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【公務員インタビューvol.3】自治体への新規営業とプロポーザルについて語る!企業から見えないポイントに注目すると…?


はじめに

こんにちは!リクロスの木藤です。

今回は公務員インタビューvol.3としてTさんにお時間をいただきました。

Tさんはスポーツと子ども子育てを中心に多くの部署を経験し、現在も自治体で勤務されています。

自治体への新規営業やプロポーザルについて話していただけたので、早速見ていきましょう!

インタビュー

これまでの経歴と業務内容

木藤:Tさん、本日はお時間をいただきありがとうございます!早速ですが、これまでの経歴を教えてください。

市役所に入庁して約10年になります。これまでにスポーツや子ども子育てを中心に複数の部署を経験し、どこの部署でも自治体営業を受けていましたね。

木藤:私も文化課に在籍していたのでなんとなくイメージは湧きますが、スポーツ部署では具体的にどんな業務をされていましたか?

大きく二つの業務がありました。一つはスポーツイベントの企画・運営(ソフト事業)。もう一つは体育施設の維持管理(ハード事業)です。

体育施設の維持管理(ハード事業)については直営だったので、事業者に任せる部分も当然ありますが、保守点検業務として私たち職員が実際に現場で対応することも多かったです。自分がトイレに手を突っ込むこともありましたね(笑)

木藤:私がいた市役所の文化施設は直営ではなく指定管理だったので民間企業に管理運営を委託していましたが、Tさんのように直営だとかなり現場感がありそうですね。

直営なので土日や夜もシフト制で対応していましたよ。「土日休み・17時上がり」の公務員像とは真逆でした。

木藤:どういったサービスの営業を受けていましたか?

競技用具(卓球台やゴール)や空調設備、備品、修繕に関するものなどです。その他、屋外施設のメンテナンスや芝生の管理など、施設の維持に関わるものがありましたね。

自治体への新規営業について

木藤:維持管理はおなじみの事業者とのやり取りが多いと思いますので、新規営業という観点で自治体営業について教えていただけますでしょうか?

新規営業について項目と割合からお伝えすると、だいたい飛び込み40%・テレアポ20%・メール20%・FAX20%でした。

木藤:各部署のメールアドレスをHPに載せている自治体はメール営業も来るんですね。それぞれについて詳しく伺えればと思いますが、まず飛び込み営業についていかがでしょうか?

飛び込み営業については、他の業務や市民対応を優先しなければならない状況で、突然営業を受けるのは正直言って負担が大きいですね。良い印象はないです。

木藤:まあそうですよね、同じ印象です(笑)飛び込み営業は基本的に反対だと以前の記事にも書いたところです。

テレアポについては、回答の保留や折り返しがしやすいので飛び込み営業よりは良いと思います。ただ、話が長いと困りますね。長いと思っても、市役所の立場だと話を切ったりできないので…。

木藤:すごく分かります。民間とか個人の立場なら相手の話に被せて「結構です!」と言えますが、公務員の立場だとそれすらできないですよね。自治体へのテレアポは良くも悪くもネガティブなフィードバックが返ってきづらいので、自身や自社で振り返る必要があります。

メールやFAX営業については、問合せであれば返信しますが、営業であれば興味がなければ返事しないですね。ちなみにヒアリングしたいのであれば、文書をもらう前に電話をもらえると助かります。

文書でもらってしまうと内部での決裁手続きが面倒なんですよね。電話であればその場でパッと答えられるので、業務負担が減ります。

木藤:それもすごく分かります。電話の際に分からない場合は「確認して折り返し電話」や「文面でもらって市としてキッチリとした回答をする」など、対応を職員側が選べて助かります。自治体営業する側ではよっぽど気付けないポイントですね。

また、文書で回答する際は「このように回答してよいですか」と内部決裁が必要ですが、電話で回答する際に「このように電話で回答してよいですか」はないんですよね。「役所は文書主義だけど電話は文書ではない」みたいな(笑)

ちなみに、メールやFAX営業となると「誰が見るのか」が大事だと思いますがどうでしたか?

