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Musicalライターのコラボレーションの話
私は、ニューヨークをベースに英語でミュージカルの脚本、作詞を行っているライターです。
2年間Musical Writing 専攻の大学院に通い、Little WomenのMindi DicksteinやTony賞を受賞したRachel Sheinkinからミュージカルの書き方を教わって来ました。今年から来年にかけて自分とコラボレーターで書いた長編ミュージカルのリーディング(台詞と歌を役者が台本を見ながら読み合わせをするもの)をアメリカで公演予定、最終的にはニューヨークでのフルプロダクションを目指して準備を進めています。
私はBroadwayのMusical Writingのメソッドを基盤にMusicalを書いているのですが、メソッドは一旦置いて、ここではMusical Writingで一番大切なコラボレーションについて書こうと思います。
ミュージカルには、ハミルトンを書いたリン マニュエル ミランダのように作詞作曲脚本全部やってしまう人もいれば、ウィキッドやウエストサイドストーリーのように作曲家と作詞家または脚本家が1つの作品を一緒に作ることも多くあります。
私がミュージカルを書いていて、一番楽しくて一番苦労することがコラボーレーションです。私はここ1年間で作曲家のBenとコラボレーションし、長編ミュージカルの第一稿を書き終えました。ミュージカルライターの世界では、一緒にミュージカル書くことを、恋愛感情のない夫婦になる、と言います。
事実、私とBenは毎日連絡を取り、お互いのスケジュールはほぼ把握。数えきれないケンカと、それでも一緒に書き続ける信頼関係で結ばれています。(たぶん)
そんな私たちの間にあった事件をいくつか紹介します。
1. 学校の練習室を追い出され、公園で作曲
まず、Benはカリフォルニアボーイのため、私からすると時間に非常にルーズです。その日は夜8時で学校のピアノ室が閉まるのに、待ち合わせの5時には現れず、待つこと7時に学校到着。もちろん1時間で作曲は終わらず、学校を追い出されることに。でも、明日までに曲を完成させなければいけない私たちは、学校の隣の公園でBenの絶対音感を頼りに歌いながら作曲。ちなみに、ニューヨークの薄暗い公園なので、私の隣でホームレスが寝ている。そして、2時間も待ち合わせに遅れてきたくせに、今になってBenが歌詞が音に合わないから歌詞を書き直せと言い始め、私の徹夜が決定。その後、Benが歌うボイスメモの音を頼りに私は自分のアパートで朝5時まで詩を書き直したのでした。
2. 8時間後に曲を発表しなきゃいけないのに、音楽ができない(午前2時)
私たちは、狭いアパートの1室でキーボードを前にお互いにイライラしていました。私が作詞を書き終えたのは3日前なのにようやく今日Benが作曲を始め、かつ全く進まずにB深夜2時を回ったのです。眠いし締め切りは迫る、でもBenは気にせず友達とメッセージ交換をしていたりする。私が睨むと、さっきから弾いている同じパートだけ演奏し始め、また友人からのメッセージが来て作曲が止まる。ついに私が剛を煮やし、「もう3時間以上進んでいないんだけど?」と嫌味をいう。するとBenもイライラして「もっといい詩があれば早く書けるよ」と言い返してくる。Benは正しいのだ。さっきからBenが書き進められていないパートは、私も納得した詩を書けていないパートだった。でもそんなこと言われたら怒りが増すだけで、「違う詩が欲しいなら3日前に言ってよ」と言い返す。結局その日の作業は諦め、その後の授業では曲の途中までを発表した。授業後、Benとはもう一度歌詞の構成を見直し、改めて書き直した。今ではその曲は一緒に書いた中でお気に入りの曲の一つになっています。
3. 二日酔いで作曲が進まない
私の偏見かもしれないけれど、アメリカ人はパーティーが好き多い。ある日、共通の友人の誕生日パーティーに私とBenが招待され一緒に参加。2次会にも誘われたけれど、私は次の日朝から曲を書かないと間に合わないからと1次会で退散。2次会へ向かうBenに、明日昼12時に学校に来て一緒に曲を書くよう念押しする。
翌日、もちろんBenは12時には現れません。そして2時に現れた彼は、ひどい二日酔い状態。もちろん曲なんて書けたものではない。私から、今日はもう終わりにしようと告げました。
帰り道、思わず私はBenに尋ねる。
「あなたは何を目指しているの?」
すると、Benは言う。
「BroadwayのMusicalを書きたい。」
私は、その時宮崎駿と息子のドキュメンタリーに影響を受けまくっていて、宮崎監督の発言をまるで自分の言葉のように伝えました。
「それなら、世界を変えるつもりでMusicalを書かなきゃいけない。二日酔いで1日を無駄にしているようじゃ、私たちは世界を変えられない。」
Benは、私が英語力が足りないせいで、無意識によくわからないことを口走っているのか、本当に変なことを言っているのか考えている。
私は続けて、
「あなたは、誰よりも才能がある作曲家だと思う。だから、音楽が浮かばない時はいつまでも待つし、何回だって詩を書き直す。でも、全くミュージカルと関係のない事のせいで、時間を無駄にするのはやめようよ。」
この日、私たちはサブウェイの中で誓いました。
ミュージカルを書いている期間は、2杯以上お酒は飲まない、パーティーには行かない。
でも、この約束より大切だったのは、この日から、「一緒にブロードウェイを目指す」という夢を持てたのです。