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【企業インタビューvol.2】IT営業から自治体・観光協会・DMO営業へ!多様な営業経験から語る自治体営業とは?


はじめに

皆さんこんにちは!リクロスの木藤です。

今回は企業インタビュー第二弾として、株式会社まちづくりプラットフォームの小泉さんにインタビューのお時間をいただきました。

株式会社まちづくりプラットフォーム様のHPはこちら。

元々IT業界で法人営業の経験があり、現在経営されている会社では自治体だけでなく観光協会やDMOにも営業されているとのこと。

様々な視点で自治体営業を見られていると思うので、いろいろ伺えればと思います。

少しでも皆様の参考になれば幸いです!

インタビュー

会社設立の背景

木藤:小泉さん、本日はお時間をいただきありがとうございます。早速ですが、まずは会社設立の背景から教えていただけますでしょうか?

前職では、物流業界でトラックの配車ルートを最適化する技術開発に携わっていたんです。スマホのGPSでトラックの動きを見える化して、そのデータを使って最適なルートをシミュレーションするという、けっこう面白いことやってました。

ただ、大規模な導入が難しくて、ちょっと技術的な限界を感じたんです。それで、この技術を他の業界で活かせないかなと考えたときに、観光業界に目をつけました。実は、自分が旅行好きだったこともあって、観光プランの自動生成なんてどうだろうと思いました。

そのアイデアを前の会社で提案してみたんですが、当時は観光業界のIT投資がほとんど進んでいなくて、「観光分野では難しいだろう」と判断されてしまいました。でも、自分の中では観光業界での可能性を感じていて、「これはやるしかない!」と独立を決意したんです。こうして、今の株式会社まちづくりプラットフォームを立ち上げました。

最初は大手企業との提携話もあって、「これでいける」と思ってたんですけど、残念ながらそれがうまく進まず…。ホテル向けのサービスから開始したのですが、紆余曲折を経て、自治体や観光協会の公式観光サイト関連のサービスに焦点を当てて今までやってきました。観光地向けにAIを使ったサービスを提供する企業として、少しずつ成長してきたという感じですね。

木藤:なぜ観光なんだろうと思っていましたが、小泉さんが好きな分野だったんですね。自治体が市バスの運行とかに関わっているので、「物流の最適化」という言葉だけを聞くと公共交通の分野がパッと思いつきました。

私も仕事柄自治体ビジネスに参入している企業をチェックする機会が多くありますが、やはり元々toBやtoC向けにサービス提供していて、事業拡大を目的にtoG(官公庁)向けに知見を展開していることが多い印象です。日系大手とかも、私が思っていたよりも自治体ビジネスに関わっていることが多いので、企業様には積極的に自治体ビジネスの参入を検討していただきたいですね。

また、官公庁向けに実績ができると、分野をまたいで相談が来る事例も何度も耳にしています。弊社のお客様もある中央省庁での実績をきっかけに他の2つの省庁でも実績に繋がり、さらに、次年度の予算要求用の見積依頼を別の省庁からも依頼されています。

提供しているサービス

木藤:提供しているサービスについて、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか?

主に観光地向けにAIを活用した周遊コース生成とデジタルマップサービスを提供しています。最近ではCRMの提供も始め、旅行計画をサポートするツールを充実させています。公式観光サイトのリニューアルなんかも対応しています。

木藤:差し支えない範囲で導入実績も教えてください。

現在は80地域以上に弊社サービスが導入されています。人口という観点で幅広い地域に導入されていまして、人口が多いところだと広域DMOや三重県、政令指定都市も複数お客様になっています。

木藤:公式観光サイトのリニューアルもできるとのことですが、金額としてはいくらくらいになるのでしょうか?

公示の提案上限金額は公表されているのでお伝えできますが、大きな自治体だと3,000~4,000万円になります。提案上限金額に応じて弊社も柔軟に提案していまして、コース生成に特化したAIツールとかだと初期費用100万円+ランニング費用3万円ほどで提供しています。

木藤:自治体や観光協会、DMOなどの予算ややりたいことに応じて柔軟に対応できるんですね。

営業活動の工夫

木藤:次に本題として、営業活動についていろいろ伺えればと思います。まず、営業体制について教えていただけますでしょうか?

