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ごはんの本② 旅行者の朝食

どれだけ固く決意をしても、いとも簡単にその決意をほどき、ゆるゆるほわほわの伸びたうどんみたいにしてしまう私。

でも自分との約束を破ったからといって、いちいち落ち込んではいられない。
少し落ち込んだとしても、どうにか気を取り直して伸びたうどんを食べなくてはならない。


うどんの話ではない。

前回のnoteで、意気揚々とこの秋に読んだ本について書く!と宣言しておきながら、3日坊主はおろか、たった1度書いたきりで、既に冬になってしまった。
そして今は年も変わって2022年。
明けまして、おめでとうございます。


記憶が薄れつつあるけれど、今回は、ロシア語通訳者の「旅行者の朝食」という本について。
この本は、爽快だった。


著者の米原万里さんは、ロシア語通訳者。
短編エッセイが連なる構成で、本の冒頭から、通訳者としてのハラハラエピソードと、幼い著者の切なくて人間っぽい思い出が、あれよあれよと展開される。しかもその2つのエピソードが「卵」というキーワードでつながるという!伏線好きにはたまらない感じの組み立て(ふがふが)

この本自体は、昔から気になってはいたものの「旅行者の朝食」というタイトルからして仕事上、旅の多い通訳者の優雅なホテル滞在記でしょうな、とやや敬遠していた。

それがとんだ大間違い。タイトルにもなっている「旅行者の朝食」は、この本に短編として収録されているもののひとつで、ロシアのブラックユーモアな小噺でもあり、ソビエト連邦時代に作られていた缶詰の名称でもあり、ロシア人のみが爆笑してしまう言葉らしい。

他にも、収録されていたエピソードの中には、ロシア(あるいは、もしかすると著者が一時滞在していた別の国だったかもしれない)では、白米がとても貴重で、たまに手に入ったら、まずはテーブルに広げ、虫を丁寧に取り除いて大事に大事に食べた、ということも書かれていた。
前回書いた西加奈子さんの「ごはんぐるり」でも、エジプトの生活での同じようなエピソードが描写されていて、一部の国では米を食べるのが悲願になるほどハードルが高いんだな、と思った。
そのハードルの高さ故に食べ物への関心がむしろ強くなって、2人とも食べ物をテーマにしてあんなに面白い本が書けるのかもしれない。
私自身が留学していたのは、ベルギーで、バゲットとクロワッサンに目が眩んで、残念ながら日本米を恋しく思うことはあまりなかった。

そうそう留学といえば、留学中の寮のルームメイト、ジュリアちゃんもロシア人だった。
ある日、なんか部屋が匂うゾと思ったら、彼女のベッドの下から、数日間放置されたであろう、絵具を全色混ぜたような色のスープが発掘された。

それに比べれば、私の決意がのびたうどんはまだ食べられるだけマシな方だ。
(こうやって無理やり伏線回収に向かうのが良くないとは思いつつ、結び方が分からないので、おしまい)✌


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