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【遅延欠航時】AirJapan運送約款を読み解いてみた【どうなる?】

利用規約ウォッチャー みなしボウイです。
今回は、「AirJapan運送約款」(国際運送約款)をウォッチしていきます。「AirJapan」は、ANAグループのエアージャパンが運航する中距離国際線の運航ブランドで、2024年2月9日、成田~バンコク(タイ)線で初就航となりました。

AirJapan

AirJapanは、格安航空会社(LCC)と、フルサービスキャリア(FSC)の双方のサービスの利点を融合した「ハイブリッドエアライン」「ミドルコストキャリア」(MCC)と称されますが、規約面から見たときにどういった位置づけのエアラインとなるのか、重要な5つのポイントに注目して運送約款をウォッチしていければと思っています。


安心安全にサービスをご利用頂けるポイントになりますので、最後までよろしくお付き合いください。


正文(英語版)と日本語版の関係

AirJapan運送約款は、正文が英語版であり、日本語版は参考訳文という位置づけになっています。これは、仮に、日本語による運送約款の訳文と英語による運送約款の正文との間で何らかの不一致がある場合には、正文である英語の運送約款が優先されることを意味しています。

(おことわり:日本語による国際運送約款は、参考のためのものであり英語によるものが正文となっております。)

AirJapan運送約款

国際運送約款の場合の正文が英語版となることは、他の日系エアラインでも同様です(JAL、ANAなど)。


用語の定義

AirJapan運送約款第1条には、国際線エアラインらしい用語の定義が出てきます。その中からいくつかをピックアップしてみます。

条約

「条約」とは、次のいずれかの文書のうち、当該運送契約に適用になるものをいいます。1929年10月12日ワルソーで署名された「国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約」(以下「ワルソー条約」といいます。)。 1955年9月28日ヘーグで署名された「1955年にヘーグで改正されたワルソー条約」。1975年のモントリオール第一追加議定書で改正されたワルソー条約。 1975年のモントリオール第二追加議定書で改正された、1955年にヘーグで改正されたワルソー条約。1999年5月28日モントリオールで締結された「国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約」(以下「モントリオール条約」といいます。)。

AirJapan運送約款

ICAO(国際民間航空機関)という、国連傘下の専門機関があり、ここでは国際民間航空の安全性、保安、効率、定期運行や航空環境保全に必要な国際基準や規則の制定を行っています。本部はモントリオール(カナダ)で、2013年末現在の加盟国は191カ国、なので国連加盟国とほぼ同数です。日本は、1953年に加盟しました。

ICAOウェブサイト

AirJapan運送約款に出てくる、「ワルソー条約」「1955年にヘーグで改正されたワルソー条約」「1975年のモントリオール第二追加議定書で改正された、1955年にヘーグで改正されたワルソー条約」「モントリオール条約」は、現在ICAOで取り扱っている国際条約ですが、これら全て有効な条約です。

上記の4条約は、国際的な航空貨物、旅客の運送に関する航空運送人の責任や航空運送状の記載事項等を定めた条約ですが、国際条約というのは複雑なもので、各国がどの条約に批准しているかがポイントとなります。最新版となるモントリオール条約は、EUやアメリカ、日本を含む多数の国々が加盟しているものの、ベラルーシやブルネイ、ラオス、ミャンマー、ベトナムなどはワルソー条約・改正ワルソー条約までの加盟、バングラデシュやカンボジアなどはモントリオール条約は未批准です。

発着空港の各国が、同一の条約に加盟している場合に適用されるため、例えばA国がワルソー条約・改正ワルソー条約及びモントリオール条約に加盟している場合で、A国~日本国間では、モントリオール条約が適用されます。

フランス金フラン

「フランス金フラン」とは、純分1000分の900の金65.5ミリグラムからなるフランスフランをいいます。フランス金フランは、各国の通貨の端数のない額に換算することができます。

AirJapan運送約款

国際条約をベースとしているため、勘定単位として金フランが用いられています。これはワルソー条約の当時は金本位制であったためで、モントリオール条約では後述のSDRに置き換わっています。

