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不登校から見えた新しい世界:親子でつかんだ自由と成長


「今日...学校行かなくていい?」

「えっ、どうしたの?
 行きたくないの?」

布団の中からおでこと目だけを出した8歳の息子が
私の顔色をうかがうように聞いてきた。

「とりあえず今日は休もうか...」

胸が締め付けられる。
まさかこんな日が来るなんて...

しかし記憶を辿るといくつか思い当たることがあった。

息子が電信柱を拳で殴っていた時期がある。
「殴られた時に殴り返せるように。そのための練習」と。

一人っ子男子なので喧嘩の経験がほぼ無い。

軽い喧嘩をするようになった?
たくましくなったもんだ!

なんて呑気に思っていたけれど

今思えば誰かを殴りたいほど
嫌な思いをしていたのかもしれない。

電信柱を殴り続けた息子の指の関節からは
少し血が出ていた。

あの時、何も言わず一人で辛さに耐えていたのかも...
なんて鈍感な母親なんだろう、わたしは。

そう思うと一日中涙が溢れて止まらなかった。




3週間目には
近くの精神科を調べ電話をかけた。

息子は発達障害なのかも。

もしそうなら
息子の健やかな成長のためにも
発達障害の検査をして
彼の特性を知っておきたい。

そう考え、思い切って電話をした。

これで何かがスッキリする!

「小学校2年生ではまだ判断がつかないので、検査はできないんです」と
看護師さん。

え?できないの?

ネットで調べたら
発達障害の検査は0歳や3歳から可能と
書いてあるのに...

今思えばその看護師さんは
私の話す内容から

息子が発達障害ではないと判断し
やんわり断ったのかもしれない。



登校しなくなって1ヶ月。

小学校のカウンセリングルームに行ったが
なんの解決にもならず。

息子の気持ちを一番大事にして
くれる人に相談したい!

必死に検索し
出会ったのが信州親子塾というフリースクールだ。

信州親子塾に電話するのにとても緊張し
スマホを手に持ったり
机に置いたりを何度も繰り返した。

でも、今、電話をしなければ
この苦しさがずっと続く。

<動けば何かが変わる!>

自分に言い聞かせ、やっとの思いで電話をかけた。

「そうでしたか、大変でしたね。
 ここに来れますか? 1回お話ししましょう!」

電話対応してくれた、とても優しい声の女性。

実際に信州親子塾に足を運んだ際には
丁寧に話を聞いてくださり

わたしは
自分でもびっくりするくらい泣いて
下まぶたが痒くなった。



その後、大きな決断をすることになる。
選択肢は2つ。

ひとつ目は
現在、在籍している私立小学校にオンライン授業で参加する。
(この場合は金銭的な問題でフリースクールには入れない)

ふたつ目は公立小学校に転校する。
息子は学校へ行く意思が全くないため、不登校対応にしてもらう。
(公立小学校は学費無料のため、金銭的余裕ができフリースクールに入れる)

親子で話し合った。
息子は私立小学校にやや未練があると言う。

しかし今までの小学校では
不登校対応に不安が残った。

今の精神状態を考えると
息子にとって最良の選択は
フリースクールで内面を整えることでは?

わたしの考えを息子に伝えると
息子も私立小学校を辞めることに同意してくれた。

公立小へ転校し
フリースクールに本格的に所属。

信州親子塾は
その人間の存在を
丸ごと受け入れてくれる雰囲気が心地よく

固まっていた身体がほぐれていくようだった。

精神面以外にも助かったことは
スタッフさんが

「息子はHSC(Highly Sensitive Child:とても敏感な子供)
という気質を持つ子どもであろう」と教えてくれたことだ。 

私は息子に関する新しい視点を得て、
少しずつ息子への見方を変えることができた。

信州親子塾に通いだしてから
息子が笑うようになった。

それに伴い
わたしにも徐々に変化が。

不登校になってから
「お母さんに家にいて欲しい」という息子の願いを聞き

レジ打ちパートタイムの仕事をやめ
在宅で働くことに決めてから

ライター講座に参加後
細々と在宅ワークを始めていた。

最初は充実感があり、楽しかったが
ずっと家にいる生活に閉塞感を感じてきた。

学校に行かないことを選択し
自分のやりたいことを模索する
息子の姿を見ているうちに

母親の私も結婚以来押さえつけていた
好奇心を解き放ちたい!
そんな気持ちになり始めていた。

もっといろんな人に会いたい!
刺激を受けたい!



好奇心旺盛な私は
さまざまな講座などに参加し始めた。

まよまよ先生のライターコミュニティ
ひすいこたろうさんの講座
小野スタイルマッチ邪兄さんのYouTube制作のコミュニティ
FISHBOYさんのダンスのサロンにも参加。

そこでの交流や
刺激的な出来事の数々によって

わたしの心に20代のような
高揚感が戻ってきた。


子連れOKの講座や集まりには
息子同伴で参加。
多様な生き方の人間と知り合えて
息子の刺激になっている。

視野を広げるため
私たち親子は時々旅に出ることも。

親子ツアーに参加したり

息子が原爆に興味を持ったら
広島を訪れたり。

今年は仲間と共に
パラグライダーにも挑戦。

「お母さん飛ぶの?えー...行かないで...僕、飛べない...」
息子は目を見開き、首を横にブンブン振った。

「わたしは飛ぶよ!大丈夫だよ!!」

パラグライダー当日、電車の中。

「できるかな...やめようかな...」
息子の口と眉毛が下がって戻らない。

いよいよ山の頂上に到着。

タンデムフライトのベルトをつけると
息子の目に光が宿った。

そして...飛んだ!

タンデムフライトはインストラクターとお客さんの
2人で飛ぶ方式だ。

息子とペアになってくれたのは
パラグライダー会社の社長。

飛び終わった後、
社長は言った。

「君は筋がいいね!
もし興味があれば16才になったら
パラグライダーのライセンスを取りにおいで!」

息子はまっすぐ社長の顔を見ていた。

ひとつひとつの場面、
ひとつひとつの体験、
もらった一言が息子の心に積もっていく。

今年は予祝キャラバンという
大嶋啓介さんの講演会スタッフを
親子でやらせていただいた。

全国4箇所に参加。

1回目は他のスタッフと話ができなかった息子。

しかし
4回目には初めて会ったスタッフと
話ができるようになっていた。

今年の息子の誕生日。
ケーキを食べながら
「僕、ちょっとコミュ力が上がったかも」

そう言った息子の目には力強い光。
11歳になった。

ありがたいことに
フリースクール、
小学校のスタッフ、
コミュニティの仲間が
わたしと一緒に息子を見守ってくれる。

とてもラッキーな不登校生活だと思う。

最近わたしはノートを買う回数が増えた。

心に湧くことを記したり
未来のことを書いたり
感謝の言葉をたくさんノートに綴っている。

手塚治虫さんは言った。
「物語はここから始まるのだ」

そう、これからも様々な体験と出会いを積み重ね
息子もわたしも唯一無二の自分として更に進化していく。

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