のらねこ日記 ⑮
通り道の猫たち
昔は、町のそこここに猫がいました。
最寄駅まで徒歩20分、丁度中間地点に小さな八幡様の神社があり、そこにもよく猫がいました。
ある夜の帰り道、私の前を歩いていた
キッチリとしたスーツの紳士が、鳥居の前で足を止めると、急にしゃがみこみました。靴ひもでもほどけたのかなと思っていると、紳士はおもむろにアタッシュケースを開け、中から猫缶を取り出しました。よく見ると彼の足元には、キジトラが…
こんな感じで、餌やりをしている人が何人もいるので、ここの猫さんたちは、みんなとても愛想よく、さわらしてくれました。ちなみに父はここで猫をかまっていた人を私と見間違え、「おい、なにやってんだ」と、声がけしてしまったことがあります。
私の職場(病院)にも、猫がいました。
入院患者さんたちが餌やりをするらしく、正面玄関横のツツジの植え込みの下に、お寿司の太巻が置かれているのを見たことがあります。
事務の人が『餌やり禁止』のポスターを貼っていましたが、なかなかなくならなかったようです。
職員玄関に向かう裏の通り道にも、猫の餌やり場がありました。こちらは、公道に面している金網フェンスの下だったので、職員か近所の人が与えているのでしょう。よく猫缶が置かれていました。私が見かける時は、大体完食でしたが、1度だけ全く手付かずで残っていることがありました。
そこには、真っ白い絹ごし豆腐が1丁、
パックから出されて置かれていました。
何故豆腐?さすがに、食べないだろうと、思い、帰り道にもう1度確認しましたが、やはり豆腐はそのままでした。