【本】今井むつみ 『学力喪失』:失われてない、見ようとしてないだけ
みなさん、おはようございます!
今日紹介する本のは『学力喪失』。
ショッキングなタイトルですが、一体どういうことでしょうか?
この本は、現代教育の課題に対し、認知科学・学習科学の知見に基づいた解決策を提案する一冊です。教育関係者や保護者の方々はもちろん、子どもたちの学びについて真剣に考えたいすべての方におすすめです!
子どもたちは本当に「わからない」のか?
子どもが授業を理解できないのは、本人の努力不足などと片付けられてきましたが、本当にそうでしょうか? 本書では、これまでの教育は「なぜわからないのか」という根本的な問題に目を向けてこなかったのではと指摘しています。
言葉や記号を具体的なイメージと結びつけることを記号接地と言います。しかし、これが不足すると、知識は実感の伴わない死んだ知識となってしまいます。教科書の内容を伝えるだけでは、生徒たちは実感を持って理解することができません。記号接地されていない知識を詰め込むことで、結果として思考力や応用力が欠けた人間を生み出すことになっていないでしょうか?
「遊び」が学びを変える!プレイフル・ラーニング
では、どうすれば子どもたちは生きた知識を身につけることができるのでしょうか? 本書が提案する解決策の一つがプレイフル・ラーニングです。
プレイフル・ラーニングとは、子どもたちがゲームやパズルを解くように、楽しみながら学ぶことです。自ら考え、試行錯誤し、「わかった!」という達成感を味わうことで、知識はより深く身につき、思考力も育まれていきます。
この時、大人(教師)の役割は、子どもたちの「学びたい!」という気持ちを引き出すファシリテーターとなることです。子どもがつまずく原因は思考力そのものではなく、思考の制御の問題が大きいため、子どもたちの注意を適切な方向へ導き、サポートすることが重要です。
読んで思ったこと:AIと人間の決定的な違いー記号接地と身体性
本書を読んで、人間の「学び」とは何か、深く考えさせられました。
AIは膨大な情報を処理できても、身体を持たないため記号接地、つまり実感を伴う理解はできません。これがAIが優れた作文マシンにとどまっている理由の一つでしょう。
一方、人間は五感を使い、身体を通して世界を経験することで、記号を生きた知識へと変えることができます。大人の果たすべき役割は、子どもたちが新しい概念を自分の世界に取り込むための媒介であることだったのでした。
まとめ:学びの本質を取り戻せ
本当は、子供達の学ぶ力が失われたのではなく、子供達の学ぶ力を大人が見失っているだけなのだと思います。子どもたちが自ら考え、主体的に学ぶ力を育むプレイフル・ラーニングこそ、これからの教育に必要な視点ではないでしょうか。