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バズった

 僕はプロテスタントのクリスチャンだが、生まれながらの西宮人なので、よほどのことがない限り、ほぼ毎年西宮神社の十日戎(とおかゑびす)には行っている。拝みはしないが、地元最大のお祭(毎年一月九~十一日の三日間で百万人以上が来る)だし、子供の頃から半世紀以上、ずっと正月最後の楽しみなのだ(地方のことは知らないが、畿内の松の内は十五日まで)。
 阪神間を離れ奈良市民になった今、いくら週に1~2回は帰っているとはいえ、それでも阪神間在住だった頃よりますます「十日戎は外せない」という思いは強くなった。

 今年は十二月十六日にA型インフルエンザに罹患して以来喉風邪が長引いていて万全の体調ではないのだが、それでも「本戎」の十日に行ってきた(九日が「宵戎」、十一日は「残り福」)。

 祭自体は楽しかったし、ほぼ毎年買っている飯蛸が一匹丸々入っているたこ焼きも買えた。そのまま阪神電車西宮駅前の老舗洋食店「ロンドン」で有頭エビフライとカキフライのセットも食べられたし、満足しての帰路で、モヤモヤする出来事に遭遇したのだ。

 そのことをスレッズ、Facebookなどに書いたら、スレッズでバズってしまった。現時点(1月14日朝4時50分)71.9万回表示、と出ている。

 以下に転載する。
↓ ↓ ↓
十日戎からの帰路、阪神西宮駅から乗った近鉄奈良駅行き快速急行での話。

難波に着く前、九条ぐらいで乗ってきた、中学生ぐらいの男。いきなり窓を開けたのだ。この厳冬期に、である。

まぁ地下区間は我慢したけど、鶴橋出たところでたまらず窓を閉めた。

そしたら、何やら病名を書いた紙を示して、実は医者からも常時換気しろと言われてまして、と言ってくるのだ。

それなら仕方ないとOKしたけど、大寒波来てる最中の一月の満員電車である。お年寄りやら体調不良の人やら大勢いるのに、一人の男のために全員が我慢しなければならないの、理不尽では?

その男は生駒駅で降りたので、ついついキツイ口調で「降りるなら窓閉めてな」と言ってしまった。

真冬でなければまだいいけど、厳冬の夜9時過ぎ、外は氷点下なんやけど。

障害者もどんどん街に出るべき、遠慮なくどうぞと普段から思ってる方やし、公共交通に乗るな、タクシーにしろとも言えないけど、なんかモヤモヤする。

最近見た映画のタイトルやないけど、「どうすればよかったか?」と言いたくなるねぇ。

その男が見るからに健康そうでスポーツやってるのか大きな鞄を持ってたから、余計そう感じたのかも。

寒いの我慢したせいでも無かろうけど、まだ発熱。

↑ ↑ ↑

 以上である。

 バズったおかげで更に色々考えたし、コメントももらえたのでそれで更に考えられた。
 因みに、見せられた紙にプリントされていた文字は「過換気症候群」であった。あとで検索したら、肉体の病気ではなく、精神の病気であった。そしてその対処法に「窓を開ける」とはどこにも書いていなかったのだが。

 彼が乗ってきたのは大阪第二の巨大ターミナルである難波の手前、桜川辺り。その時点では空いていたが、時間は21時を過ぎていたと思う。そして難波から満員になることは、彼も知っていただろう。
 どう考えても、そんな時間に中学生が一人でどこかへ向かうということはなく、帰路である。つまり急ぎではないはず。
 難波から生駒まで、快速急行で20分である。しかし満員になる。ならば、そんなに換気が必要なのであれば、快速急行ではなく普通に乗って、ドア脇に立っていればいいのでは? そうすればひと駅ごとにドアが開くのだから。それなのにどうして満員の快速急行で座っていたのだろう?
 それに、コロナ以降は特に、今の電車は窓を閉めていてもガンガンに強制換気されているのだ。まぁ実際に新鮮な空気が必要という肉体の病ではなく、メンタルの問題だから、新鮮な空気より「窓が開いている」という事実が重要で、どれだけ換気が行われていても窓が開いていなければ過呼吸になるのかもしれないが。

 スレッズに沢山ついたコメントのおかげで、彼が悪い意味で近鉄奈良線の有名人であることも判った。厳寒期だけでなく、年中やっているらしく、目撃者が大勢いらしたのである。夏は夏で冷房が効かなくなって大変だった、という方もいた。

 近鉄電車奈良駅~阪神電車三宮駅を直通する快速急行は、近鉄と阪神、両方の車輛が使われている。この時乘ったのは近鉄の「シリーズ21」と呼ばれるタイプの車輛だったが、実は近鉄、阪神共に、新しい車輛は殆ど窓が開かない構造である。
 彼は、窓が開けられる電車ばかり選んで乗っているのだろうか? それとも、窓が開かない車輛にも平気で乗っているのだろうか? いや、窓が開く車輛が来るのを根気よく待つぐらいなら、普通電車のドア脇に乗る方がよほど目的地に早くつくのだが。

 障碍者もどんどん行動し、街に出て、好きなところに行くべき、という考えは変わらない。しかし、障碍者だからといって周囲に迷惑をかけていい、というものでもない。
 満員電車には様々な人が乗る。お年寄りも、障碍者も、病人も、つまり健康でない人も乗り合わせている可能性が非常に高い。そんな満員電車に乗って、ヘルプマークを示して「過換気症候群だから」と言われても、冠動脈にステントが入っている僕が寒さのせいで心臓発作で倒れたって、彼に責任が取れるわけがない。僕でなくても、とにかく「窓を開けられたせいで急病人が出る」可能性は低くないわけで、そうなったら彼はどうするのだろう?

 彼があまりにも平然と、当り前のような態度だったから、よけい釈然としない。彼の親はどう思っているのだろう? 知っているのだろうか?

 僕自身、精神障碍者手帳申請中なんだけど、考えさせられる。

 

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