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鳥に託した願い―迦陵頻伽(かりょうびんが)の美しい声は仏さまとご法を象徴

学術研究室
北村友里江

大聖堂の正面玄関を上がったところには、礼拝堂があり、訪れた人たちは厳かな雰囲気の中で仏さまに祈りを捧げることができます。
天井には、蓮弁彫刻でふちどられたガラスのモザイクで装飾された照明があり敬虔な雰囲気を演出しています。
喜捨箱の前に立つと、瑞鳥模様のブロンズレリーフがあります。このレリーフ越しに久遠のご本仏さまと対峙することができます。今回は、この鳥について考えてみたいと思います。

喜捨箱前のブロンズレリーフ①
喜捨箱前のブロンズレリーフ②

このブロンズレリーフの鳥は、仏教において、とても美しい声で有名な、迦陵頻伽(かりょうびんが)をモデルにしたものと言われています。

迦陵頻伽(かりょうびんが)は、インドの神話に出てくる想像上の鳥で、サンスクリット語では、「カラヴィンガ」とも言われます。[i]
また、好声・妙声・美音・美音言・好音鳥・妙音鳥と漢訳されます。[ii]

迦陵頻伽(かりょうびんが)はすずめのたぐいとされており、声が非常に美しいことから、仏さまのお声や教えが、迦陵頻伽(かりょうびんが)のようにとても美しいと賛美されています。迦陵頻伽(かりょうびんが)は法華経の化城諭品第七にも登場しており、仏さまの教えのすばらしさの例えになっています。[iii]このように、迦陵頻伽(かりょうびんが)はその美しい声と姿を通じて、仏さまの教えのすばらしさを伝える役目を担っているのです。

極楽浄土で仏さまの教えを説く迦陵頻伽(かりょうびんが)は、上半身が人で、下半身が鳥の姿で楽器を持っている様が描かれることが多く、日本では音楽の神としても信仰されてきました。美しい女性が楽器を持って空を舞う姿は、天女にとてもよく似ており、羽衣伝説に影響を与えたとも言われているそうです。[iv]このような人頭鳥身の迦陵頻伽の姿には、兵庫県の中山寺や岩手県の中尊寺、京都の知恩院などで、その美しい姿に出会うことができます。

また、鳥の翼を背負い、天冠をつけた童舞の「迦陵頻(かりょうびん)」と呼ばれる舞もあります。[i]迦陵頻(かりょうびん)は、古くから伝わる仏供養の舞楽の名前です。

そもそも仏教では、鳥にはどのような意味合いがあるのでしょうか。『阿弥陀経』や『往生要集』によると、姿も声も大変美しい6種類の鳥、「浄土の六鳥」が極楽浄土にいると説かれています。浄土の六鳥は、白鵠(しろくぐい)・孔雀・鸚鵡(おうむ)・舎利・迦陵頻伽(かりょうびんが)・共命の六種の鳥たちです。これらの鳥は、昼夜に6回優雅な声でさえずり、仏の教えを説いているとされています。この鳥たちの声を聞いた人たちは、仏・法・僧に深く思いをいたすと言われています。[ii]つまり、浄土の六鳥の声を聞けば、三宝帰依の念を深くできるということでしょう。

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大聖堂の礼拝堂には、仏さまとその教えを荘厳するために、そしてサンガを敬う心を深くしてほしいという願いを込めて、迦陵頻伽(かりょうびんが)をモデルにした、こちらの瑞鳥模様のブロンズレリーフがデザインされているのかもしれません。

浄土で仏さまの教えを説く鳥の声を聞いて、三宝に帰依する心が湧いてくるように、大聖堂に参拝した私達がみ教えを聞いて、心が救われ、三宝を敬い、修行精進に励めますように、との開祖さまの願いが込められているのだと思います。



[i] 『お寺のどうぶつ図鑑』今井淨圓監修、二見書房、2020年、p.154.
[ii] 中村元『広説佛教語大辞典 上巻』東京書籍、2001年、p.225.
[iii] 庭野日敬『新釈 法華三部経④』佼成出版社、1996年、p.311.
[iv] 今井淨圓、前掲書、p.154.
[v] 中村元、前掲書、p.225.
[vi] 今井淨圓、前掲書、p.154.

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