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笛の話
小学3年生の長男が、学校からリコーダーを持って帰ってきた。本当は持って帰って来ちゃいけないんだけどねー、とニヤニヤしている。
持ち帰ってはいけないものを持って帰ってきた上に、それをわざわざ私に告白までしている。何かはわからないが、特別な目的があるんだろう。
あえてどうしたのか聞くことはせずに、何が起こるか待った。
しばらくして、リコーダーの音が聞こえて来た。そこまで吹きたい曲があったのか。違う、曲ではない。音がする、という感じである。
音がする方を見たら、鼻でリコーダーを吹いていた。
目があったらにっこりと笑った。
YouTubeで鼻でリコーダーを吹く人を見たとかで、自分もやってみたかったと言っていた。やり遂げたその笑顔は輝いていた。
どちらかといえば良くないことをうまくやりおおせたときの、してやったりという感じの笑顔である。
小学生男子は鼻でリコーダーを吹く、というのは都市伝説だと思っていたけれど、実在することもあるんだなあ、と感慨深く思った。我が子とは思わなかったけど。
鼻でリコーダーは、しばらく吹いていたら満足したのか、その後は見かけなくなった。
そのかわり、持って帰ったリコーダーを肌身離さず持ち歩き、気がつけば合奏で吹いたという曲を吹いている。合奏で演奏したのは、鍵盤ハーモニカだったはずなのだけど。
カレーを食べながら吹いた時は流石に注意した。リコーダーの吹き口が黄色くなるんじゃないかとヒヤヒヤした。気がついたら布団に持ち込み一緒に寝ていた。
よっぽどリコーダーが気に入っているんだろう。演奏するのは合奏曲の1曲だけで、別の曲を吹こうとしないのも面白い。楽器があったときに何をしようとするかはその人によって好みが出るんだろう。
電源を入れなくても、準備なく演奏が始められる楽器は確かに彼向きかもしれない。