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企業やクリエイターの代表が個人PRをはじめるときの進め方・ワークシート

音声プラットフォームVoicyで代表関連のPRや新規事業開発の担当をしている堤と申します。

企業やクリエイターの代表がオモテに出ていくことで、ブランド認知を獲得していくPR手法は、最近だと一般的になってきました。ただその初期の進め方はあまり世の中に公開されていないように感じます。

Voicyでは2020年の冬に代表の緒方さんと「あらためてPRとブランディングに力を入れていこう」と話してから、2年続けてきた代表発信の効果もあらわれてか、最近ではイベントやメディアに呼ばれることも増えてきました。

それとともに、社外のPRやマーケティングを担当されている方とお話する際に「代表発信はどのように進めてきたんですか?」と質問いただくこともありました。

「これが正解」のように話せるものではないのですが、一定参考にしていただけそうな気がしましたので、今回はそんな、企業やクリエイターの「はじめての代表PR」についてまとめてみたいと思います。


前提 -代表の発信が求められる時代-

ここ数年、サービス・商品を持つ企業の代表や、作品を持つクリエイターの代表が、「中の人」としてPR活動をおこなっている姿を見かけることが増えてきました。

食べチョク代表の秋元さん、ユーグレナ代表の出雲さん、アル代表のけんすうさん、コルク代表の佐渡島さん、テレビプロデューサーの佐久間さんなど、すごくうまくPRをおこなわれていますよね。

10年以上前、自分が新卒で入ったゲーム・アニメ・漫画といったコンテンツの業界では、当時はまだ「作り手は、黒子としてオモテに出てこない方がいい」なんて話を聞くこともありました。

ただ、個人の発信が一般的になる中で「中の人が見えることが当たり前」になると共に、そんな黒子を推奨する風潮も薄まってきたように感じます。

それだけでなく、「中の人」が見えないとサービスや作品が届きづらくもなってきています。企業やプロジェクトといった外側の箱だけではただの無機質な情報で、中の人が見えることで信用できて、応援したくなってくる。受け手の立場でもそんな「人」を通して、サービスや作品に触れるようになったと実感されている方も多いのではないでしょうか。

Voicyがかつて、最初に名前が知られるようになったのは、パーソナリティ自らの考えを手軽に発信してもらう「声のブログ」という形が生まれたことがきっかけでした。サービスの最初期は、ニュースという「情報を届ける」音声プラットフォームでしたが、「声のブログ」へと舵を切ってからは「人を届ける」音声プラットフォームへと変化しました。そんなVoicyがいま多くの人に聞かれるようになったのも、時代が求めているものに合致したからだと感じています。

[参考]
この「個人の発信に対する時代の変化」については、先日、noteクリエイターフェスティバルで、経済ジャーナリストの後藤達也さんと、アル代表のけんすうさんが対談でも話されていました。現場感あるお話をされていたので、あらためて振り返りたい方にも参考になりそうです。

2022年10月6日配信「クリエイターエコノミーの現在地【後藤達也さん×けんすうさん】」


こんな「人」を通した発信が求められる時代だからこそ、企業やクリエイターの代表の発信がより一層重要になってきています。一方で、個人の発信が届きやすいからこそ、不用意な発言や行動もまた届きやすく、チームに悪い影響を与えることがあるので気をつけたいところです。「何を発信して」「何を発信しないか」の整理が必要なのだと感じます。

代表PRで最初にやるべき3つの整理

では、いざ代表が個人を活かしたPRをしようと思ったら、何をすればいいのか。

最初にやるべきは、以下の3つの整理です。

・なぜ? -Why-
・どのように? -How-
・なにを? -What-

簡単なワークシートにしてみると、こちらのようになります。

※ワークシートの元データを、下記URLに置いたので、コピーして使っていただくこともできます。https://docs.google.com/presentation/d/1yOoiyjB9Qfs3lzB7kQtQ516r5dUO_0ZEgVOWxpFKD7g/edit?usp=sharing

2年前、Voicyの代表PRに力を入れはじめたときからこんな綺麗に整理していたわけではないのですが、振り返ってみると、なんども立ち戻って考えていたのはこのポイントでした。

各項目は最初から答えを出すことは難しいので、まずはいまの考えをまとめるところから始められたらOKです。現状認識を揃えて、進めながらブラッシュアップさせていく意識が大切。

