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山を楽しむってことを考えながら_那須岳(朝日岳→茶臼岳)
叔母のことで予定が入る可能性を見越して、大きな用事を入れずにいた連休。
葬儀の予定は後になったためにぽっかり空いたこの2日間の天気予報は最高だ。
いつもの裏高尾は、一部の区間で“戻りバチ“🐝で通行止めになっていたのが解除されたばかり。やや不安。。。
上高地で感じたモヤモヤ感も残る中、いつもと違う道も歩きたくて、9月に計画したものの中止にした那須岳へ、初めて行ってみることにした。
今回の計画は、初めて歩く場所ということもあり、オーソドックスに
峠の茶屋から登り峰の茶屋を経由して、混む前に朝日岳へ登頂、その後できれば1900m峰か清水平(〜理想的には三本槍岳)まで歩き、戻ってきて茶臼岳へ登り、ロープウェイで降りるコースにした。
バスも混んでいるのに、さらにロープウェイで待ち時間が長いといつまでも登山開始できないのかな?と思い、ロープウェイは下りにしてみた。
(結果として、ロープウェイなしで下ればよかった)
(何事も経験、ということで)
下のYAMAPのコースの逆回りを歩いたことになる。
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那須塩原駅から臨時バスも出て、3台で出発となった。1台目に乗ったものの座れず、1時間立ちっぱなし。
しかも駐車場手前の道が渋滞しており、大丸温泉を少し過ぎた時点でバスを降り、歩いてロープウェイ山麓駅へ向かった。もうここから登山開始みたいなもの。
朝9時過ぎに那須ロープウェイ山麓駅に着き、峠の茶屋へ歩いて向かう。
雲ひとつない晴天。長袖一枚では歩き出すと少し暑いくらい。
峠の茶屋駐車場脇のキレイなトイレ(ありがたい!)で用を済ませ、鳥居をくぐる。
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視界が開けた。
朝日岳と、峰の茶屋へ向かう道。完璧な晴天のもと、開放感が気持ちいい。
風もそれほど強くない。
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この開放感溢れる道、好きだなぁ。
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いいね、那須岳。
すでに満足しそうだけれど、今日は岩場と高度感に慣れたい、という目的がある。9月初めの立山縦走の時に、高度感に足が止まりそうになったから…
峰の茶屋へ到着(人が多くて写真なし)し、開放感あふれる眺望を目の前にしておやつ休憩とする。
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この場所は風の通り道かもしれない。那須岳としては風が弱い日だと思うが、肌寒さを感じた。薄手のウィンドシェルを羽織ってから再び歩き出す。
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あれ?また風がなくなった。山に遮られたのだろう。日差しはそこそこ強いので、風がないとやっぱり暑い。難しいな。
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この平坦なトラバースの道を過ぎると、岩場・鎖場が始まる。
登りだし怖くはないけれど、岩の上にうっすら泥がコーティングされているようなところが多く、霜が降りたり雨の時はめちゃくちゃ滑りそう。
ここ、下りはどうなっちゃうのかなぁ、という不安も少しよぎる。
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次に、左側が切れ落ちている鎖場のトラバースにうつる。すれ違いができないので、声をかけながら譲り合って進む。
あろうことか先頭になってしまったが、自分のペースをできるだけ保って進んだ。
先頭でのんびりと写真も撮れないので、この岩場続きの道は写真がない。
朝日の肩に到着。
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ここからの岩場は道幅があるので、怖さはない。
空いているうちに…と思ったが大間違い、大混雑の朝日岳山頂へ到着した。
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この後ろに立っている人が降りるのをずっと待って、撮影。
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峰の茶屋も見える、
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左に見えるスペースが朝日の肩。そこからさらに奥へ進む予定…
渋滞しかかっている道を朝日の肩まで降りてきた。
さあ、少し休憩したら、その先へ…
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と思って進みかけた。
振り返って、別の角度からの朝日岳を眺める。
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う〜ん、なんか暑いな、と思った。そして、そこで足が止まった。
身体のキツさというよりは、なんとなく…
もう今日はこれ以上頑張らなくていいかも。
そんな感覚があった。
朝日岳へ登っている途中、下山中の女性の方がパートナーに「なんだかこれでもう満足しちゃった感じ。もう茶臼岳行かなくてもいいかも」と言っている言葉が聞こえていて、それがリフレインした。
朝日の肩までの岩場を、ちょっと緊張して、でも楽しんで登ったところで私も満足したのかも。でもさすがに100名山の茶臼岳を登らずに帰るわけにもいかないな〜。その気力は残しておきたい。
そこでひとまず朝日の肩まで戻ってきて、1900m峰で食べるはずだったおにぎりと、持ってきたお湯で味噌汁を作って食べながら、どうするか考えることにした。
座っていると、風が心地よい。
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当初の計画は1900m峰から清水平のあたりまで。
1900m峰から先は、岩場ではなく木道などのなだらかな道が続くそう。場所によってはぬかるみもあり。草紅葉がきれい、かもしれない。。。
でもなんだか、今日は穏やかな道はいいや、と思った。
しかも、先へ進んだからといって、人が少ない静かなトレッキングになるわけでもなさそう。
眺望も、ここまでのもので満足していた。トレーニングとしては足りないかもしれないけれど、それを目的に清水平まで歩くことばかりを考えてしまうと、目の前の景色を身体で受け止めたり、心地よい風を感じるようなことは難しいかもしれない。
そもそも、あの岩場を下って、その後茶臼岳へ登るという行程がまだ残っている。
うん、戻ろう。
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登りより下の方が、滑らないように気をつけるあまり足どりはおぼつかないけど、気持ちとしては楽しむ余裕があった。
登ってくる登山者の中で、足がすくんだのか、私は歩いて通過できた場所を座って移動している方もおられた。
立山雄山から大汝山へ向かう道の一部も、そんな感じだったのかもしれない。あの場所も、今通れば普通に歩いて通過できたのかもしれない。
再び、このトラバースの道に戻ってきた。太陽がちょうど紅葉を照らして、茶臼岳と紅葉がいい感じに一緒に目に入ってくる。
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大混雑の峰の茶屋に戻ってきた時…
ずっと前を歩いていて、時々声をかけ合っていた方が振り向きざまに
ニホンカモシカ!
