見出し画像

てくてく北へ #5 「中部の旅」(森山智仁)


【この連載について】
フリーライター・森山智仁さんが、2023年4月から半年間、鹿児島の開聞岳から北海道の羅臼岳まで、各地の山に登りながら、ほぼ徒歩で日本縦断する旅「#日本縦走」。このチャレンジを「食」の観点から綴るフォトエッセイです。琵琶湖沿いを北上したのち、福井から石川、富山、そして岐阜と長野の県境に至る中部の旅。名峰・白山を踏破し、今回の食のハイライト・飛騨牛2連発へ! 森山さんの旅の様子は、Twitteryoutubeから、リアルタイムで発信中です。
前回の記事はこちら


大阪では本場の粉モンを楽しみにしていたのに、折悪く体調不良に。食い倒れる前に倒れてしまいました。いや倒れてはいないんですけど、粉モンなんかとても喉を通らず、おなかに良さそうなものをしばらく摂り続けました。無念。

ヨーグルト・おかゆ・プリンなど

胃腸って本当に大事ですね。徒歩・登山の旅で、食べたものがすぐ力に変わらないというのは致命的。ゲームでいうと回復役がやられたって感じです。良くない状態は5月末から1週間と少々続き、この苦しみから「もっと腸内環境に気を遣おう」と思い始めたのでした。

完調じゃなくても軽い低山には登る

京都を通過し、琵琶湖の西岸を北上して、福井県に入ろうというあたりで、ようやく食事を楽しめる状態にまで回復。

湖畔のホテル&レストラン「ルポゼ・マキノ」

おいしいことがうれしい! 一品一品よく噛んで味わいました。こちらのホテル、味は完全に高級レストランなんですけど(なお行ったことはない模様)、接客の雰囲気は学生街の食堂みたいな感じで親しみやすいです。テラスでは親戚連れ御一行っぽい方々がバーベキューしててほっこりしました。
 
追坂峠を越え、敦賀→南条と歩いて、福井の中心部へ。

福井駅前には動く恐竜

日本の恐竜の化石の約8割が福井県から出土したそうです。まさに恐竜大国。子どもの頃、NHKの天才てれびくんのアニメ「恐竜惑星」が大好きだったのを思い出しました。そんな福井の名物の一つが……

ソースかつ丼

ジャンク! 甘めのタレがごはんによく合います。揚げ物がおいしいということは、お腹の調子はもうすっかり良くなったと見ていいでしょう。
 
ところで、この連載の初回では「歩けなくなってしまうからお昼ガッツリはNG」と書きましたが、胃が拡張されたのか、この程度なら食べても大丈夫ということがわかってきました。ただし、調子に乗ってミニうどんとか付けてしまうと行動不能になると思います。

登山3泊の食糧を調達して勝山へ

6月16日、勝山天然温泉「水芭蕉」から、白山の市ノ瀬登山口まで33km。累積標高差も1400mあり、登山口までがすでに登山です――というのは、この旅ではいつものことなのですが。
 
途中、日本屈指の豪雪地帯で、重要伝統的建造物群保存地区に指定されている白峰を通りました。

雪だるまカフェ「かましがけアイス」

「かまし」とは、この地域で古くから食べられている穀物の一種。えらく手間がかかる代わりに、長期保存可能でカルシウム豊富なのだそうです。変な喩えですが、ウエハースの粉末のめっちゃ風味いいやつって感じで、バニラとの相性抜群でした。

6月17日、南竜ヶ馬場でテント泊

白山では、旅立ちからはるばる持ってきた軽アイゼンが初めて役に立ちました。登山を始めてからしばらくは雪ってひたすら怖いイメージでしたが、やっぱり雪があると綺麗ですね。風がひんやりしていて気持ちいいし、特別感があります。

御前峰登頂後は踏み跡の無い縦走路へ

と言っても、期待・警戒していたより雪は少なめ。今年は全国的に雪が少ないようです。難なく尾根を歩き、6月18日はゴマ平避難小屋に宿泊。
 
ちなみに雪解けが遅ければ、この山や四国の石鎚山に登れなかった可能性や、この先の天生峠の冬季通行止めが解除されず、身動きが取れなくなっていた可能性もありました。お天道様に対しては人間なんて無力なものだなあとしみじみ。

憧れの合掌造り!