整理①「なぜ? -Why-」

「なんで代表が自分のことばかり話してるんだっけ?」「自分が有名になりたいのか」、そんな不本意な声が周りから上がってこないようにするためにも、目的地を明確に定めておいた方がいいです。

代表PRは、「個人に紐づく発信」とはいえ、1人で完結するものではありません。チームで進めていくものです。

サービスや作品の代表者の時間を使って発信していくことになるからこそ、この発信が「どこに向かおうとしているものなのか、なんのためにやっているのか」はチームで認識を揃えておきたいところ。

Voicyの代表PRの場合だと、ざっくりレベルだとこんな感じになります。

この整理が、いまやること、やらないこと、の判断にも役立ちます。

例えば、

「来月だすニュースリリースの前段階として、ここから1ヶ月は業界全体の盛り上げに繋がる発信を増やそう」

「この採用イベントと一緒に見てもらえるように、中の人たちの関係性を感じてもらえる採用向けの発信を今月はコンスタントに出そう」

そんな、取捨選択の道しるべになります。

そして、もし目的から外れていて、どの期待効果も得られないようであれば、チームの視点から「なくす、もしくは個人の趣味時間の範疇にとどめる」方がよいものとなります。

例えば、作るのに時間も手間もすごくかかる書籍の出版。そんな1つの発信にかかるコストが大きいものは、とくにこの道しるべに照らし合わせる必要があります。

Voicy代表の緒方さんの場合、2021年に音声業界を解説した「ボイステック革命」を出し、今年2022年11月末に「新時代の話す力」という本を出そうとしているのですが、これも目的と期待効果が見合うものになるかと何度もディスカッションや推敲を重ねました。

もしこれが仮に、緒方さんが好きなお肉をテーマに「社長の選ぶ好きなお肉の店 ベスト100」という本だったら、そこまでコストをかけるべきではないので、一度立ち止まって「チームで話し合った方が良い」でしょう。


整理②「どのように? -How-」

このHowについては、広げる発信、繋ぐ発信、深める発信、の3つをいかに組み合わせていくかだと考えています。

代表PRの手段として、最初に思い浮かぶのが「メディア掲載」かと思われますが、それは広げる発信の1手段でしかありません。期待効果をしっかりと得られるようにするには、繋ぐ発信、深める発信、が必要です。

この3つは、マーケティングでいうところのファネル構造と同じです。

「広げる発信」で1000人に知ってもらって、「繋ぐ発信」で100人にプロフィールや根底にある考えを伝えて、「深める発信」で10人に距離感の近いストーリーまで届ける。そうすることで、「ただの情報」ではない、「人」としての代表を感じてもらえるようになっていきます。

このHowを、Voicyの代表PRに照らし合わせると、媒体単位だとざっくりこんな感じ。

実際に進める中では、ここからもっと細かくコンテンツ単位で整理していくことになります。

Whyの項目で、目的や期待効果と照らし合わせて取捨選択をおこなうという話をしましたが、それでもやった方がよさそうな発信というのは往々にして、どんどんあふれてくるものだったりします。

そのとき、やる・やらないの判断をする際にもうひとつ重要なのが、ストックされる発信になるか否かというポイントです。

この「ストックされる発信」というのは、言い換えると代表PRのプロジェクト全体に良い影響を与え続けてくれる発信、です。長く活用できるものだったり、次の発信を連鎖的に創ってくれるものだったりします。

例えば「繋ぐ発信」におけるプロフィール資料や、Twitterの固定ツイート・モーメントなどはまさにそれで、一度しっかり時間をかけてつくった方がいいです。


また、Voicyの代表PRの場合、「深める発信」としてほぼ毎週出している、noteの「声の履歴書」という連載記事や、「Voicy社長の頭の中」という個人放送もストックされる発信になるように意識しています。


ストック要素の高かった発信事例をいくつかご紹介しますと、

「アナウンサーだったお父さんと緒方さんの親子の話」がまず上げられます。

上のnote記事を出す前までは、隠してはいないまでも、ご家族のことなのであまりオモテで積極的に話していなかったのですが、記事にまとめ上げる過程を通して、外の方に話せる形にまで整理することができました。

