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  ややこしい日本語の受け身

日本語を教えていると、文の構造の中に日本人らしさを感じることがあります。
まず第一に、ほとんどの言語はSVOの語順に対して、日本語の語順はSOVの語順で、動詞が最後に来ます。自分の行為や思いを表す動詞が最後に来る、さらに、ときには最後まで言い切らないこともあるというのは、強い主張を好まない日本人らしいなと思うのです。
そして、特にそういった日本人らしさが表れているのが受身形ではないかなと思います。
次の例文を見てみましょう。
  友だちにおもちゃを壊された
  お兄ちゃんにお菓子を食べられた
  電車で足を踏まれた
どれも日本語では自然で、主語はありませんが、私が主語であることはあきらかですね。
教えるときには、主語が分かるように、以下のように能動態の文を提示してから受け身に変えてみせます。                 

                                    practical Japanese 3 より

これを英語話者に教えると、皆さん理解はできるのですが使いにくいと言います。
なぜかというと、英語ではこのような場合受身形を使わないからです。英語では以下のように行為者が主語になることが多いようです。
  友だちが僕のおもちゃを壊した
  お兄ちゃんが僕のお菓子を食べた
  誰かが私の足を踏んだ
なんとなく相手を責めることを強調しているような感じがしませんか?
わたしには、日本人と英語話者の意識の違いを表しているような気がします。
日本人は行為者の名前を出さないことで、トラブルを避けたいのではないでしょうか。
現在アメリカに住んでいて、ことあるごとに裁判で訴えてやると言うセリフを耳にしているため余計にそう感じるのかもしれません。
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レッスンで文法を丸覚えさせるのではなく、このような意識の違いを私なりに説明すると、より興味深く、すっと頭に入るようです。
私たち教師も、なぜこのような文法を私たちが使うのか、教える際にちょっと考えるといいかもしれませんね。


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