6月19日、白川郷に下山。大勢の外国人観光客に「何だあの荷物は……!?」という目で見られながら、分厚い屋根や養蚕の道具を見物しました。
 
夜は民宿「文六」に宿泊です。白川郷に、泊まる! 楽しい! とても雰囲気が良くて、完全におばあちゃん家のくつろぎ。ふと思いましたが、古民家を「おばあちゃん家みたい」と感じるのも、我々(39歳)あたりが最後の世代なのかもしれませんね。

夕食のメインは飛騨牛の陶板焼き

うま〜い。飛騨牛、めっちゃ柔らかい。野菜も肉の甘みを吸ってホクホク。地元の山菜や飛騨特産の硬めの豆腐などもおいしくいただき、畳の上のオフトゥンで就寝。もうテント泊も避難小屋泊もすっかり慣れたものですが、まともな寝具で眠ってこそ人間らしい生活です。

朝食の朴葉味噌もおいしかったです

飛騨高山では丸1日、荷物担いで歩くのをヤメて、休養を取りました。コインランドリーを回し、2ヶ月ぶりに髪を切り、マッサージ屋さんで筋肉の張りを解消。飛騨高山レトロミュージアムで遊んだりもしました。

レトロミュージアム「学校給食セット」

きなこ揚げパンは好きなメニューとして記憶しています。ミルメークとソフト麺は初体験。なかなかおいしいですね! 給食と言えば、今では好き嫌いがほぼないのですが、昔は「加熱した卵」全般が食べられなくて苦労しました。つまりゆで卵も卵焼きもNG。なんとなく匂いがダメでした。大丈夫になったのはお酒を覚えてからだったと思います。やはり酒……アルコールはすべてを解決する……!

マイナールートで乗鞍岳へ

次に登る乗鞍岳は北アルプスの最南端。スカイライン(2023年開通予定なし)やエコーラインが山頂のすぐ近くまで通っており、3000m級の山にしては初心者向けとされています。が、西の丸黒尾根で登るコースは一転して上級者向け。整備がほとんどされておらず、猛烈な藪漕ぎとなります。
 
その西の登山口へ向かう途中で出会ったのが……

デカ過ぎんだろ……

喫茶「くりの木」の「カツびょうきライス」。内容はそばめしのカツカレー。これで普通盛りです。僕は登山者だからなんとか食べ切れましたけど、登山始める前なら絶対無理でした。メニュー名の由来を聞いたところ、「あんま見た目が良くなくて、病気になりそうな量だから」とのこと。40年以上続いている大人気メニューでした。

あっ、あれは……!

高山帯のアイドル・ライチョウと遭遇しつつ、6月24日、乗鞍岳に登頂。この日が今期営業初日となる白雲荘に宿泊。「ずっと下から歩いてくると乗鞍岳の大きさがよくわかりますよね」と、オーナーさんが嬉しそうでした。お楽しみの夕食は……

飛騨牛のすき焼き!

すっごくおいしい……(恍惚)。卵を、こう、でゅるんと絡めてお口に放り込むと、んほわぁ〜ってなります。こんなおいしいものを最終的にどうするかっていったら当然、

こうする

地元産のお米を天日干ししたごはんで、おじやに。昇天です。ごちそうさまでした。

下山して振り返る

さて、登山がお好きな方なら、ここから上高地を経て北アルプスの縦走を期待する人も多いかと思いますが、今回はやりません。理由は二つあり、①それをやり始めると北海道の降雪に間に合わなくなるから。②アルプスは東京からのアクセスが結構良く、いつでも来られるから。です。

今後のルート

というわけで次は美ヶ原・妙高山・谷川岳と歩いていきます。どうぞご期待ください。

【北海道上陸まで残り94日・車道最短距離で770km】

文・写真:森山智仁
Twitter:https://twitter.com/bacoyama
blog:https://moriyamatomohito.hatenablog.com/

●森山智仁のyoutubeチャンネル「東京登山」
https://www.youtube.com/channel/UC0HDQAfdJHYJtPpHgJUds1Q
Twitter:https://twitter.com/yamako_yamalove


いいなと思ったら応援しよう!