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【書評・感想】小説フランス革命【サン・ジュストこわい】


著者

佐藤 賢一(著)

発売日

集英社 / 2011年09月16日 (第一巻)

書評

フランス革命の熱狂と人間ドラマ

1789年のフランス絶対王政の崩壊から始まり、革命の激動の中で生きる人々の物語を描いています。ロベスピエール、ダントン、マラー、サン・ジュストなどの実在の人物たちが、革命の理想や現実の中でどのように行動し、葛藤したのかが詳細に描かれており、歴史の教科書では味わえない人間味あふれるエピソードが浮かび上がります。

特に、ミラボー伯爵の描写は印象的です。彼は貴族出身でありながら平民代表の議員となり、革命の初期段階で民衆の支持を集めたカリスマ的なリーダーとして描かれています。ミラボーの雄弁なスピーチや政治的駆け引き、そして彼の内面に潜む葛藤や野心が生き生きと描かれており、読者は彼の複雑な人間性に引き込まれます。彼の死後、革命の流れがどのように変わっていくのか、その影響力の大きさも感じ取ることができる一方、彼が死ななかった未来を想像せざるにはいられません。

精緻な描写で蘇る18世紀フランス

本書は当時のフランス社会や文化を緻密に描写しており、読者はまるで18世紀末のフランスにタイムスリップしたかのような感覚を味わうことができます。革命期のパリの街並みや市民の生活、議会の喧騒など、細部に至るまで再現された描写は圧倒的な臨場感を持ち、物語を一層引き立てています。

膨大な登場人物や複雑な政治情勢が描かれるため、歴史に詳しくない読者にはやや敷居が高い部分もあるかもしれません。特に、フランス革命の前後関係や各派閥の動きについて基本的な知識がないと、物語の流れを理解するのが難しいと感じる場面もあるかもしれません。

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