と指差して教えてくださった。
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不思議そうに?こちらをしばらく見ていた
私たちの方がこの山にお邪魔しています。ありがとう。
一息ついて、さあ、茶臼岳へ向かおう。
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岩ゴロゴロの道が続いているが、歩きやすく整備されている。
直射日光が照り付けて、登っていると暑い。
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朝日岳と、歩いてきた道。その奥には、今日歩くはずだった1900m峰や三本槍岳方面が丸見えだ。
今度、歩きたい!と思った時に歩いてみよう。その日が来るか来ないか、今はわからないけれど。
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そして、大混雑の茶臼岳山頂に到着。
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広々とした景色を前に、おやつをいただいた。
遠くには谷川岳かな?
関東平野が広がる先に、筑波山の姿も。
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老若男女、この眺望に大喜びだ。
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さて、そろそろロープウェイ駅まで下ることにする。
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ここからの下りは、私の苦手なザレ、がれ道で、浮石も多く脆い道だった。今回一番気を遣ったかもしれない。先行するパーティーにも引き離されてしまったけれど仕方がない。
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関東平野の広さを感じながら、慎重に、でも気持ちよさも感じながら下っていった。
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13時過ぎにロープウェイ乗り場に到着。ここで色々あったけれど、書くことはやめておく。
バスの道中も大渋滞。那須塩原駅に到着したのは16時過ぎだった。。。
お腹が空いたので、山行記録で気になっていた駅前のお蕎麦やさんに入る。
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バスの時間が読めないと思い、帰りの新幹線は指定席をとっていなかった。自由席1つくらい空いているだろうと思ったけれど…連休を甘くみていた。
まあ、新幹線は1時間弱だから立っていよう。デッキで過ごすことになった。
乗り物系の混雑、渋滞や、山頂の大混雑には閉口したけど、ちょっと緊張する岩岩の下りなどは、ゆっくり行きたい私にとっては渋滞しているくらいでちょうどよかった。
今日は、自分の感覚に素直になって、山行計画を短縮して朝日岳、茶臼岳の登山となった。景色も、岩場も楽しめたし、なんだかさっぱりとした気持ちがあった。
今年の夏に燕岳を目標として、その前に色々と試行錯誤して登ってきた。
燕岳に登れたら、その次に立山縦走にチャレンジしようと思っていた。
実際にも歩くことができた。
そんな大きなチャレンジの前の山歩きは、その時間そのものを楽しむというより目標達成のためのトレーニングの意味合いがどうしても強くなっていた。
そんなふうにステップアップしてきた登山者は多いと思う。
今回も、“岩場と高度感に慣れたい“という意図があった。
そして年末には丹沢縦走を予定しているし、来年には蝶ヶ岳から穂高連峰、槍ヶ岳のパノラマを眺めたい…そのためには、普段の山歩きも“できるだけ10km、1000m近いアップダウンを歩こう“とかそんなことをいつも考えてしまう。できるだけ負荷をかけることばかり考えていたかもしれない。
ここを登れたら、次は?その次は?
…
上高地でも、軽々と私の歩みを超えている人を見ては、自分も…などと焦りを感じていたと思う。
“目標をクリアした“という達成感を求め続ける山歩きになっていたとして…それに少々疲れてきたのかもしれない。
ちょっとその流れにブレーキをかけたのが今回だったと思う。
肝心の、“美しい自然と一緒に居る“という感覚が薄れてきていたかもしれない。
もっと「今ここ」を感じる余裕を持ちながら、登れたらいいなと思った。
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あの山を登ってみたい。あの景色を見てみたい。
その気持ちはもちろんまだ残っている。
でも、今の私にとってそれらは気軽に達成できる目標ではない。
しかしそのことを中心に普段の生活を合わせることができない現状もある。
そのために努力し続けられる情熱が、今は足りないかもしれない。
景色や自然を感じる山歩きをして、それでトレーニングとしての負荷が弱いのであれば、それが私の限界なのかもしれない。
そんな思いも湧いてきた。
単に今気持ちが疲れているからかもしれないけれど。
まだ、私の山の楽しみ方は定まっていない。
その時々の楽しみやワクワクをもっと感じていこう。
その過程で何か定まってくるのかもしれない。
どんな方向になるのか、楽しみになってきた。