドやパンデミック等、初見だと瞬殺されるような難易度の協力ゲームを目指していた僕としては看過できないクリア率だったため、クリア率を調整するために魔物の強さを調整することにしました。
ところが今度はゲームが難しくなりすぎてしまい、その後参加した複数のテストプレイ会で「クリア絶対無理」な状態が多々発生することとなりました。
簡単すぎてもつまらない、難しすぎてもゲーム体験が楽しくなくなる…
対戦ゲーム制作では起こらないであろうこの課題は、「協力ゲームを作るのはこれで最後にしよう」と思うほど大変な調整を必要とするものでした。
また、プレイ人数に応じてゲーム難易度が大幅に変わってしまうという課題も出てきました。
このゲームでは「戦闘で倒した魔物の数だけステータスとデッキが強化される」ため、同じセットアップだと「18体の魔物から得られる報酬を4人で分配するか、3人で分配するか」によって最終的な能力値に差が出てしまうのです。
それでも、
などの工夫をして、何とか想定している適正難易度に持ってくることが出来たかと思います。
ゲームの改良③「面白さ」の追求
数々のテスト会を繰り返し、ようやくシステムが完成してきた「イグナイター」ですが、あるテスト会で友人から「なんかワクワクしない」という指摘が入りました。
それまで、ゲームバランスの調整やシステムの整合性・納得感ばかりに意識が行っていた自分としては、恥ずかしながら「面白さを追求する」という視点が欠けていたのです。
システムが未完成だったりゲームバランスが調整中の段階だと、テストプレイヤーもそっちにばかり目が行ってしまうため、システムがほぼほぼ完成してきた段階でようやく出てくるのが「面白さ」という観点でのフィードバックなのだな…という気付きを得ました。
この「面白さ」への追求にかけられた時間は決して長くはなかった(1か月くらい)だったのですが、それでも色々なアイデアを出してくれる友人の協力もあって、
などの調整を、入稿の1か月前くらいの段階になって駆け込みで導入することが出来ました。
この調整なしにゲームを「完成」とみなして販売していたら、恐らくクソゲーとして世に出すことになっていたでしょう。
今でもあのテストプレイ会で正直に「つまらん」と言ってくれた友人には感謝しています。
(テストプレイ会でなかなかそこまで直球なコメントしてくれる人ってあまりいないですからね…)
タイトルの決定
ゲームの世界観としては、上記のようなものをイメージしていました。
「触れたものに魔力を帯びさせる」
→魔力を灯す、点火する、というイメージ
→ignite(点火)させるもの
→イグナイター
という連想から、メインタイトルを「イグナイター」にしようと考えました。
あと、「貴和製作所」というスワロフスキービーズの販売会社があって、そこが出してる「イグナイト」というシリーズの石が、自分が作るゲームの「結晶」のイメージに似てたから、というのも一因としてあります。
ただ、「イグナイター」で検索をかけたときに、競走馬だったり点火装置だったり全然違うものがヒットしてしまいそうだったので、このゲームを差別化できるサブタイトルが必要と考えました。
(Splendor-宝石の煌き-、みたいなイメージですね)
ゲームの世界観としては、
結晶がテーマであること
魔物と戦うこと
が伝えたかったので、魔物がはびこる巣窟ということで「魔窟」というワードを入れたのと、「イグナイター」が魔物のことなのか結晶のことなのかを明示するために「結晶」というワードを入れることにしました。
その結果、「イグナイター-魔窟の結晶-」という、最終的なタイトルがFIXしたのです。
こうして、3年以上かけてようやく形になってきた「イグナイター」が、最後の調整を加えてついに「完成」したのでした。
ゲームが完成したらやること
ゲームデザインとして枠組みが完成した「イグナイター」ですが、24年1月現在ではまだ以下の残件が残っています。
取説の調整
各種宣伝・広報活動
取説の調整
取説はunion talesのかんな様に校正を依頼し、分かりやすい文章や見せ方をプロの目で提案していただき、中量級ならではの複雑なルールがきちんとユーザーに伝わるように調整しているところです。
(取説だけでなく、カードテキストやデザインなどボードゲーム全体を総合的に校正してくださったので、UXはかなり良くなったかと思います)
同人のゲームだと取説を自力で作成して、人の目を通さずにそのまま販売してしまうことも少なくないと思いますが、初出展で「誰の目にも触れてない取説」は恐らく大半がかなりやばいです。
