【月報2023年12月】元公僕が地域おこし始めてみた件
トップ写真は、大晦日に食べたうまく打てなかった蕎麦の写真です。
12月は、
【広域での震災伝承から学ぶこと】
【防災教育の振り返り】
【吉里吉里公民館の冬休み】
の内容でお送りします。
1.広域での震災伝承について学ぶ
12月4日 公益社団法人3.11メモリアルネットワークの2023年基金助成報告会 @オンライン
公益社団法人3.11メモリアルネットワークの2023年基金助成報告会、2024年公募説明会をオンラインで聴講しました。
最初の東日本大震災被災三県の震災伝承の現状についての話がありました。
①震災伝承の現状から
特に印象に残った点は、県営の3つの震災伝承施設の入館者が伸び悩んでいるということです。
広島の原爆といった他に例のない事象か、より我がこと感を持ちやすい都市型災害である阪神淡路大震災の伝承施設の方が、遠く離れた一地方の災害と見られてしまう可能性もある(自分はそうではないと思うが)東日本大震災に比べて行く動機が強いのではないかと個人的に感じる部分もありました。
それには震災伝承以外の観光など他の訪れる動機も必要だとは思います。
また、震災学習プログラム実施団体の96%が伝承への継続性に不安を抱えているということでした。
民間の伝承団体は、県営の伝承施設が出来たことにより、そちらに人が吸い寄せられていく懸念も以前からあったものの、岩手宮城は無料ですが、そこですら伸び悩んでいるということは、各団体の活動だけではなく、東日本大震災の被災地の震災伝承という広い面で見ても不安を感じるのではないかと思いました。
そして、ここでふと思ったのですが、広島なら広島平和記念資料館、神戸なら人と防災未来センターといった有名な場所を勝手に連想してしまいましたが、かつてはそれら以外にも経験した人の思いを伝える場所や人はたくさんいたのではないかと思いました。
それらの中でもまだ残っているものはたくさんあると思っていますが、遠く離れた場所からは簡単に知ることが出来ず、結局分かりやすい1点に集約されて行ってしまう、それと同様の現象も東日本大震災の被災地でも今後起こっていくのではないかと思いました。
②命を守る行動に繋がる伝承
その後東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔准教授から「市民がおこなう災害伝承」という基調講演がありました。
まず最初に、東日本大震災で津波の高さと亡くなった人の割合は比例するわけではないということでした。
そして、岩手県だけが福島県、宮城県とは異なり、地震発生時に過去にこの場所まで津波が来たことが「ない」という話を思い浮かんだ人より「ある」とという話を思い浮かんだ人の割合が多いということでした。
また、陸前高田市においての調査では、「家族で話し合っていたこと」と「過去の津波(昭和三陸地震津波)を知っていること」という事前行動が、実際の津波避難に繋がったということでした。
個人的に思ったことですが、その2つをやることは、避難できる確率を上げる事にはつながると思いますが、それさえやれば十分という趣旨ではないと思うので誤解がなければと思います。
③もっともっと活かせる逃げるにとどまらない震災学習
震災伝承のマニアックな話は他にもありましたが、その辺にして他の分野でも共通すると思ったことがあります。
そして基調講演で一番印象に残った点ですが、「被災・復興を語り、語られる中で身につくもの」という話についてです。
それは3つあり、1つ目は表層的な部分である「基本的知識」でした。
それは、多くの人が犠牲になったことやその原因、復興の課程などです。
個人的には、防災、震災、復興の学習という言葉からとてもイメージされやすい部分であり、またそういった学習の終着点をここにしている物も多いのでないかと思いました。
2つ目は、「生きる力」であり、災対の他、機器・困難を乗り越えるために必要な個人の能力でした。
例えば、前に立って話し合いを進めたり、スピーチが出来るようになったり、社会の中での役割を認識するようになったりなどでした。
私自身も過去に防災教育に関する仕事をしていた際に、学校で取り組む必要性として推していたポイントでもありました。
