秋の上高地②初めての岳沢トレイル、そして岳沢テラスへ
岳沢湿原から岳沢小屋の方へ登っていく道は【岳沢トレイル】と呼ばれている。
上高地の河童橋から穂高の山々を眺める時、すり鉢状の底辺に白く筋のように見えるがれ場がある。その横を、中腹にある岳沢小屋まで登っていくルートである。
ここを登る多くの登山者は、岳沢小屋を経て、その上の前穂高岳、ひいては奥穂高岳などへ向かっていく強者(つわもの)たち。そんな認識があった。
私はもちろんそんな登山はできないので、岳沢小屋までがゴールである。
岳沢湿原を含めて熊情報が多い場所、かつ行き来する登山者も多くはないだろう。熊鈴を出して、出発する。
岳沢湿原の混雑から、いきなり貸切状態の登山道に入る。
熊さんは気になるけど、やっぱりこっちの方がいいな…と、欲しかった「ときめき」?が復活してくるのを感じる。
ここも、“苔の森“と言っても良いかもしれない。私は八ヶ岳とまだご縁がないのだが、八ヶ岳の森もこんな感じなのだろうか?と思いを馳せながら登っていく…
次第に道の感じが変わってくる。
さっきまでは横尾から本谷橋までの道に似ていたけど、このあたりは本谷橋から涸沢に向かう道にも似ているな。そりゃそうか、同じ山域なんだもの。
などと、脳内独り言を呟きながら足を進める。
すっかり晴れて、とても暑くなってきた。体重が増えた身体の感覚は正直で、気持ちとは裏腹に足取りは重たい。
視界が開けて、河童橋から眺めていた西穂の山並みがバーンと目の前に…
いや〜、この道好きだな。そう思った。
ラスト「1番」の看板と小屋が見えたら…
雲ひとつない晴天だった、と写真を見返して気がついた。
頭の半分は「暑い💦」と「転ばないように歩かなきゃ💦」だったようで、目に入る絶景を捉えきれていなかったようだ。
がれ場を過ぎると、まもなく岳沢小屋に到着した。
小屋に着いて楽しみにしていたのは…小屋の絶景テラス。
写真で見ていたテラスに着いてゆっくり…しているつもりだったが、心の中は完全にくつろいではいなくて、まだそわそわした感じがあった。
そんなの勿体無い、という自分責めの声も聞こえる中…
今日の自分はそんな状態なんだな〜
そんな日もあるさ
自分にダメ出ししないようにしよう
…と、これまた理性の声と共に居た。
結構空腹だったようで、これまた名物のブラックキーマカレーもいただいてしまい、すっかり満腹。
さあもう少し景色を見ながらまったりしよう、と思った矢先、ずっと背後に立っている人の気配を感じた。
「席、空きますか?」と聞かれた。
あ〜もう少し良いですか?と答えたものの、なんだか興ざめ…というか、ずっと空きを待たれているのを知りながら心からまったりすることはできないので、席を立つことにした。
確かに、気づかない間に私が到着した時よりもだいぶ混雑していた。
ヘルメット持参で、ここが中継点、という登山者ばかり。
ただ、下山を開始するには満腹すぎる。遮るものがないこの場所は暑いけど、もう少し景色を眺めてから下山しようと思い、小屋の奥のヘリポートの方まで行ってみることにした。
実は岳沢トレイルに入る前から膝周囲に違和感があった。
下山はゆっくりが良さそう。バスの時間もあるのでそろそろ下山を開始することにしよう。
6番の展望台から森の中へ入る時、すれ違いざまによろけた。
その前から膝に違和感を感じていたが…この直後に左太ももの内側、内転筋が攣り始めた。
以前、谷川岳で両脚が攣った経験からも、大事に至る前にすぐ休憩を取ることにした。
登山道の脇に座れる石があった。ありがたい。
穂高の岩稜を歩き通してきたんだな、という雰囲気の方々が横を降りていく。
私よりも歩き方がおぼつかない?ように見える方も、ヘルメットを大きなザックにつけて背負っていた。
ちょっと複雑な気持ちになった。
比べても仕方がないとわかっているのに、なんだか情けないような気持ち。
同じ人間なのに、なぜ私には無理なのだろうか。
いや、そもそも私も穂高に登りたいのか?
最近は筋トレする気力すらなかったじゃないか。
こんなところで脚が攣っているようじゃ無理だし。。
でもアルプスを歩く人たちがみんな毎日鍛えているのかっていうとそうでもないだろう。
なのに私は色々準備しないと登れない…
そこまで毎日できないよね…
・・・・・・
しばらくそんな呟きを脳内で繰り返しながら、脚の攣りが軽減していることを確認し立ち上がる。
さあ、また歩き出そう。
そして、再び岳沢湿原へ。
清らかな沢が青空に映える。
何度も写真に収めた、この景色に戻ってきた。
さあ、河童橋に戻ろう。そして、小梨平でまったりしよう。