ファスビンダーとの邂逅
ファスビンダーの映画、実は一本も観たことなかった。観る機会がそもそも余りなかったというのもあるけど、自分の好みとは違うような気がして敬遠してた。ニュージャーマンシネマもそれほど興味なくて、ヴェンダースだけでいいかな、って思ってた。
そう思ってたんだけど行きつけの映画館「早稲田松竹」でファスビンダー上映すると知って、なんか呼ばれてる気がして観に行った。20年以上通ってる映画館だけどファスビンダーの上映は初めてじゃないだろうか。見落としてただけかな。「第三世代」と「13の新月のある年に」の二本立てを観た。
「第三世代」を観てまず思ったのは「このオッサン『アルファヴィル』に出てたエディ・コンスタンチーヌに似てるな」だった。後から調べたら本人だった。「アルファヴィル」以外にも映画出てたんだな。
内容はとにかく難解で正直よく分からなかった。エンディングも「え?」というタイミングで突然ぷつんと終わる。こんな終わり方する映画観たことない。とにかくぶっとんでやがる、という印象だけが残る。
一方の「13の新月のある年に」はLGBTを扱った比較的わかりやすいストーリーではある。
※少しネタバレ含むので、これから観てみたい方、ネタバレ好まない方はここまでにしてください。
主人公はモロッコで性転換手術をした元男性。とはいえ見た目が女性になっているわけではなく。誰の目にも女装している男性であることがわかる容貌だ。彼は同性愛者ではあったけれど、トランスジェンダーではなかった。男性として男性を愛した。のに相手から性転換を求められて手術をしてしまった。
本来の自分自身の性と肉体の不一致に苦しめられる主人公。まったく感情移入の余地がないはずなのに、どうしてこうも引き付けられるのだろうか。
そして自分の人生を狂わせた運命の男、アントン・ザイツ。さんざん観るものを引っ張っておいて、いざ登場してみると「え?こいつ?マジでこいつなの?」というくらい間抜けな格好をしている。二人の再会シーンはドラマチックの欠片もなく、ただただ無様で滑稽でグロテスクだった。
要するに全く救いの無い話で、ずどーんと重いボディブローを食らったような気分になる。
ファスビンダーの愛人が自殺した後に作られたこの映画。制作、脚本、監督、美術、撮影などすべて一人で作り上げたこの映画に、彼はいったい何を託したのだろうか。
他の作品も観たいんだけどなあ。平日なんだよなあ。
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