丸子川家守舎のはじまり(後編)
いつもキタマルコのnoteをご覧いただき、ありがとうございます。
前回の記事では、キタマルコを運営する(合)丸子川家守舎 代表の松塚が学生時代に自身の生き方、働き方について悩んだ末に「まちのあり方を考える」という姿勢をもって建築に携わっていきたいと覚悟を決めた…といったストーリーをご紹介しました。今回は、続編です。
すべては、お客様の幸せのために
―思い悩み、もがき行動した時間の中で、今につながる考え方が醸成されていったんですね。首都圏から地元・大曲に戻って来られたのもこの頃のことでしょうか。
そうです。2007年に父の経営する館設計事務所に入社し、実際に地元のお客様や施工者の方々と関わらせてもらいながら、地域のことや建築設計について学んできました。
その後、民間の施設系の設計に特化する設計チームをつくるために独立し、2013年にやまと建築事務所を設立しました。
建築設計の中でもわたしの得意分野は2つ。
1つは、建物の劣化や不具合がないかを調べるインスペクション。ひらたく言えば建物調査です。まだ使える建物なのかどうか調べたり、条件がそろった場合は「リノベーション(改修工事)」を検討することもします。
もう1つが、お客様の事業の成功を目的とした建築までのナビゲート。建物をつくることを目的とするのではなく、「事業がうまくいくための建物づくり」を目指したアプローチをしています。
―そうしたお仕事の中で、大切にされている考え方はありますか。
かっこいい建物をつくることも大切ですが、それよりも大事なのは、お客様が幸せになるための建物づくりをお手伝いさせて頂くということだと思っています。
住宅は、そこに住む人が幸せに暮らしたいと願いを込めて作るものですよね。施設設計も同じです。施設を利用するお客様はもちろん、そこで働くスタッフの方も含めてみんなが気持ちよく利用でき、その結果として運営する会社がうまくいく…そのための建物づくりが重要だと思うのです。
ですので、やまと建築事務所には作風、スタイル、形へのこだわりはありません。それよりも、お客様が望む「幸せ」とは何か、それをどうやって実現するのかということを一緒に考えさせて頂いて、一緒に作っていく…そうしたプロセスを大切にしていることが弊社のこだわりです。
場合によっては、法人のお客様に対して「事業を成功させるためにはこの部分のお金をこのくらいに抑えていきませんか」「この事業のこういう部分に対してスタッフに負荷がかかっているので、スタッフを大切にしていくためにこういったことはできないでしょうか」といったご提案をさせて頂いたりもしています。
住宅設計を依頼された個人のお客様が、ご家族の介護について悩まれていることが分かった場合には、要介護認定の受け方や利用できる介護支援サービスをご紹介したりすることもあります。
―世間一般的にイメージされる建築設計事務所の領域を飛び越えていますね。
お客様にとって、建物を作ることは幸せになるための手段の1つです。お客様が悩んでいることや必要としていることが建物以外にもあるときには、自分たちにできるお手伝いをさせて頂きたいと考えています。
おかげさまで、弊社へのご依頼も増えてきており、2016年12月には法人化することができました。
活気あるまちにするために、想いある人の活動を応援したい
―やまと建築事務所のお仕事が順調な中で、今回新たに丸子川家守舎という別組織を作られました。
ここ数年のうちに、丸子川付近でお店をやっていた方から「この場所をうまく使ってくれる方はいないだろうか」と相談が寄せられることが何度かありました。ブランカもその一つ。今後は、店主が高齢になるなど様々な事情によって、お店を閉じざるをえない判断をされる方が増えてくることが想像されました。
でも、この丸子川は、県南地域の発展に至るきっかけを作った歴史ある場所です。払田の柵や北前船での交易などにも寄与していることが分かっています。ご相談を聞かせて頂く中で、そうした場所から元気がなくなってしまうのは残念なことだと考えるようになりました。
歴史的な建物も点々と残っており、駅からも歩ける範囲にあることから、丸子川エリアは観光的な視点から見ても価値があるはずです。