その一方で「生きる力」と聞いた際に、災害のイメージが強すぎて、キャンプなどサバイバルのイメージを持つ方が多いと感じていました。
ただ、今回の「生きる力」は災害に関係なく聞き・困難を乗り越える力なので、日常生活でより良く生きるために必要なコミュニケーション力や思考力にと言った部分ではないかと思いました。
3つ目は、「直接的知識をくみあわせて、”自ら考えた”応用できる知識」ということでした。
例えば、震災災害という非日常を日常に置き換えて考えたり、災害は知識で対応するものだと思っていたが、知識は自分の判断を補助するものであり、最終的には自分の判断が重要であるという考えに変化した、あらゆる分野の緊急時のために判断を下せる大人になる必要があるという考えになった等でした。
人の考え方によっては、飛躍しすぎだと思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし自分は震災という出来事を通じて「津波⇒逃げろ」という直接的なことを学ぶだけではなく、経験した本人すらも気づいていない大切なことを学ぶ機会になるのではないかと思いました。
個人的なイメージとしては、AやBについての話から、A'やB’だけではなく、CやDやZまでのことを得ることが出来るといった感じです。
先ほど挙がった例を見ると、完全に伝える側に意図とは別の視点を開花させていると感じました。
そして、そういうものを、震災伝承に関わった人の身につけるには教育の力が必要だと感じました。
以前、防災教育のカリキュラム作りをしていた時に、児童生徒に伝えたい内容がある際に、直接その言葉を用いずに、児童生徒が考えて自身でその言葉にたどり着くことが大切と教わりました。
そういった意味では、震災の内容以外にもそれを相手に考えてもらう力や人が伝える側に、またストレートな言葉以外の内容を学べる聴き手の力が必要とも感じました。
④震災伝承をサポートする3.11メモリアルネットワーク基金助成
その後の2023年の基金助成団体の報告や基金の説明については省きますが、沿岸被災地で様々な民間団体が様々な方法で震災伝承の活動を続けていることが分かりました。
その一方で、民間の助成金や行政の補助金頼りの団体が多い現状で、今後それらが減ることが見込まれる中、命が守れる社会に向けた震災伝承活動を継続し、自走させていくために、この基金の助成も活用できるのではないでしょうか?
個人的には、伝える行為そのものだけではなく、行政の支援が無くても活動を続けて行けるための資源を確保する行動も震災伝承活動だと思っています。
なので、今後の継続に不安があり、助成の要項のような取組が出来るような団体は、検討してみてもいいのではないかと思います
2.いわての復興について学ぶ
12月17日 令和5年度第2回いわて復興未来塾 @オンライン
いわて復興未来塾をオンラインで聴講しました。
その中の、岩手県立図書館長の森本晋也氏の震災津波の教訓を未来に生かすために~故郷の復興・発展を支える人づくりを目指して~という講演で特に印象に残った点についてお伝えします。
①結果としての様々な視点でのアプローチの重要性
東日本大震災前から学校で防災学習に取り組み、その場にいた生徒が避難した釜石東中学校の生徒に対する質問の回答にいての話がありました。
震災前の防災学習がなぜ印象に残ったのかという生徒への質問の回答をKJ法で整理したところ以下のようになったとのことでした。
課題意識の向上(自己関与、興味関心)
学外・社会への展開(家族と話し合う、地域とのつながり、学外への発信)
学習の主体性(価値・目標の共有化、自分で考える、自発性、学習経験のつながり、体験・表現・想像)
学習経験の反復
自己肯定感(学外からの評価、達成感)
学校・教員側の課題意識(教員の熱意)
13年以上も昔の教育とはいえ、今でも十分必要な事ばかりで、なおかつ様々な相手に対して伝える要素が含まれていると感じました。
今思えば、相手に自発的になってもらうための教育と、相手にそうさせるための従来の防災との差を埋めているように個人的には感じました。
それが結果として、逃げるという防災行動だけではなく、住む地域との関わり、生き方、考え方等の変化にも結び付いたのでないかと感じました。
②フェーズフリーという考え方