自治体などに向けた営業は7,8年ほどやっていますが、ほとんどの期間は私が1人でやっていました。今年度になって新たに数名入りました。

木藤:自治体に限って言うと営業先が最大で1,700ちょっとしかないので、営業人員はそんなに多くない企業様が多い印象です。自治体にテレアポで1回アプローチするだけなら、1日中ずっと架電する想定で2,3か月あれば済んでしまいます。なので、新規営業と案件回しの両方をやるメンバーがいることが多いですね。

営業担当が小泉さんお一人の時はどのように活動していましたか?

最初は実績もなかったので、うちの会社単独で営業をかけるのが難しかったです。特に自治体向けの営業って、実績がないと中々話を聞いてもらえないんですよね。なので、観光業に強い代理店を通じて営業を進めてました。彼らは自治体や観光協会と昔から繋がりがあるので、代理店経由で話を持っていってもらうとすんなり進むことが多かったんです。本当に助かりましたね。

あとは、インバウンド観光に特化したパートナーとも連携してましたし、Web制作会社とも組んでいました。例えば、そのWeb制作会社が全体のプロモーションとかWebサイトを作る中で、うちのサービスを一部入れてもらうみたいな感じで、自然な形で自治体や観光協会に提案できたんですよね。

特に初期の頃は、自分たちだけじゃ接点が持てないお客様も多かったので、代理店を通じてそういう部分を補ってたんです。おかげで新しい案件をいくつも取ることができましたし、実績も増えていきました。

木藤:代理店が提案する内容の一部に自社サービスを入れてもらうという形は良いですね。いろいろな会社のサービスをパッケージにして提案すれば、参入障壁ができて民間企業としては随意契約に繋げやすそうです。システムとマイナンバーの連携とかを最近はよく目にしますが、他にもいろいろありますね。

私も元公務員だったので原則は価格競争入札だと当然教わっていましたが、やはりピンポイントで特定の機能がほしい場合は随意契約も仕方ないかなと思います。

ちなみにテレアポ会社とかに発注したこともあります。行政向けに特化したサービスはあまり見当たりませんでした。

木藤:行政向けにテレマーケティングを実施している企業は実はいくつかあるのですが、サブ中のサブのようなオプションになっていますね。弊社は私が公務員と営業両方の経験があるので、リクルート出身メンバーを中心に自治体営業に特化して支援しています。自治体営業への熱量はどこにも負けません。PRで申し訳ないですが(笑)

代理店営業とテレアポ以外にはどのようなアプローチ手法を活用しましたか?

自治体に直接届けられる媒体があるので掲載したことがあります。配布数だけは把握できましたが、どこの部署に届いたのかも分からないので後追いのアプローチはできませんでした。

木藤:私も前職でネットだけでなく紙媒体の広告営業もやっていました。紙媒体も一定の効果があるとは思いますが、どうしても流通部数でしか実績を語りづらく、振り返りも困難でした。営業目線でも楽ではなかったですし、一定のお客様は紙媒体にかなりアレルギーがありましたね。

さて、営業先は自治体や観光協会、DMOになると思いますが、自治体はどの部署が営業先になるのでしょうか?一応システムではあるので、DX推進課やデジタル戦略課のような部署が営業先になることもあるのかなと思いまして。

基本的には観光課で、DX系の部署は経験ありません。ただし、補助金の関係でシティプロモーション担当課が最初の窓口になることもありました。

木藤:自治体とそれ以外(観光協会やDMO)だとどちらにアプローチすることが多いのでしょうか?割合が分かれば教えていただければと思います。

正直ケースバイケースですね。行ってみないとわからないというか、地域によって違うんですよね。

例えば、ある地域だと「観光協会が全部やってるから、そっちに話してください」って言われることもあるし、逆に観光協会に行ったら「予算を握ってるのは市だから、市役所で話してください」って言われることもあります。だから、どっちが主導してるのかっていうのは、その地域ごとに違うんですよね。

木藤:全国に自治体は1,700以上ありますが、ターゲットはどのくらいになるのでしょうか?観光とは全く無縁の自治体もありそうですが。

半分以下には絞られていると思います。過疎地だからこそ観光で盛り上げている地域はいくらでもあるので、人口規模では営業先は絞れないですね。また、観光地として有名だからといって予算が潤沢とは限らないので、お客様と話してみて実際に確かめるしかないです。

木藤:そんなに観光地として有名ではないけれども予算はあるという地域もありそうですね。

ありますね。

木藤:自治体と観光協会・DMOは営業していて何か違いは感じますでしょうか?