SDR

「SDR」とは、国際通貨基金の定める特別引出権をいいます。SDR建で示された額の各国通貨への換算は、訴訟の場合には、最終口頭弁論終結の日の当該通貨のSDR価値により、また、訴訟以外の場合には、支払うべき損害賠償金額の確定した日、又は、手荷物の価額を申告した日の当該通貨のSDR価値により行なうものとします。

AirJapan運送約款

米ドルが中心的な国際準備資産となっていく中で、国際通貨基金(IMF)が1969年に創設した国際準備資産、及びその単位のことです。

金フランにしてもSDRにしても、何事もなければ関わりはありませんが、事故その他の際の賠償責任額の算出に関わってくるものです。


航空便のスケジュール、延着及び取消

少し前後しますが、第12条「航空便のスケジュール、延着及び取消」を見てみます。

A) スケジュール

当社は、合理的な範囲内で、旅客又は手荷物を旅行日において有効なスケジュールどおりに運送することに最大限努力を払いますが、時刻表その他に表示されている時刻は、予定であって保証されたものではなく、また運送契約の一部を構成するものではありません。運航予定は予告なしに変更されることがあります。当社は、この結果、適用法令等に別段の定めのある場合を除き、航空便の遅延又は欠航により生じた費用等に対し、当社は責任を負いません。

AirJapan運送約款

スケジュールどおりに運航することに最大限努力を払うが、スケジュールは予定であって保証されたものではないし、運送契約の一部を構成するものではない。よって、航空便の遅延又は欠航により顧客に何か費用が生じても、エアライン側は責任を負わない、ということになります。

B) 取消

1. 当社は、予告なしに、当社の引き受けた運送につき運送人を変更し又は航空機を変更することがあります。
2. 当社は、次のいずれかの事由によるときは、予告なしに、航空便又はその後の運送の権利若しくは運送に関わる予約を取り消し、打ち切り、迂回させ、延期させ又は延着させ、また離着陸すべきかどうかを決定することがあります。この場合、当社は、この約款及び当社規則に従って航空券の未使用部分に対する運賃及び料金を払い戻しますが、その他の一切の責任を負いません。
(a) 当社の管理不能な事実(気象条件、天災地変、ストライキ、暴動、騒擾、出入港停止、戦争、敵対行為、動乱又は国際関係の不安定等の不可抗力をいいますが、これらに限定されるものではありません。)で、現実に発生し、発生のおそれがあり若しくは発生が報告されているもの、又はその事実に直接若しくは間接に起因する延着、要求、条件、事態若しくは要件。
(b) 当社が予測、予期又は予知し得ない事実。
(c) 適用法令等によるもの。
(d) 労働力、燃料若しくは設備の不足又は当社その他の者の労働問題。
3. 当社の要請にもかかわらず、旅客が請求された運賃の全部若しくは一部の支払いを拒絶した場合又は当該旅客の手荷物に関して請求され若しくは課せられた料金の支払いを拒否した場合には、当社は、旅客又はその手荷物の運送を取り消し又はその後の運送の権利を取り消します。この場合、当社は、支払済みの運賃及び料金の未使用部分があればそれをこの約款又は当社規則に従って払い戻す以外に一切責任を負いません。

AirJapan運送約款

上記2つの条項について、実は記載されている内容は、他の日系FSC/LCCと違いはありません。FSCの場合、遅延や欠航時に顧客へ補償や便宜を図る場合がありますが、原則としてはあくまで上記だということになります。


航空便の変更、運送不履行及び接続不能

第12条「航空便のスケジュール、延着及び取消」を踏まえた上で、第7条 航空便の変更、運送不履行及び接続不能を見てみます。

B) 当社の都合による航空便の変更

1. 12条B項2号に定める場合を除き、当社が航空便を取り消した場合、正当な理由なく航空便をスケジュールどおりに運航することができなかった場合、予約した便の座席を提供できなかった場合、又は旅客が予約している当社航空便への接続を不能にした場合には、当社規則に基づき、次のa又はbの措置を講じます。
(a) 空席のある当社の他の航空便での運送
(b) 13条C項に定める当社の都合による払戻しの条項に従った払戻し
2. 12条B項2号a~dに定める事由以外の事由によって、当社航空便の出発後において旅客の到達地又は途中降機地を変更した場合には、当社が提示する範囲において旅客の選択により、次のa又はbの措置を講じます。
(a) 空席のある当社の他の航空便での運送
(b) 13条C項に定める当社の都合による払戻しの条項に従った払戻し
3. 当社航空便に接続する旅客を運送する運送人が航空便をスケジュールどおりに運航せず又は当該航空便のスケジュールを変更したため、当該旅客が接続するために座席を予約しておいた当社の航空便に搭乗できなかった場合には、当社は、接続できなかったことに対して責任を負いません。