いまでは、「音声と代表」をつなぐ大事なエピソードの1つとして話すようになり、日経新聞さんからインタビューをいただいたりもしました。


また、2021年初頭のClubhouseブームの際には、こんなnote記事やVoicy放送を出しました。

これも、自分たちのスタンスをチームの中で整理する役割になり、この発信から派生して、多くのメディアから出演依頼もいただけました。

1つの発信をただの「1発信」と考えるのではなく、代表PR全体を俯瞰して、ストックされる発信を増やしていくことが重要なのだと考えています。


整理③「なにを? -What-」

発信内容を考えるときには、まずは「結局、何者なのか?」を考えるところからはじめると進めやすいです。ここでは、目的と期待効果から逆算して、どんな「人」だとイメージしてもらえると良さそうかと考えていきます。

1つひとつの発信というのは、あくまで枝葉にあたる部分なので、その「人」の幹にあたる部分を整理します。これによって、発信する際の立ち位置も明確になっていきます。

このWhatを、Voicyの代表PRに照らし合わせるとこんな感じ。

キーイメージは、もう少し言葉を足すと「(よくしゃべる)Voicy代表」という印象かもしれません。

これがもし仮に、世の中の認識とズレていて、その認識が代表PRに悪影響あたえるような状態になっていた場合には、このWhatを見ながら発信内容を調整していく必要があります。

どんな「人」として記憶に残るようにするか。それが代表PRのプロジェクト全体にとって、最も重要なことだともいえます。

ここまで整理ができれば、例えば「講演会」では、そんな「(よくしゃべる)Voicy代表」が講演の場でどんなテーマで話せると来場者の方に価値を感じてもらえそうかと深ぼっていけます。幹がしっかりしているからこそ、枝葉のエピソードがより伝わるものになります。

ここ数年、「何を話すか」より、「誰が話すか」が重要と、よく言われようになりました。しかし、その「誰(だれ)」の部分もまた、勝手に出来上がっていくものではありません。

代表本人やその近くにいる人が一番知っているからこそ、自分たちでそれを伝わる形に整理する必要があるのだと思っています。

整理できた後のアクションフロー

3つの整理が完了したら、代表PRを本格的に進める準備が整ったことになります。とはいえ、まだ発信をまったくされたことがない方だと、そこから「どう進めていけばいいのか…」と立ち止まってしまうこともあるかもしれません。

そんなときは、「広げる発信」「繋ぐ発信」「深める発信」を1つずつ始めることをおすすめします。

例えば、Voicyの代表PRでは、下の図の黒色のところだけをまずはじめて、オレンジのところは進めながら追加していきました。

なんでもかんでも始めることはできませんし、通常のPRと同じで、いきなり効果があらわれるものでもありません。ですが、ストック要素の高い記事や放送を続けていくとそれが積み上がっていきます。

ぜひまずは、ストックされていく小さな発信から始めてみてください。


代表PRの落とし穴

最後にひとつ、代表PRでよくある落とし穴なのですが、外にばかり目を向けず「社内向けの発信を怠らない」というのは気をつけたいところです。社外発信と同じくらい、社内発信は大切。

なぜやってるのか、どういった考えでどんな内容を発信しているのか、はメンバー側からすると、伝えてもらわないと分かりません。社内発信を怠ったばかりに、代表PRはある程度うまく進んだけれど、代表とメンバーの間に不和が生まれてしまった、という話もよく耳にします。

これをVoicyでは、社内ラジオを使って声で届けています。「来週、〇〇という華やかなイベントにちょっと場違いかもしれないけど、頑張って行ってPRしてくる」、そんな言葉があるだけで、メンバーも応援できるようになります。

現在、代表PRと合わせて、この社内ラジオを作れる「Voicy 声の社内報」というサービスのプロジェクトマネージャーも担当しているのですが、他社のみなさまからも、同じようなお話をよく聞きます。

代表PRを始められる際には、社内発信についてもぜひ一度、あらためて検討してみてください。

以上。この記事が「代表PRに力を入れてみようか」と考えはじめていた方の参考に、少しでもなっていたら嬉しいです。


参考:音声の社内発信について書いた記事


参考:著者のプロフィールと仕事依頼

もしこの記事の筆者と仕事してみたい、と思ってくださった方がいたら、こちらの記事をぜひご覧ください。


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