初夏のミナトゴハン 地引網の予習。
今回は九十九里へ。
初夏にお願いする地引網の下見をしに九十九里”地引網丸吉”さんのところへ行ってきました。久しぶりの日帰りの旅です。
緊急事態宣言が明けたとはとはいえ油断は全くできませんので人混みはできるだけ避けて単独での移動。
海岸に着くと、お天気、最高です。人もまばらです。
最近お邪魔していた漁港は岩場が多くて防波堤があって船が並んできて。といういわゆる漁港でしたが九十九里は延々と砂浜が広がっていて遠浅。土地の高低差もほとんどないので写真を撮ってもほぼ水平線です。こういうところでもお魚って獲れるんですね。
九十九里の地引網漁
九十九里ではこの砂浜から船を出して網で水の中の魚を囲い、数十人で引き上げる漁が行われてきたそうです。
昔は網を引き上げるときは近所の人たちやもみんな一緒に手伝ってくれて、手伝った人は魚を持って帰る、という事が日常だったとのことで。なんだかのどかな風景ですね。
”ぼて”と呼ばれていた行商の人たちもこの地引網を一緒に引き、その魚を持って自転車で売りに行っていたそう。天秤を肩に担いで売りに行く人たちのことを棒手振り(ぼてふり)と読んだところからこの名前がついたそう。
元々は漁場をとるケンカになることもあったというほど漁は盛んに行われていましたが、次第に漁獲高が減り、自然と船の数も減ってきて、丸吉さん一度漁をやめた時期があったものの、この伝統を多くの方に伝えたいと再開されたそうです。今では九十九里で2件のみ。
子どもたちに生きた体験を
今の子ども達は生きた魚を見る機会がなく、ゲームで何度死んでも生き返るキャラクターを相手にしています。実際に生きた魚を自分の手でつかみ、焼いて食べ、もうその魚は生き返らないんだということを身を持って体験してほしいとおっしゃる代表の小林さん。
網にかかった魚を手でつかみやすいようにと3年掛かりで魚を入れるためのご自分が理想とする生け簀を作ったのだそうです。
こちらがその力作の生け簀。
その甲斐あって今まで魚を食べられなかったり、生きている魚を手でつかめなかった子たちも魚好きになって帰っていくといいます。
子どもだけでなく、自分も含め、せいぜい見るのはスーパーの発泡スチロールの箱の中で氷と一緒に入ったものくらい。
大人にとっても生きたものを見るのは、釣りでもしない限りはなかなかない貴重な体験です。
しかも自分で網を引いて!楽しみです。とてつもなく楽しみです。
減少している九十九里の魚
この数十年の網元さんがほとんどなくなってしまったという地引網漁。
うちに海岸沿いにできた堤防や建物の影響で潮の流れが変わったのか、温暖化の影響なのか。
最近だと少なくなってしまったのはセグロイワシ、シロギス、小さな貝。
そしてこの小さな貝を食べていた舌平目。貝殻ごと食べるそうです。すごいですね!
舌平目がまだたくさん海にいた頃は、潮が引いた時に海岸にとりのこされたものに”ヘラだたき”と呼ばれる針のようなものがついた道具で頭をたたくように刺して獲っていたんだそうです。
昨年ニュースで見たはまぐりは増えたのか?
海岸には昨年ニュースで話題になっていたハマグリの貝殻もたくさん落ちていました。
これは大量発生したのでではなく、もっと海の方にいるはずのものがなぜか陸の方に移動しただけで、量自体に変わりはないのではないかなあ、とのこと。
とれた魚はぽっぽ焼きで
少なくなってしまった魚の話などをしていると寂しくなってしまいますが、漁はとても楽しみです。
使う船はこちら。こんなフチの水色が可愛らしいです。
これをみんなで押して海まで持っていき、網を出して魚を囲いこむそうです。
潮の引き具合にもよるでしょうが、船の位置から海を見るとこんな距離感。
ここら辺の海は潮の流れが早いので、定置網のように魚を待つのではなく、囲いこんで時間を置かずに引くのが特徴。
腰にヒモのようなものをつけて皆で腰でひきます。引く力が強いほど魚はかかりやすいそうです。
獲れるののは主にアジ、小さなイカ、まいわし、カタクチイワシ、えびなど。
鱗をとらずそのまま炭で焼いて食べるぽっぽ焼きは新鮮であればあるほど美味しいそう。本当に不思議なくらい美味しいと何度も聞くと、ものすごく期待が高まります 笑。
お刺身は包丁は使わず手で開いてそのまま口に入れてしまうんだそうです。これも興味津々。
まだまだ先の話ではありますが、当日はどうか波のない良いお天気になりますように!と願いつつ今回の日帰り旅は終了しました。