『幻影飛行機械』感想
ちょっと調子が悪くて、雲の上を歩いているようにふわふわしているのですが、ついつい読みかけの本を手にとってしまいました。
そして……泣きながら(嘘)一気に読みました。
目方大作『幻影飛行機械』(ハカヤワ文庫JA)
えー、詳細を書くような気力体力はないのですが、まあ、一言で言えば「スーパーヒコーキ野郎大戦」であります。
あるいは「ドキッ!ヒコーキ野郎だらけの幻魔大戦」といったところであります。
冒頭、1944年7月31日、ヨーロッパの空に飛び立ったアントワーヌ・ド・サン=テクジュペリの飛行機は、突如巨大な飛行生物の群れに襲われます。
これ、まあ何なのかというと「バイアクヘー」という怪物なのだけど、鉄兜をかぶった、一つ目の乱杭歯の猿みたいな怪物が、そのバイアクヘーにまたがっているんですね。
いわゆる「クトゥルー神話」ってやつですね。ご存じない方のためにご説明いたしますと、「クトゥルー神話」ってのはHPラブクラフトっていう作家が創り出した異次元神話のようなもので、完全に人間の感覚を越えた筆舌に尽くしがたく形容しがたい形状や性質の「異次元の神々」がいっぱい出てくる神話大系ですね。あんまりにもおぞましい上に魅力的なキャラクターなので、ラブクラフト亡きあとも、多くの作家によって書き継がれました。日本でも栗本薫とか朝松健とか、いろんな作家が書いています。で、この作品もそういう作品なんですね。
怪物に襲われて、恐慌状態に陥るテクジュペリですが、そのとき心の中に響いてきた幼い少年の声に導かれて、怪物の群を振り切ることに成功します。
内なるお子様(言うまでもないですね。「星の王子さま」です)の声に従って、彼は蒼く輝く飛行要塞にたどり着きます。これは「飛行世界」というらしいんですが、もうなんだかラピュタみたいなもんでしょうか。
そこには名だたる実在/架空にかかわらず、また時代を超えて、名だたるヒコーキ野郎たちが三々五々集ってくるところでありました。
そこには『イリュージョン』のドン・シモダもいる。『華麗なるヒコーキ野郎』のウオルド・ペッパーもいる。リンドバーグもいる。出てくる野郎一人一人がいちいちすごいヒコーキ野郎なんだろうと思いますが、詳しくないのでよくわかりません。なぜか、稲垣足穂やハワード・ヒューズなんかが作戦参謀としていたりする。
タルホ曰く、ラブクラフトはんが亡うなって、次次元の怪物どもが湧きだしてきよったンじゃわい。ってよくわかんないんですけど。
ということで、ヒコーキ野郎VSクトゥルーの神々の空中大戦争が始まるわけです。
ま、私が個人的ツボだったのは「星の王子さまと戯れるイナガキタルホ爺」という構図がなかなか面白かったですね。あとはカレーを食べる「星の王子さま」という小ネタ。これらが見られただけで、あるいみ満足というか、ちょっとした感動(?)でした。若き追撃王(エース)・トンミイ・ハミルトンの成長物語でもあります。
ラストは、書かない方がよいと思いますが、「うおー」って感じですごかったですね。ちょっと滂沱たる落涙というか。
というわけで、疲れておりますので先を書くことができませんが、まずまず面白かったのではないでしょうか。
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2005.07.21