6/13 ぼくには博才がない 【ポイペト】
プーケット発の飛行機は、午前1時にバンコクに着いた。
今日は陸路でカンボジアへ行く。
具体的には、タイ国鉄で国境の駅まで行き、歩いてカンボジアに入国、そして国境の街であるポイペトに滞在する。
バンコクのフアランポーン(Hua Lamphong)駅から国境のバーンクローンルックボーダー(Ban Klong Luek Border)駅まで行く列車は1日に2本ある。
「5:55発11:17着」と「13:05発17:27着」だ。
どちらも微妙に利用しづらい時間帯だが、列車が遅延する可能性があることも考慮すると、早いうちにカンボジアに着いてしまう方が得策だろう。
バンコクのドンムアン空港で3時間ほど時間を潰してから、行動を開始した。
空港からのアクセスのしやすさの関係で、始発駅のフアランポーンではなく、次の駅にあたるパヤータイ(Phaya Thai)駅で列車を待つ。
パヤータイは、高架鉄道システムのバンコク・スカイトレイン(BTS)や都市高速鉄道のエアポート・レール・リンク(ARL)が通る近代的な駅舎を持っているが、国鉄(SRT)が停まる駅は実に素朴な造りである。
実際、タイ国鉄による正式分類上では「駅」より格下の「停車場」らしく、言われなければそこが駅とは分からない。
停車場は周辺住人の生活空間に溶け込んでおり、バイクが通ったり、線路上で犬の散歩をする人がいたりする。
6時過ぎに国境行きの電車がやって来る。
運賃は49バーツ(約200円)。
しばらくウトウトしていたが、バンコクを出てから1時間もすれば車窓からの風景はあっという間に南国ののどかな田舎町になる。
正午前に国境駅に到着。
駅の周辺にはタイ最大級の市場があるらしい。
カンボジアはもう目と鼻の先だが、せっかくなので駅の周りをぶらついてみる。
残念ながらあまり活気はない。
市場というよりは倉庫街といった雰囲気で道幅が広く、個人で買い物するというよりは、卸業者が一気に買い取っていく感じなのだろうか。
ブランドのロゴが入った靴やバッグ、服飾品が多いが、そのほとんどは偽物だろう。
特に面白いものもなかったので、いよいよ越境することにする。
タイからの出国は、タイ人・カンボジア人と外国人で分かれていてあっさり終わった。
入国に関しては、タイ人も外国人と同じラインでイミグレの手続きをするため、少し混み合っていて時間がかかった。
ついにカンボジアに入国!
カンボジアの土を踏むのは人生初。
意外ときれい、というのが人生初カンボジアの感想。
数年前に書かれたブログなどでは「国境を越えた瞬間に、タイとカンボジアの発展具合の差が分かる」なんて書かれていたが、少なくともぼくは違いに気づかなかった。
この数年で一気に開発が進んでいるのだろう。
ポイペトには1泊するため、手頃なゲストハウスを探して歩き回る。
碁盤の目のように道路はきれいに整備されおり、街並みは整然としている。
新しい建物は無個性なわけではないが、どことなく画一的な印象を受ける。
その開発の裏には、中国による多額の援助があるのかもしれない。
ベトナムのハノイを訪れた時に感じたような、社会主義的な無機質さを感じる。
何ヶ所か尋ねてみたが、エアコン付きの部屋が最安値で600バーツ(2,400円)。
決して高いわけではないが、長旅のことを考えると少々予算オーバーだ。
ぼくは暑さには耐性があるので、ACなしの部屋を探し回って400バーツ(1,600円)で決着。
ところでポイペトでは、タイの通貨であるバーツが普通に流通している。
この後に登場するカジノも、なぜかバーツでしか支払いができない。
ポイペトのカジノでは、自国通貨であるリエルもアメリカのドルも使用できないのだ。
さて、ゲストハウスも含め、ポイペトの街は全体的に割高な印象があるが、それもそのはず。
この国境の街はカジノの街だからだ。
自国にカジノがないタイ人がやってきて、どんどんお金を落として行く。
街中に漢字表記の看板が多いのを見るに、客層の多くは中華系のリッチなタイ人なのだろう。
ぼくは値段の割にクオリティが残念なゲストハウスでシャワーを浴びると、すぐにカジノに行くことにした。
カジノホテルは全部で10軒ほどで、国境すれすれのところに建っている。
いずれも規模はそこはまで大きくなく、雰囲気はマカオに似ているかもしれない。
スロットが多く、テーブルゲームもいくつかあるが、そのほとんどがバカラだ。
なぜだか分からないが、中国人は異常にバカラ好きなことで知られている。
ぼくは多くの日本人の例に漏れずブラックジャックが好きなのだが、バカラに押され気味でBJの卓がないカジノもある。
カジノを何軒か訪ね歩いているうちに、ローカルの路地に迷い込む。
スコールが降ってきたので軒下で雨宿り。
30分ほどで雨は上がって、カジノ巡りを再開する。
一通りのカジノを訪れたところで、BJの卓に座り込む。
ミニマムベットは200バーツ(800円)で、かなり安い。
1時間ほどプレーして、何の見せ場もないままあっさり負け続ける。
軍資金の半分ほどを溶かしたところで、明るい未来が全く想像できなくなって引き上げることにする。
すぐにチキってしまい、思い切った勝負ができないぼくには博才がないのだろう。
最後に訪問したカジノホテルに無料のビュッフェがあったので、負け分を取り返す勢いで意地汚く食べまくる。
外に出るともう真っ暗。
街灯がほとんどないので、かなり闇が深い。
こういうところを見ると、やっぱりまだ発展途上の国なんだなと思う。
道路はきれいに整備されている一方で、安全快適に生活できるレベルまでインフラが整っているわけではない。
小さなショッピングモールのようなものもあって中を覗いてみると、面白いことに日本風のお店がいくつかあった。
1店舗くらいはチェンナイに持って帰りたいところである。
カジノのために用意した軍資金はまだ残っているし、本当は夜通し遊ぶ予定だったが、虚しい気持ちになってしまったので大人しくゲストハウスに帰ることにした。
1人でカジノに来ると、いつもこうなる。
勝負どころが分からないままジリジリと負け続け、急に虚しい気持ちが込み上げて来るのだ。
もうしばらくは1人でカジノに行くのは控えようと思う。
寝不足だったし、移動の疲れも大きかったのだろう。
普段は寝付きの悪いぼくにして珍しく、ベットに横になった途端に眠りに落ちた。
※純粋な旅費という感じではないので、カジノの負け額は記録していない。