胸郭✖️伸展型腰痛
こんにちは!腰痛マガジンメンバーのこじろう(@reha_spine)です。
前回までは伸展型腰痛において、基礎的な内容からアライメントに関する内容を中心にまとめました。
そして今回は『胸郭』と『伸展型腰痛』の関係性について基礎的な部分について話をさせて頂きます!!
下の記事は伸展型腰痛に関する前回までの記事になります。
今回の記事はこのような方にオススメな内容となっております😊
👉伸展型腰痛について評価を学びたい方
👉胸郭と腰痛の関連性を知りたい方
👉胸郭の評価法を学びたい方
では早速いってみましょう!!
▶︎腰痛治療のための評価プロセス
この章は以前の投稿でもお話しした内容と少し重複しているため、以前読んで頂いた方はサクッと見て頂くだけでも構いません!
まず、腰痛治療のための評価として以下のように分けて考えると理解しやすくなります。
腰椎は胸郭と骨盤の歪みによって板挟みになり、腰椎の適切なアライメントを維持できなくなり、その結果として腰痛が発症しやすくなります。
以下のように胸郭や骨盤に対して、より詳細に評価していきます。
今回はこの中でも胸郭の部分に焦点を当てて進めていきます。
▶︎胸郭機能不全による腰椎伸展ストレス
伸展型腰痛の発生メカニズムについてです。
以下のような状態で腰椎の伸展を行なうことで疼痛が生じやすくなります。
✅胸椎・胸郭の可動性低下
✅骨盤の後傾可動性の低下
✅股関節の伸展可動性低下
✅体幹筋機能の低下
このような状態で伸展を行うことで腰椎がヒンジ様の伸展動作となり下位腰椎、特にL4/5の分節に過剰なストレスが生じやすいと言われています。
また、骨盤や胸郭のアライメント異常が生じることによって前・後屈運動に側屈や回旋が過度に加わり腰椎の一部に圧が集中してしまいます。
ではここから胸郭に関する内容に触れていきます。
▶︎胸郭とは?
胸郭は12の胸椎と12対24本の肋骨、胸骨からなる『カゴ』です。
胸郭を機能的に分類すると以下のようになります。
【胸郭の機能的な分類】1)
・上位胸郭(上位肋骨):第1〜6肋骨
・下位胸郭(下位肋骨):第7〜10肋骨
・浮遊肋:第11,12肋骨
※今回は「機能的な分類」として記載していますが、上位・中位・下位胸郭と分類されることもあります。
▶︎肋骨の解剖学
胸郭の動きを作る主な関節は、肋骨頭関節と肋横突関節で構成される「肋椎関節」であり、その運動は滑り運動を伴った回旋運動になります。
【肋骨頭関節】 2)
第2-10肋骨頭の関節面は上下の椎体の上肋骨窩、下肋骨窩によってできる窩とその間の椎間円板に関節します。第1,11,12肋骨の肋骨頭はそれぞれ1個の胸椎体と関節を作ります。
【肋横突関節】
第1-10肋骨の肋横突関節では、肋骨側は肋骨結節の関節面、椎体側は胸椎横突起の横突肋骨窩と関節します。
▶︎呼吸時の胸郭の運動学
上位肋骨では「pump-handle motion」と呼ばれる動きで吸気時には前上方に向かって動き、上位胸郭において前後径が拡大します。
下位肋骨では「bucket-handle motion」と呼ばれる動きで吸気時には外上方に向かって動き、下位胸郭において横径が拡大します。
上位・下位で動きが異なる要因としては下のように肋椎関節の関節面の向きに依存するためです。
上位肋骨では関節面が前向きに近いため、その軸で肋骨が動くと前上方に胸郭が拡張します。
一方で下位肋骨は関節面が横向きに近いため、外上方に拡張するようになります。
また、体幹前傾時には胸郭は下制し、体幹伸展時に胸郭は挙上し、この動きは上下の椎体に関節面を持つ第2〜第10肋骨において顕著となります。
▶︎胸郭可動性低下による弊害とは
胸郭の可動性が低下すると、胸郭周囲の筋緊張が亢進し、結果として脊椎全体の可動性も制限されます。その傾向は加齢とともに強くなっていきます。そして胸郭マルアライメントは『腰痛』『肩こり』の要因となっていきます。
また、スポーツや日常生活での偏った動作の反復では、胸郭の非対称性が生じることがあります。胸郭の非対称性は胸椎の回旋、側屈を招き、胸郭の可動性は低下し、脊椎全体としても可動範囲が制限されます。
▶︎上位交差症候群と胸郭可動性制限
次に「上位交差症候群」について胸郭との関連性について話をしていきます。
まず、上位交差症候群とはどういったものでしょうか?
