利用規約ウォッチャー みなしボウイです。
今回は、「AirJapan運送約款」(国際運送約款)をウォッチしていきます。「AirJapan」は、ANAグループのエアージャパンが運航する中距離国際線の運航ブランドで、2024年2月9日、成田~バンコク(タイ)線で初就航となりました。
AirJapanは、格安航空会社(LCC)と、フルサービスキャリア(FSC)の双方のサービスの利点を融合した「ハイブリッドエアライン」「ミドルコストキャリア」(MCC)と称されますが、規約面から見たときにどういった位置づけのエアラインとなるのか、重要な5つのポイントに注目して運送約款をウォッチしていければと思っています。
安心安全にサービスをご利用頂けるポイントになりますので、最後までよろしくお付き合いください。
正文(英語版)と日本語版の関係
AirJapan運送約款は、正文が英語版であり、日本語版は参考訳文という位置づけになっています。これは、仮に、日本語による運送約款の訳文と英語による運送約款の正文との間で何らかの不一致がある場合には、正文である英語の運送約款が優先されることを意味しています。
国際運送約款の場合の正文が英語版となることは、他の日系エアラインでも同様です(JAL、ANAなど)。
用語の定義
AirJapan運送約款第1条には、国際線エアラインらしい用語の定義が出てきます。その中からいくつかをピックアップしてみます。
条約
ICAO(国際民間航空機関)という、国連傘下の専門機関があり、ここでは国際民間航空の安全性、保安、効率、定期運行や航空環境保全に必要な国際基準や規則の制定を行っています。本部はモントリオール(カナダ)で、2013年末現在の加盟国は191カ国、なので国連加盟国とほぼ同数です。日本は、1953年に加盟しました。
AirJapan運送約款に出てくる、「ワルソー条約」「1955年にヘーグで改正されたワルソー条約」「1975年のモントリオール第二追加議定書で改正された、1955年にヘーグで改正されたワルソー条約」「モントリオール条約」は、現在ICAOで取り扱っている国際条約ですが、これら全て有効な条約です。
上記の4条約は、国際的な航空貨物、旅客の運送に関する航空運送人の責任や航空運送状の記載事項等を定めた条約ですが、国際条約というのは複雑なもので、各国がどの条約に批准しているかがポイントとなります。最新版となるモントリオール条約は、EUやアメリカ、日本を含む多数の国々が加盟しているものの、ベラルーシやブルネイ、ラオス、ミャンマー、ベトナムなどはワルソー条約・改正ワルソー条約までの加盟、バングラデシュやカンボジアなどはモントリオール条約は未批准です。
発着空港の各国が、同一の条約に加盟している場合に適用されるため、例えばA国がワルソー条約・改正ワルソー条約及びモントリオール条約に加盟している場合で、A国~日本国間では、モントリオール条約が適用されます。
フランス金フラン
国際条約をベースとしているため、勘定単位として金フランが用いられています。これはワルソー条約の当時は金本位制であったためで、モントリオール条約では後述のSDRに置き換わっています。
SDR
米ドルが中心的な国際準備資産となっていく中で、国際通貨基金(IMF)が1969年に創設した国際準備資産、及びその単位のことです。
金フランにしてもSDRにしても、何事もなければ関わりはありませんが、事故その他の際の賠償責任額の算出に関わってくるものです。
航空便のスケジュール、延着及び取消
少し前後しますが、第12条「航空便のスケジュール、延着及び取消」を見てみます。
A) スケジュール
スケジュールどおりに運航することに最大限努力を払うが、スケジュールは予定であって保証されたものではないし、運送契約の一部を構成するものではない。よって、航空便の遅延又は欠航により顧客に何か費用が生じても、エアライン側は責任を負わない、ということになります。
B) 取消
上記2つの条項について、実は記載されている内容は、他の日系FSC/LCCと違いはありません。FSCの場合、遅延や欠航時に顧客へ補償や便宜を図る場合がありますが、原則としてはあくまで上記だということになります。
航空便の変更、運送不履行及び接続不能
第12条「航空便のスケジュール、延着及び取消」を踏まえた上で、第7条 航空便の変更、運送不履行及び接続不能を見てみます。
B) 当社の都合による航空便の変更
不可抗力の事由以外でのエアライン側の都合で、航空便の変更や運送不履行などがある場合、エアライン側は自社便への振替または払戻しとなります。
C) 当社及び旅客の都合以外の事由による航空便の変更
不可抗力の事由でのエアライン側の都合で、航空便の変更や運送不履行などがある場合、エアライン側は自社便への振替または払戻しとなります。
このあたりがFSCとLCCとで、取扱いが異なってくる部分になると思われます。FSCの場合、自社便への振替や払戻しのほかに、経路違いの自社便での輸送、他のエアラインや他の輸送機関への振替依頼、といった何とか到着地まで輸送しようという条項が盛り込まれています。
愛玩動物(ペット)について
愛玩動物(ペット)の輸送について、国際線の運送約款で定めがあるのは基本的にはFSCに限られます。
AirJapan運送約款では、補助犬以外の動物は受け付けないことが定められています。
AirJapanがLCCなのか否かという議論もありますが、座席や機内食のクオリティ、CAの対応が仮にFSC並であったとしても、先日の欠航時の対応や運送約款を見れば、AirJapanはLCCであると言えると思います。私はAirJapanをDisるわけでは無く、エアラインの特性に応じた旅行手配ができれば良いと思っています。
今回は、このあたりで終わります。ありがとうございました。