これもやっぱり地域ごとに結構バラバラなんですよ。自治体と観光協会がすごくうまく連携してるところもあれば、そうでもない地域もあったりします。だから、地域によって温度感が全然違うんです。

あと、自治体と観光協会でどちらか一方がすごく熱心で、他方は後から遅れてついてくるというパターンも多いですね。「やりたいんだけど、どうしたらいいかわからない」という感じでも熱心に聞いていただける方がいると、こちらも何とかしようと思います。逆に、デジタル化に対してリテラシーが高い方もおり、そういう場合はすごくスムーズに話が進むこともあります。

木藤:両者を立てつつも、適切にアプローチする必要がありそうですね。

ちなみに、小泉さんは元々営業経験はあったのでしょうか?

前のIT業界の会社に15年ほどいましたが、半分ほどは法人営業をやっていましたね。

木藤:バッチリ経験されていたのですね。IT業界と行政だとどうしても「最先端」と(デジ田のように)「誰一人取り残さない」みたいな形で真逆なイメージがありますがギャップはありますでしょうか?

ギャップはやはりあります。例えば、IT業界ではCRM(顧客管理システム)は何十年も前から使われてますけど、今の仕事だとまだ「CRMって何ですか?」と聞かれることがあるんです。CRMという言葉自体が浸透していないこともあって、20~30年くらい遅れている感覚があるんですよね。

木藤:20~30年遅れというのは私の肌感覚とも一致しています。私は文化課にいて公共施設予約システムというものを使っていたのですが、たぶん導入してから20年ほど経っていますね。50歳くらいの課長が「自分が担当時代に説明会に参加した」と言っていたので驚いた覚えがあります。

ほかにはコンペは民間と行政で違うなと感じますね。特に自治体相手だと最終的にほとんどがコンペになってしまいますので、いくら事前に担当者と話を詰めて「この会社と一緒にやりたい!」って言ってもらえても、やっぱりコンペは避けられないことが多いですね。

民間なら事前にしっかり話をしておけばそのまま随意契約のような形で決まることもあるんですけど、自治体だとルールが厳しいので最終的に他社との競争になります。

だから、コンペで勝つためには、しっかり準備をしておく必要があります。提案資料なんかは、締め切りギリギリまで何度も見直して、「これで本当に大丈夫か?」って考えながら作り上げていきます。デザインとか見栄えも大事なんですけど、やっぱり中身がしっかりしていないと勝てないですからね。

木藤:おっしゃるとおりですね。行政は情報が詰め込まれた資料をある意味ネタにされがちですが、誰が読んでも誤解のないように全て詰め込むんですよね。企画提案書を作る際は「資料に記載されていないことは一切評価されない」くらいで考えて、「大事な内容は口頭で補足しよう」という考えは避けた方がいいと個人的には思います。

自分も審査委員会に何度か業務で関わりましたが、評価委員には事前に企画提案書を配布していたので、しっかり読み込んでくる方もいたと思います。

ちなみに、サイトのリニューアルなど金額が大きくなった場合はコンペになることがほとんどです。弊社のAIコンシェルジュなど単体のサービスであれば随意契約になることもありますね。

木藤:数千万円のリニューアルが随意契約になっていた事例とか見たことはありますか?

ないと思います。

木藤:さすがにないですよね、元公務員としては安心しました(笑)

自治体営業の良いところとしては横展開しやすいところですね。同じ県内の市町村で実績があれば話を聞いてくれることが多いです。

木藤:一般的には県内の実績が県内他自治体の実績を生みやすいですが、まちづくりプラットフォーム様のサービスだといかがでしょうか?

