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夏山…絶景を前にして思うこと②
この記事の続きです。自分の中で風化してしまわないうちに…
奥大日岳まで行けるかわからないけれど、行けるとしたら早出しかない。
ということで、雷鳥荘の朝食はお弁当にしてもらう。去年雄山に登った時の酢飯のお弁当を思い出す。今回も多分同じ。
さて、朝の5時半。早出の人も少なくない。その多くが室堂、そしておそらく雄山へ向かうなか、ひとり雷鳥沢へ降りる。日の出は過ぎていても、雷鳥沢へ日が射すにはまだ早い。暗すぎず明るすぎず、なんともいえない静寂と清々しい朝。
夏休みに入ったばかりの7月、テントも少なく静かな雷鳥沢である。
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まぶしい光に反射しないので、植物の緑がくっきり美しい。
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花に囲まれた沢沿いの道。ここを通るだけで幸せ…!
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そして、昨年大好きになった、新室堂乗越に向かうこの場所。
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早朝、ほぼ貸切でこの景色の中にいること自体が幸せ✨
さて、苦手なガレた登りを過ぎて稜線へ出る。室堂に日が射してくる。
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室堂平や雷鳥沢を一望しながら✨稜線を少し歩くと…
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昨年秋、ガスで出会えなかった剱岳、ついに対面!!
今日のお目当てはチングルマ。そして剱岳、…だったので、ほぼ達成したようなもの、かな。
朝日がどんどん照らしてくる。遮るものがないので、朝6時半なのに暑い。
室堂乗越でしばし考える…奥大日へ向かうか?それともこの景色を満喫すればそれでいいのか?
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まだ朝の7時前。時間はたっぷりある。問題なのはこの日差しと高所に身体がどう反応するか…とりあえず昨年引き返した場所まで行ってみよう。
室堂乗越を少しだけ過ぎた場所から望む剱も”おすすめ”。ここまでなら比較的楽にこれる。
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さて、ちょっとした岩場のトラバース。昨年軽い高山病?でふらつきが出始めていたこともあり引き返した場所。まわりに誰もいない心細さを感じながら…クリア。
そんな場所を所々クリアしながら進んでいくと、天狗平の広がりの向こうに薬師岳の頭が見えた! 室堂乗越からは見えなかった薬師岳。
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目の前にはしんどい登り。背後からは容赦ない陽射し…
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一歩一歩登っていくと、薬師岳とその周りの裏銀座の山々の広がりが見えてくる…
右後ろから剱に見守られ、左には薬師が。なんと贅沢な道✨
こんな絶好のお天気のもと、それぞれの行き先を求めて絶景の中を歩いているのだな…
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そろそろかな、と思った頃、こんなお花畑が迎えてくれた。
写真では見たことがあったこの場所も癒される。
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そして、到着。
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着いてしまうと、なぜかあっけなかった。
雷鳥沢より奥に進む登山者の皆さまにとって、奥大日はお気軽な場所のようだ。確かに標高差からみれば近場の低山のそれと大きな違いはない。ただ、私にとっては…高所であること、ずっと日陰がない、苦手なガレ道(+初めての道)、ほぼ貸切状態で静かな登山道。足をすべらせたら深いところまで落ちてしまっても気づいてもらえない?という緊張感、などは初体験であった。
先に到着していた年配のご夫婦と「今日は本当に最高のお天気ですね」「槍や笠ヶ岳も見えるね」などとやりとり。人見知りの私でもついそんな言葉が出る。
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そして…やっぱり心に浮かぶのは感謝の気持ち。天気に恵まれたこと。交通トラブルなどもなく無事にこの地に来られたこと。安全な山小屋。健康でいてくれる家族。
そして、前回ガスと体調不良で引き返し、着くことができなかったこの場所へ、怖さや息切れと向き合いながら足を進めることができた、私。
絶景に見守られながら、お弁当の残り半分(半分は室堂乗越で)をいただく。景色に見惚れていたら、唐揚げを落としてしまう…(ちゃんと拾いましたよ)
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幸せな時間は思ったより短かった。実は以前からあった下腿の違和感をこの時感じていた。頭の半分は「あのガレた道を安全に下れるか?」という心配だった。
もっと景色を眺めていたい気持ちがあったが、あまり休みすぎると脚が動かなくなることや、ずっと日に照らされていることでの消耗などの心配が勝ってきたのと、山頂も混みはじめてきたので、ご夫婦より先に下山を開始する。どんどん登ってくる人がいて、自分のペースを守る方が安心な私は早く下山を開始して正解だった。
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ちょっと緊張する岩場を超えてもうすぐ室堂乗越、というところで急に体がふらつきはじめ、なんでもない石で滑った。無理やり休憩をとる。
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その後も、新室堂乗越から下るガレ道で転びそうになった。一番脚が止まった時間帯かも。もっと怖さを感じた場所では大丈夫だったのに。滑落する時ってこういうことか。
雷鳥沢へ戻り、トイレ休憩しながら振り返る。
行かないと見えない景色がある。
そこに到達するには、自分にできる準備と、自分を冷静に導く心が必要。
昨年は絶景を前にはやる気持ちを抑えられず、高所適応する前に早足になりちょっとした道迷いもあった。
今回は、アームカバーや手袋の付け外しや写真撮影などのときは(高尾山なら歩きながらやってしまうが)必ず足を止める。緊張する岩場を通過する前はルートを確認し、通過し終わったらいったん止まって呼吸をする。
心拍数が上がりすぎたら、休憩したばかりであってもいったん止まって呼吸を整える。これらを愚直に、自分の身体と相談しながらやっていった。
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下山まで安全第一ということに集中した一方で、景色をもう少し味わいたかったという気持ちがある。
自分にとってはチャレンジの要素があったために、景色を堪能しながら足を進めることはまだ難しかった。絶景を前にしながら…
でも、それも今の私。安全に行って帰ってこられたことで100点!
(そもそもウエイトオーバーだし、体調は雄山の時より良くなかった)
安全に下山できたからこそ、「次」を考えることができるのだから。
雷鳥荘に預けていたお泊まりセットを受け取り、まだバスまでに時間があったので温泉に入る。ずっと食べてみたかったカレーをいただく。
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富山発の新幹線まで余裕をもって室堂から高原バスに乗る。
最後のお目当ては…美女平の森。。