完全に部署によりますね。共有メールやコピー機は誰でもアクセスできるので、担当だけでなく課長や課長補佐、係長の目に入る可能性もあります。ただし、見た人がそのまま廃棄することもありますね。

木藤:まさにそうですね。自治体営業に関連して「役所は回覧文化!資料を送れば皆が見てくれる!」みたいな誤解があるかもしれませんが、営業資料であれば全部が全部は回覧されません。

回覧文化自体は2024年9月の時点ではうちの市でも残っていますが、回覧されたとしても、見るの面倒だから印鑑だけ適当に押す(チェックしたことにする)のは公務員あるあるだと思います。

木藤:「回覧文化だから紙媒体を送ろう」というのは間違ってはいませんが、世間に出ている情報よりかは差っ引いて効果を見積もった方がよさそうですね。過信してはいけないこと3選の記事に追加しようかな(笑)

プロポーザルに関するアドバイス

木藤:子ども子育て部署については以前もインタビュー記事をアップしましたので、具体的な業務内容ではなく、自治体営業に取り組む企業様へのアドバイスをいただければと思います。

プロポーザルはバッチリ経験あります。アドバイスするとしたら、まずは提案内容と実稼働にギャップがないようにしていただきたいですね。

プロポーザル当日に本社から知らない人が来て提案することがあると思いますが、話している内容にギャップがあると担当としては不安になります。複数年契約だとなおさらですね。

木藤:信頼とか安心は行政だと特に重要ですよね。

あとは、公示の際に質疑応答の機会があるじゃないですか。先ほどの話にも繋がっているのですが、むやみやたらに正式な質問文書をもらうと事務手続きが増えるので、できれば電話で一度担当に聞いてほしいです。

仕様書に書いてある内容であれば電話でパッと回答できますし、参加を検討する事業者全てに知ってほしい内容であれば「質問文書をいただいて、正式に回答させていただきます。」としたいですね。

木藤:担当者目線ならではのアドバイスですね。こちらも企業側だと気付きづらいポイントかと思います。

そのほかには、担当者への営業とプロポーザルでの提案は区別してほしいですね。

担当者に対しては、実稼働もあるので細かい内容も含めしっかり教えていただきたいです。

一方で、選定委員と言っても必ずしもその業務のプロではないので、分かりやすさとか信頼性が大事です。細かい点を伝えても「よく分からない提案だったな」と思われ、担当者にとってはお願いしたい企業であっても決定しない恐れがあります。

木藤:たしかに。「相手が求めているものを提示する」という営業の基本ですね。プロポーザルは知識のひけらかしではなく、信頼と安心を届ける「theプレゼンテーションの場」という認識でいくとよさそうです。

ちなみに、選定委員から担当の私に「事業者に何て質問してほしい?」と聞いてくださることが多いですね。選定委員の皆様も「結局は選ぶだけであって、適当に選ぶと困るのは担当者」と配慮してくださるので。

木藤:担当者はプロポーザルにおいて採点者ではないけれども、担当者への配慮とか関係構築は本当に重要です。まさに「強調してもしすぎることはない」ですね。

さらに付け加えると、受注に向けて有利なのは「前年度に仕様書を一緒に作った企業」ではなく、より正確には「担当者の信頼を獲得した企業」と言えるのではないでしょうか。

最初の仕様書作成から公示まで半年以上空くことは全然ありますし、半年もあれば信頼度で他社を上回ることは全然あるでしょう。

また別の角度からアドバイスするとしたら、ある事業者の噂は役所内部だけでなく役所間で共有されることもありますね。

公示がHPに掲載されるということは、企業だけでなく他自治体も確認できるということです。公示を見た自治体から「決定したあの事業者ぶっちゃけどう?」「仕様書どうすればいい?」とかけっこう聞かれるんですよね。

木藤:あるあるですね。「縦割り行政」はある側面では当然正しいですが、前例を知るために全国のネットワーク(横)を活用することもあるんですよね。役所内部も同様で、庁内他部署から仕様書や事業者情報を仕入れているのではないでしょうか。

当たり前のように仕入れますね。良い噂も悪い噂も思ったより広まります。

ただし、弱みは正直に伝えてくれると安心というか、信頼できますよね。

木藤:「弱みの提示」も営業の基本ですね。ただし馬鹿正直は避けましょう。採点表においてデザインの配点が30%あるのに「デザインは他社に劣りますが…」とか(笑)

実績の配点が5~10%とかであれば「導入数という意味では実績はまだまだですが、○○という点はどこにも負けません」みたいな形で伝えたいですね。

私もTさんと同じような経験をしたものの、新たな気付きがあってすごく良い時間でした。本日はありがとうございました!

ありがとうございました。

最後に

今回のインタビューを通じて、改めて「担当者との信頼関係構築」が非常に重要だと感じました。

注力したい自治体だけでも、年に複数回接点を持ってアプローチしていただければと思います。

特に年度の下半期とかはかなり穴場なので、地道な情報提供などで差別化を図れます。

それでは、今日も自治体営業を頑張っていきましょう!

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