AirJapan運送約款

不可抗力の事由以外でのエアライン側の都合で、航空便の変更や運送不履行などがある場合、エアライン側は自社便への振替または払戻しとなります。

C) 当社及び旅客の都合以外の事由による航空便の変更

1. 当社は、12条B項2号a~dに定める事由によって、当社が航空便を取り消した場合、航空便をスケジュールどおりに運航することができなかった場合、予約した便の座席を提供できなかった場合、又は旅客が予約している、当社航空便への接続を不能にした場合には、当社規則に基づき、次のa又はbの措置を講じます。
(a) 空席のある当社の他の航空便での運送
(b) 13条D項に定める不可抗力等による払戻しの条項に従った払戻し
2. 当社は、12条B項2号a~dに定める事由によって、当社航空便の出発後において旅客の到達地若しくは途中降機地を変更した場合には、当社規則に基づき、次のa又はbの措置を講じます。
(a) 空席のある当社の他の航空便での運送
(b) 13条D項に定める不可抗力等による払戻しの条項に従った払戻し

AirJapan運送約款

不可抗力の事由でのエアライン側の都合で、航空便の変更や運送不履行などがある場合、エアライン側は自社便への振替または払戻しとなります。

このあたりがFSCとLCCとで、取扱いが異なってくる部分になると思われます。FSCの場合、自社便への振替や払戻しのほかに、経路違いの自社便での輸送、他のエアラインや他の輸送機関への振替依頼、といった何とか到着地まで輸送しようという条項が盛り込まれています。

1. 第12条(B)項第(2)号に定める場合を除き、会社が航空便を取り消した場合、合理的な範囲を超えて航空便をスケジュールどおりに運航することができなかった場合、旅客の到達地若しくは途中降機地に寄航しなかった場合、予約した便の座席を提供できなかった場合、又は旅客が予約している乗継便への接続を不能にした場合には、会社は、旅客の選択により、次の(a)又は(b)の措置を講じます。
(a)会社が選択する次のいずれかの措置。
(i)空席のある会社の他の航空便で旅客を運送する
(ii)航空券の未使用部分を裏書し他の運送人に運送を依頼するか、又は他の輸送機関に輸送を依頼する
(iii)経路等の変更を行って、航空券又はその適用用片に表示されている到達地又は途中降機地まで、会社若しくは他の運送人の運送手段により運送するか又は他の輸送機関により輸送する。

(b)第13条(C)項に定める会社の都合による払戻の条項に従った、払戻。

ANA国際運送約款 太字は筆者が追加したもの

愛玩動物(ペット)について

愛玩動物(ペット)の輸送について、国際線の運送約款で定めがあるのは基本的にはFSCに限られます。

1. 当社は、次の物品を手荷物として受付けません。
(中略)
(e) 生きている動物。ただし、当社は、身体に障害のある旅客の補助を目的とする犬(盲導犬、介助犬、聴導犬。以下総称して「補助犬」といいます。)を、当社規則に従い運送することができます。その場合、当社は、補助犬の固有の性質に起因して生じる障害、病気又は死亡について一切の責任を負いません。

AirJapan運送約款

AirJapan運送約款では、補助犬以外の動物は受け付けないことが定められています。


エアージャパン社ウェブサイト

AirJapanがLCCなのか否かという議論もありますが、座席や機内食のクオリティ、CAの対応が仮にFSC並であったとしても、先日の欠航時の対応や運送約款を見れば、AirJapanはLCCであると言えると思います。私はAirJapanをDisるわけでは無く、エアラインの特性に応じた旅行手配ができれば良いと思っています。

今回は、このあたりで終わります。ありがとうございました。


なお本投稿における、発表内容は発表者個人の見解に基づくものであり、本投稿にて取り上げられている組織及びサービスの公式見解ではありません。

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