のらねこ日記 ⑩
ハンター ボーちゃん
家の中では、みそっかす的なボーちゃんですが、外では別の一面がありました。
野良猫の血が騒ぐのか、やたら色んなものを狩ってくるハンターでした。
とにかく狩るのが面白いのでしょう。
隣の家の屋根に上り、軒下の雀の巣を探ったり、お向かいの家の夏みかんの木から、プリっプリのアゲハ蝶の幼虫を取ってきたりで、
それらの獲物を室内に持ち込み、見せにくるのでした。
その時のボーちゃんは、誇らしく胸を張り『ねぇ、すごいでしょ!』と言わんばかりですが、いつも「何てかわいそうなことをことするの!」と母に叱られ、父に獲物を取り上げられ、いなくなった獲物をひとしきり探しては、しょんぼりとしたあと、また狩りに出かけるのでした。
そのたび、犠牲になった子雀やトカゲたちは、父が庭に埋葬していました。
しっかりと生け捕りにしてくる時は、その後が厄介です。その日はとかげをくわえてきたのですが、口のわきから、とかげの足と尻尾がチョロっと出ていて、じたばたと動いていました。
「ぎゃあぁぁぁー!」と言う母のけたたましい悲鳴に驚いたのかボーちゃんは、とかげをポロリと落としてしまい、とかげは家具のすき間に逃げ込んでしまいました。
その後帰宅した父と私で大捜索の結果、トカゲは無事に庭に放たれました。
また、夏の日の真夜中、蝉の声で目覚めた私は、それが家の中で鳴いていることに気がつきました。1階に降りるとボーちゃんが高い位置の窓を見上げており、そこには窓の桟に挟まってジージー鳴いている蝉がいました。
どうやら、ぼーちゃんは、2階の窓が開いているベランダから外に出て、弱って地面に落ちていた蝉を取ってきたものの、蝉の抵抗にあい逃がしてしまったようで、私が窓を開けてやると蝉は最後の力を振り絞って飛んでいきました。
ちなみにミケさんは、このような無用な殺生をすることは一度もありませんでした。