また、話の中でフェーズフリーという考え方の話がありました。
日常の暮らしを豊かにしているものが、非常時の生活や命を支えるという考え方で町づくり、商品開発、気候変動、教育分野などで活用されているとのことでした。
また災害の日常時と非常時の壁が大きく、非常時がイメージできないので壁を取り除く必要があるとのことでした。
そして防災教育は高尚なものではなく、普段の生活の中にあるとのことでした。
ここまで話を聞いて、最初の方で話にあった釜石東中学校の防災学習の印象に残った要素と一致すると感じました。
この釜石の防災教育は特別な事例として今まで至る所で取り上げられてきましたが、今思えば、その町、人で出来る普通のことをやったのでは?と思うようになりました。
地域おこしの文脈でも特別なことが取り上げられがちな傾向があるかもしれませんが、普通のことを普通に続けて行くことが実は大事なのかもしれません。
3.吉里吉里公民館の冬休み 前半
12月27日 @吉里吉里公民館
吉里吉里小学校も冬休みに入り、例年吉里吉里公民館で行われている『地域で育てる冬休み』事業の手伝いと写真撮影の時期になりました。
子どもたちと顔を合わす機会も増えて、顔と名前も一致するようになり、子どもたちの成長をい守る機会だけではなく、子どもたちを通して大槌の町を人を学ぶ大変貴重な機会となっています。
12月はそのうちの1回が開催されたので、ご報告します。
12月27日は、爆笑落語会ということで落語家の三遊亭楽大さんにお越しいただき、落語を聞く会とe-sports交流会が開催されました。
三遊亭楽大さんは沿岸被災地にも沿岸被災地にも良く訪れておられ、このにも大槌町内で落語を披露されていらっしゃいました。
当日の内容は、ネタバレになるので伏せておきますが、子ども達以外にも近所の方々も参加しておられました。
最初は子ども達がどこまで笑うのかは分かりませんでしたが、想像以上に爆笑で、子ども達は落語のそばを食べる動きの体験などもしました。
落語が始まる前に「言葉からイメージできる」ということと「言葉にない部分のイメージは人によって異なる」という話がありました。
何でもかんでも震災伝承に繋げるわけではありませんが、震災伝承に限らず人が人に伝えるといった部分では共通する点があると感じました。
話し手が記憶していたり、頭の中でイメージしていることだとしても、言葉にない部分は、聞き手の想像で埋めるしかないということです。
とはいえ、聞き手の想像の余地が無いように全てを話すことは難しいですし、そうしなくとも落語の目的は達成されているので、震災伝承の語り部でも、目的に応じた伝え方があるのではないかと思いました。
とはいえ、話のプロである落語家と同じような話し方をするのは簡単ではないので、少しでもその表現方法を参考にすることも、選択肢としてはありなのではないかと思いました。
4.クリスマス前は美魔女とダンスの巻
先日おしゃっちで開催された2周年を迎える美魔女会にて、フラダンスを踊りました。
町民文化祭で踊った踊りでしたが、また違う雰囲気の中、その直前にサンタの服を着たりしたので、めちゃくちゃ緊張して、お酒を飲んでいないにも関わらず、正直記憶があやふやなところがあります(笑)
そしてフラダンス中は、笑顔にしたつもりなのに、全然笑えていませんでした(๑>◡<๑)
今まで定期的に美魔女会には参加して来ましたが、初めて参加した頃は知らない人ばかりで人見知り大爆発していました。
人見知りするのは今も変わらないのですが、ステージでフラダンスを踊る機会までも頂き、自分にとって大切な場になりました。
最初はそんなことやることになるなんて想像もしていませんでした。
他所から来た身でも大槌にこういった楽しめる場があることはとても嬉しいことですし、これからも続いて行けばいいと思いました。
そして自分自身ももっと芸を磨かなければと思いました(笑)
そして、僕の中の『好きな人たちの好きなものを好きになる』をこれからも続けて行けたらと思います。
5.おわりに
正直、西日本の人間からすると、冬は暗くなる時間が異常に速いのが辛いです。
そういう意味では、夜に楽しむ機会があるのは有難いことだと思いました
。
大槌町地域おこし協力隊
北浦 知幸(きたうら ともゆき)