熱帯の太陽の動き方
ぼくの住んでいる小さな部屋は東向きに大きな窓があり、特に午前中から昼過ぎにかけては明るい陽射しがさんさんと降り注ぐ。
夏はうんざりするような激しい陽射しも、今の時期は部屋を温室のように温めてくれるありがたい存在だ。
今朝、いつもと同じ時刻に起きてカーテンを引くと、太陽光線の差し込み方がいつもと少し違うような気がした。
具体的にいうと、部屋の隅に置かれた机がサッと明るく照らされたのだ。
机の上に一直線に差し込んだ光を見ながら、ぼくは夏のうだるような暑さをにわかに思い出した。
そういうことか。
夏の間は部屋の隅にある机にも陽光が差していたが、ここ数ヶ月は部屋の隅まで太陽の光が届いていなかった。
天体には詳しくないので細かいことはわからないが、1年周期で太陽の高度や日の出の方角は刻々と変化している。
着着と季節は巡っているのだ。
理科は苦手だが、ちょっとした日常のなかで接する自然の変化には面白みを感じる。
前置きはこのくらいにして、今日はぼくがジャカルタに住んでいたときに知った、太陽にまつわるちょっと面白い話を披露したいと思う。
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小学校中学年の理科の授業でのこと。
太陽の動き方についての学習をしていた。
在外教育施設は、日本の学習指導要領に則り、日本の検定教科書を用いて、日本の公立学校と同じ教育を施す。
とはいうものの、特に理科や社会に顕著なのだが、教科書と全く同じように学習することは難しい。
なぜなら、常夏の国では冬の生き物の観察はできないし、治安の悪い地域では学校周り探検をするのも難しかったりするからだ。
教員は日本の教科書の内容をしっかりとおさえた上で、その地域に特有の文化や自然も学習できるように工夫を凝らす。
何はともあれ、太陽の話。
北半球にある日本では、太陽は「東から昇って、南の空を通り、西に沈む」と習う。
しかし、南緯6度に位置するジャカルタでは太陽はどのように動くのだろうか。
子どもたちは予想を立てた。
赤道直下とはいえ、かろうじて南半球にあるため、太陽は日本とは反対の動き方をするはず。
すなわち、「東から昇って、北の空を通り、西に沈む」のではないか。
予想を立てた上で、いざ観察。
中庭にポールを立てて、1時間ごとに影の推移を観察する。
すると面白い事実が判明した。
何と、影は北側にできたのだ。
南半球といえども、太陽の動き方は日本と同じだということだ。
予想が外れたことに子どもたちは拍子抜けし、実は「北の空を通る」と思い込んでいたぼくも心底驚いた。
でも、どうもしっくりこない。
子どもたちも納得できていないようだったので、ネットで詳しく調べてみると興味深いことがわかった。
結論から言うと、こう。
北回帰線と南回帰線の間にある地域は、太陽が南を通る時期と北を通る時期を交互に繰り返す。
へぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。
目から鱗だ。
北回帰線は北緯23度26分で、南回帰線は南緯23度26分。
中学校の理科で地軸の傾きとか南中高度の計算とかを習うが、まあそう言うことだ(すいません、典型的な理科苦手人間なので詳しいことは全然わかりません)。
イメージしやすい具体的な地名を出すと、北回帰線は台湾の真ん中あたりを、南回帰線はオーストラリアの真ん中あたりを通る。
まとめるとこんな感じ。
北回帰線よりも北の地域 → 太陽は常に南を通る
回帰線に挟まれた地域 → 太陽は南を通ったり、北を通ったりする
南回帰線よりも南の地域 → 太陽は常に北を通る
実は、回帰線に挟まれた地域における太陽の動き方で、もう一つ面白い話がある。
それは、1年に2回、太陽が真上を通る日があるということ。
言い換えると、影が真下にできる日。
鉛筆など、真っ直ぐ立っている物の影がなくなる。
時期は日本の秋分と春分の日より1ヶ月くらいずれたあたりで、鋭い方ならもうお分かりだろうが、この日を境に太陽が南を通る季節と北を通る季節が入れ替わることになる。
もう少し詳しく言及すると、北回帰線〜赤道にあるエリアは太陽が南を通る時期が長く、南回帰線〜赤道にあるエリアは太陽が北を通る時期が長い。
ちなみに、赤道を跨いで回帰線に挟まれた地域は熱帯気候になりやすい。
この記事のタイトルをざっくりと「熱帯の太陽の動き方」としたのは、そんな理由による。
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