ボードゲームはデジタルゲームのようなチュートリアルがなく、間違った操作でもエラーを吐かないので、一度ユーザーの手に渡ってしまったら唯一の頼みの綱は取説だけです。
その取説が間違ってたり、分かりにくい書き方であれば、ユーザーのゲーム体験は決して良いものにはならないでしょう。
校正はそれなりのお金がかかる反面、プロの目で見てもらえるので誤字脱字はもちろん、より分かりやすく統一感のある見せ方を提案してもらえます。
校正に出すだけのお金がないという制作者の方は最低でも、テストプレイ会で「取説を渡して、制作者が一切口出しをせずにゲームをプレイしてもらう」ことはやった方が良いと思います。
これによってルールで記述が不十分な箇所があればプレイヤーの手が止まるので確認できますし、間違ってない書き方だったとしてもプレイヤーから「ここは分かりにくかった」などのアドバイスがもらえて、「ダメな取説」を回避できる確率が格段に上がります。
各種宣伝・広報活動
そして終わりがないのが宣伝・広報活動。
いくら自分が良いゲームを作ったと思っても、ゲームの良さが来場者に伝わらなければ在庫を抱えるだけです。
Twitter(X)、note、ゲームマーケット公式サイトなど、各方面での事前宣伝はもちろん、チラシやポスターなど当日お客さんを呼び込むための投資も欠かせません。
宣伝・広報のやり方については以下の書籍が参考になりました。
コミケでの販売を前提にした書籍でしたが、ゲームマーケットでもほぼ同様のことが言える話が多かったです。
この記事を執筆している現時点では、Twitterを中心とした広報活動をしつつ、印刷されたカードや化粧箱、製造中のコンポーネントの到着を待ちつつ、4月に行われる「ボードゲームトライ!」や「フォアシュピール」などの試遊会・即売会を楽しみに待っている段階です。
「ゲームデザイン」の完成までを記事にしてきましたが、実際には「ボードゲーム」を完成させて販売するにはまだまだやれることがあるだろうな…と感じています。そのあたりは今回のゲームマーケットが初出展なので手探りで色々な方法を模索している段階です。
その過程でまた記事に出来そうな経験に出会えたら、noteやTwitterで発信していけたらと思っています。
この記事で言いたかったこと
最後にはなりますが、こんな自己満足のための記事でも何か少しはボドゲ制作者の役に立てそうなことをまとめました。
①行けそう!と思ったアイデアがあれば、上手く行かなくても捨てずにとっておく
「イグナイター」の原型は3年前に出来ましたが、その後一度ボツになっています。
それでも、「いつかいいアイデアが思いついたら再開しよう」と常に考えていたからこそ、今があります。
自信作のアイデアが思いついたけどうまく形にならなかった…という人は、どうかそれを頭の片隅に置いておいて、いつか良いアイデアが降ってくるまで忘れないでおいてください。
②システムの完成=ゲームの完成、ではない
破綻のないゲームデザインというのは、ボードゲームを作った人が最初に目指すべき一つのゴールですが、そこでゲームが100%完成するわけではありません。
ゲームシステムが完成したと思ったら、「どうすればもっと面白くなるか」という視点でそのゲームをもう少し磨いていってほしいです。
また、そのアイデアは一人では思いつかないことが多いです。
出来るだけたくさんのテストプレイ会に参加して、出来るだけたくさんの人の意見を聞いて(そのすべてを採用する必要はありませんが)、時間の許す限りより高みを目指して改善していってもらえたらなと思います。
③そのゲームの「核」となるアイデアは揺るがさない
これはボードゲームに限らず、創作を行う色々な方が口にしてらっしゃいますが、自分がそのゲームで「何を一番大事にしているか」は、最後まで曲げずに貫いてほしいと思います。
「イグナイター」であれば、調整が難しいからと協力ゲームから対戦ゲームにしたり、刃こぼれシステムを無くしたりしたら、それは最初に作りたかったゲームと全く違うものになってしまっていたでしょう。
自分のゲームの「核」は何なのか、そこをきちんと言語化して大切にしてほしいなと思います。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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