下のイラストをご覧下さい。
以下は写真の詳細な説明になります。
①アライメントの特徴 3),4)
頭部は前方移動。
後頭下筋群に短縮や過緊張が生じ、相反抑制により深部頸屈筋群は弱化。
後頭下関節は伸展位で固定、下部頚椎は屈曲位。
大胸筋・小胸筋は過緊張となり、肩甲骨外転、胸椎後弯位。
その結果、横隔膜呼吸を阻害し、呼吸補助筋が過緊張。
上位交差症候群をざっくりと説明すると、「頭や肩が前に出て、背中が丸くなっている状態」です。
そして頸の後ろの筋肉と肩の前側・胸の筋肉が硬くなり、頸の前側深部の筋肉と背中の筋力が低下している状態です。
胸椎後弯が強く、上位胸椎が前傾すると、頭部が胸郭よりも前方に位置するこの上位交差症候群が形成されます。
▶︎上位交差症候群と伸展型腰痛の関係性
では上位交差症候群がどのように伸展型腰痛に関連するのか説明していきます!
頭部前方変位(上位頸椎伸展、下位頚椎屈曲)
→胸椎を後弯位に固定
→肩甲骨外転
→胸椎伸展を妨害
→上位胸郭拡張制限
→下位胸郭拡張制限
→胸郭が広がらないため体幹伸展時に腰椎前弯増強
→伸展型腰痛
つまり、上位交差症候群が生じると胸郭の拡張制限が生じ、伸展型腰痛へと進行することがあります。
また、スポーツ場面では胸椎が後弯してしまうと、バレボールやテニスのサーブなどにみられる上肢の挙上運動時において肩関節の屈曲制限が生じ、代償として腰椎の過度な前弯が生じ、腰椎伸展ストレスが増大し、伸展型腰痛の原因となります。
この上位交差症候群の改善を難しくする原因の1つとして、
『チェストグリッピング』
というものがあります。
チェストグリッピングとは上部腹筋群の過緊張による下位胸郭拡張不全のことを言います。5)
下位胸郭の横径拡張が不足していると、良姿勢を保持するために上位胸郭を挙上する際に下位胸郭もつられて同じ動きになってしまいます。
本来下位胸郭は横径を広げるような運動が生じますが、上位胸郭と同じような運動によって、下位肋骨の挙上が強まることによって上位腰椎の前弯増強を誘導し、腰部の緊張が高まってしまいます。
後弯-前弯姿勢やスウェイバック姿勢などで胸椎後弯姿勢を呈した方では上部腹筋群の過緊張や短縮により胸椎伸展可動性が低下し、特に下位胸郭の拡張性が低下していることが多くあります。胸椎の伸展制限や下位胸郭の拡張性の左右差は伸展時の腰椎の回旋ストレスをもたらします。更に、股関節の伸展制限や左右差がある場合は体幹伸展に伴う寛骨後傾動作にも左右差をもたらし、腰椎へのストレスが更に増強します。
また、後弯-前弯姿勢やスウェイバック姿勢は先ほどの上位交差症候群を来たしやすいという特徴もあります。
繰り返しになりますが、下の写真のように胸椎の伸展制限や下位胸郭の拡張性の左右差は伸展時の腰椎の回旋ストレスをもたらします。
では、胸郭可動性の評価を紹介していきます。
▶︎胸郭の可動性評価①〜上位胸郭〜
まずは上位胸郭の可動性評価についてご紹介します。
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