大草原花魁道中
1
鈴の音、風の音、蹄の音。
草の海渡る、麗人の群れ。
装飾過多の斑馬
その背の鞍は御輿様
我見たり。
かつて見ぬ輝かしき女、
御鞍の上にありしを。
その面、眩しきほどに白く、
紅き唇まことに静やかにして、
遠く見つめる瞳の奥深さ。
美しき女なり、されど、悲しき女なり。
2
鈴の音、風の音、蹄の音。
黒髪に虹の簪、
遥か蒼穹に映え、
金襴、銀襴、錦の緞子、
風の草原に妙麗なる女。
女は花魁、色町の女。
せむしの女衒の引く手綱、
燃え尽く遊廓の噂、
遠き辺境の風にも聞かぬではなし。
我は牧童、羊飼い。
鞍もなき野馬の背にまたがり、
我が背につかまる乙女は十五、
ともに連れ立ち、遠乗りのさなか、
遥か草原に幻のごとき行列を見たり。
3
風の音、風の音、蹄の音。
麗人の旅団は夢のように、
ゆるゆると静やかに、
我らが前より、行きすぎたり。
《あれは何?》
背に寄り添う少女の声は、
熱き振動となりて、
我が体の内を揺さぶれど、
我が心に浮かぶは、
美しきあの女の面影のみなり。
《あれは幻?》
《幻ではない。大草原の・・・花魁道中》
《大草原花魁道中・・・》
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