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ゲーム「スプラトゥーン」はイカに人の心を癒すのか -実例と証明-

むかしWordPressでつくったブログから、noteにいくつかの記事を持ってくることにしました。

この記事は2016年に、初代スプラトゥーンにハマり過ぎて書いたものです。



「進撃の巨人」著者 諫山創さん曰く

 『スプラトゥーン』は現実のつらさから目を背けるための“鎮痛剤”

-「スプラトゥーンぴあ」イカす!著名人インタビュー①諫山創より-

WiiU用ゲーム「スプラトゥーン(Splatoon)」のファンブック、「スプラトゥーンぴあ」に掲載された、「進撃の巨人」著者 諫山創さんのひとこと。

8時間ぶっ通しでプレイし続けても、苦にならないほど「スプラトゥーン」が好きだと豪語する諫山さんは、本書の中で、4ページびっしりとスプラトゥーンについて語っている。


冒頭のひとこと「現実のつらさから目をそむけるための鎮痛剤」という表現は、「やらなくてもいい」にもかかわらずやってしまっている、そんな「スプラトゥーン」というゲームは、諫山さんにとって「逃げ」なのかもしれない、という話から発展して出てきた表現であった。

自分も軽く1000時間はプレイしているほど、「スプラトゥーン」が大好きなので、「やらなくてもいいけどやってしまう」その魅力には、全力で共感してしまう。

そして、このひとことを見たとき、別のある本で読んだ内容がふと頭に浮かんだ。それは「痛み」や「つらい記憶」に対して「ゲーム」が与える影響について書かれた一冊である。

ゲームデザイナー「ジェイン・マクゴニガル」の著書「スーパーベターになろう!」では、多数の研究事例をもちいながら、ゲームによって「心をコントロール」し、よりよく生きるにはどうすればいいかを語っている。

今回はそんな本書から、「スプラトゥーン」の“鎮痛剤”としての効用を読み解くことができる、2つの研究事例を紹介したい。
(この記事はエビデンスを保証するものではありません。読み物としてお楽しみください。)

研究事例1 (効果:痛みの軽減)

まず1つ目の研究で登場するのが、重度の火傷を負った患者向けに開発された「スノーワールド」と呼ばれる、氷の世界を冒険できるVR(バーチャルリアリティ)ゲームである。

ワシントン大学の研究チームによると、傷を洗浄したり、包帯を巻き直すといった、治療で1番痛みが激しい瞬間にこのゲームをプレイすると、その痛みを30%〜50%も軽減することができるのだという。その効果はモルヒネをも超えるのだとか。

「なぜゲームをするだけで痛みがおさえられるのか?」、これは「注意のスポットライト理論」というものが関係しているそうだ。 「ゲーム」に注意を向けることで、「痛み」へ注意が向かないようにするのだ。

可能なかぎり意欲をかきたて、たくさんの情報を持つ対象だけに、脳の全処理能力を意図的に向けさせるのだ。ゲーム、とりわけ3Dで表現されたバーチャル世界は、この目的にぴったり適っている。積極的な高い注意力を必要とし、脳に痛みを処理するだけのリソースがなくなるからだ。

-『スーパーベターになろう!──ゲームの科学で作る「強く勇敢な自分」』第一部どうしてゲームでスーパーベターになれるのか-第一章あなたは自分が思っているよりも強い-より-


脳から送られる「痛みの信号」を阻害することができれば、痛みを「自覚」することができなくなる。認識できなければ、ないものと同じである。つらいときには「忙しくしている方がいい」なんて言われるのは、これがひとつの理由なのかもしれない。

この事例を「スプラトゥーン」に当てはめてみると、これまたピタリと当てはまる。「スプラトゥーン」はTPS(Third-Person Shooter サードパーソン・シューター)と呼ばれる、キャラクターの肩越しに俯瞰視点で展開される3Dゲームである。

VR(バーチャルリアリティ)のようにヘッドセットをつけて、完全に視界を覆ってしまうまではいかないが、WiiUコントローラーに備え付けられたジャイロセンサーによって、指を使ったボタン操作だけでなく、腕を使った体の傾きがゲーム内のキャラクターと連動する。それは「積極的な高い注意力」を必要とする、そうとうな没入感である。


研究事例2 (効果:つらい記憶のフラッシュバック回避)

2つ目の研究で登場するのは、おなじみのパズルゲーム「テトリス」だ。

ショッキングなイメージを目撃してから六時間以内に『テトリス』をプレイすると、その出来事のフラッシュバックが減少する

-『スーパーベターになろう!──ゲームの科学で作る「強く勇敢な自分」』第一部どうしてゲームでスーパーベターになれるのか-第一章あなたは自分が思っているよりも強い-より-


そんな研究結果がオックスフォード大学の研究チームからもたらされた。

フラッシュバックとは、PTSDと呼ばれるストレス障害でよく起こる、ショッキングな出来事が視覚的な光景として何度も思い起こされる現象である。

認知科学によれば、記憶は体験後の6時間で形成されるのだという。その最初の6時間のうちに、視覚領域の記憶が脳に定着するのを別の記憶で邪魔をすることができれば、つらい記憶のフラッシュバックも起きづらくなる。

そこで登場するのが、視覚領域の機能を集中的に使用することができる「ゲーム」というわけである。

そのため、この効果を発揮させるには、視覚的な要素が少ない、文字がベースとなっているクイズやテキストアドベンチャーではダメなようだ。ショッキングなイメージを再生するだけの余力を残してしまう。

だからこそ、「テトリス」などのリアルタイムの動きが激しいゲームがいいのだというが、それでいうと、常に画面上の戦況を見極めつつ、3Dのキャラクターを動かし続ける、アクション性抜群の「スプラトゥーン」であれば、その役割は十分であろう。

研究によると、ゲーム1回のプレイ時間は10分くらいから効果があらわれるようだが、これもまた「スプラトゥーン」にピタリとあてはまる。「スプラトゥーン」の1試合のプレイ時間は3分〜6分と短い。短いからこそ、少しだけやろうかなと手軽にはじめることができるし、集中してプレイすることができる

すごく怖い体験をした日や、イライラするような悪い出来事があった日にする、10分ほどのインク塗りが、つらい記憶を洗い流してくれるのである。


ここまでで、イカに「スプラトゥーン」が「人の心を癒す効果」を持っているのか分かってもらえたかと思う。

しかし、あえて言うまでもないかもしれないが、1番の効果はなにより「やってて楽しい」ということであろう。やらなくてもいいけど楽しく続けてしまう、そんな鎮痛剤なのだ。

今回は諫山さんの、「現実のつらさから目をそむけるための鎮痛剤」という表現に一目惚れして記事を書くにいたった。「スプラトゥーンがイカに素晴らしいか」ということが少しでも伝わっていれば幸いである。

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