県ではなく同じ地方というだけでも横展開しやすいですね。観光に限っては市町村よりも広域で観光協会やDMOが組まれていることも多いので。あとは、県や政令市の実績が他の県や政令市の実績に繋がることも多いです。

木藤:以前の記事にも記載したとおり、地域と人口規模は横展開する際のチェックポイントですね。また、あまり良くないサービスが導入実績だけでどんどん広がってしまうことについては個人的に課題意識を持っています。ただし、県では導入後の成果(数字)が求められることが多い印象です。

弊社も、活動していて数字を求められることは増えている印象です。

自治体ビジネスに参入したい企業へのアドバイス

木藤:新たに自治体ビジネスに参入したい企業様へのアドバイスがあれば伺いたいのですが、いかがでしょうか。

弊社と同じようにシステムの受託開発をやるとしたら、まずはやっぱりパートナーを見つけるのが大事だと思います。自治体向けの実績がない場合、最初は自社だけで行くのは結構厳しいんですよ。なので、自治体に強いパートナー企業と組んでそこから案件をもらうとか、一緒に仕事をするところから始めるのがいいですね。

あと、いきなり自治体を相手にしようとすると、どうしても「実績がない」とか「他でどう使われているか」を聞かれることが多いので、最初は小さなところから実績を積み上げていくのが重要です。実績をもとに次の自治体にアプローチしていく感じですね。

それと、自治体は予算や導入のスピードが企業と比べると遅いので、長期的な視点で見ないと辛くなることもあります。だから、最初は焦らず、少しずつ実績を積んでいくのが大事だと思います。

木藤:長期的な視点は本当に大事ですね。いろいろなサービスの導入実績の推移を意識してチェックしていますが、初年度の実績が一桁であることはよくあります。

弊社も右肩上がりに実績が伸びてきたものの、コロナ禍で代理店等のパートナーの動きが止まってしまって。自社で営業やらないといけないと思って今年から採用した経緯となっています。

木藤:そういった背景があったのですね。

今でも年間の開拓地域数という意味では10程度ですが、パートナーからの二次請けではなく自社で一次請けできることが増えてきたので、1地域あたりの売上額は上がっていますね。

木藤:他にもアドバイスとかありますでしょうか?

まずは営業活動して実際に提案することですね。自社でやりたいことがあって観光庁に提案してみたところ「それなら復興支援の文脈の中で東北で使えるかもしれない」と言ってもらえまして。そこから具体的に話を聞いてサービス内容をチューニングした感じです。

木藤:自分もこれまで営業やってきましたが、実際に提案をあててみることは本当に大事ですよね。当たり前ですけどサービスの良し悪しを決めるのは自分ではなくお客様なので、自治体ビジネスに参入したい企業様はどんどん自治体と接点を持ってほしいと思います。

営業している印象としては、どうしても担当者のやる気に左右される部分はあります。やる気のある担当者がいなくなった瞬間に進めてきた話が止まることは全然ありますね。

木藤:やる気のない担当者が楽するために導入したサービスは業務負荷軽減に繋がるので続いて、やる気のある担当者が取り組むものは後任にとって面倒なこともあるんだろうなと、聞いていて新しい発見がありました。そういう意味では業務負荷軽減のサービスとかは自治体営業しやすいんだろうなと思いました。

後任がどう感じるかはコントロールできない部分もあるので、「鉄は熱いうちに打て」といった形で、実績がフレッシュなうちに他の地域に拡大していくのが大切だなと。

最後に

木藤:今日はたくさんお話を伺えて、私もすごく勉強になりました。ふと思ったのですが、今はZoomで営業されていますけど、昔はどうしていましたか?

以前は現地に行っていましたよ。そういった意味でもパートナーと組んで多くの地域にアプローチできるのが大事でした。

木藤:やはりそうなんですね…。今はほとんどの自治体がZoom対応可能で営業活動のハードルが下がったので、改めて自治体ビジネスに参入する企業様が増えたらいいなと思いました。本日はありがとうございました。

ありがとうございました。

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