丸子川エリアを活気づけられないかと考えたとき、その想いは「幸せの場づくりを、ナビゲートする」というやまと建築事務所のビジョンとは少し別のところにあると考えるようになりました。
やまと建築事務所はナビゲーター、水先案内人ですので、自分たちが自ら主体的に活動するプレイヤーになるものではないんです。ブランカを引き継ぐことを考えたとき、自分たちが直営してはだめだと思い、「面白いまちをつくる」という理念を掲げた丸子川家守舎を設立しました。
ー丸子川エリアを活気づけていくことを目標に掲げた丸子川家守舎としての事業が、ブランカを引き継いでオープンしたshare space キタマルコだったんですね。
地域を活気づけていくためには、この場所を使う人が面白く活動できるようなところを作ることが必要だと考え、キタマルコを「シェアキッチン」、「シェアスタジオ」として、地域のみなさんと一緒に使っていくことにしました。それは、ブランカの文化の拠点としての機能を維持していくことでもあります。
「シェアスタジオ」ではブランカが実施していた絵画教室を継続して開催していくほか、音楽や美術、写真など、技術に加え、交流と学びを共に楽しめる場所をシェアオーナーの皆さまと一緒に作っていけたらと思っています。
「シェアキッチン」は、ブランカに喫茶店の役割と設備があったということを活かして、自分の得意料理や好きな食材などをお客様に提供したいという方の夢の実現を応援する場所にしたいと考えました。
通常、自分でお店を開くといった場合、自分で場所を借りて始めるまでには準備や投資などが高いハードルとなり、なかなか前に進めない方が多いと思います。既に設備の揃ったこの場所を練習の場として使って頂き、本格的に自分でお店を開くまでのステップアップにつなげるためのメッカのような場所にできたら良いなと思っています。
生活の中に、ワクワクできる場所を
―5月にキタマルコがオープンしてから2カ月経過しました。
5月からのプレオープン期間は、内覧会やオーナーとして利用をお考えの方の相談会、プレイベントなどを中心に開催してきました。
ブランカを引き継ぐことが決まってからプレオープンまで時間がない中でしたが、三浦さんのご協力も頂きながら手作りで準備を進め、ようやくプレオープンにたどり着くことができました。
それが叶ったのは、「話を聞きたい、面白い、手伝いたい」と言って、協力してくださった地域の方々のおかげでもあります。実は、準備構想段階からわたしのFacebookで経過をご報告していたのですが、それを見てくれた方の中で、わたしたちの活動の趣旨に賛同し、ご協力くださるようになった方がいらっしゃったんです。
そうした方々とお話をすると、自分だけが楽しめれば良いというよりも、自分も含めてみんなが楽しくなってほしいと思っている方が多いと感じています。
現在は、少しずつシェアスタジオやシェアキッチンのオーナーも決まってきており、いよいよ7月から教室やお店がオープンしています。
オーナーや、オーナーが提供するサービスを利用する皆さんにとって、幸せを感じられるようなつながりが増えると良いなと思っています。
―これからのキタマルコを、どのようにしていきたいと考えていますか。
新型コロナウイルスの感染拡大で、オンライン空間が当たり前のように使われるようになり、モノやコトに加えて、トキ(時間)に対する人の考え方も変わったといわれています。それでも、やっぱりリアルで見聞きし味わう経験にかなうものはありません。
以前には「秋田には何もない」と外の世界ばかり求める風潮がありましたが、それも徐々に変化してきています。何もないのではなくて、大曲でも、大曲だからこそ、リアルならではの肌ざわりのある文化や新しいワクワクに出会い感じられる場所として根付かせていけたらと思っています。
それが、このまちに住む人や使う人にとって歩いてふらっと寄れる場所にあること、生活の中にあるということを大切にしていきたいです。丸子川家守舎としては、そうしたワクワクと出会い、プレイヤーとしてもワクワクを作れるところを増やしていきたいという想いもあります。
―最後に、この記事を読んでくださっている読者の方に、伝えたいことを教えてください。
キタマルコは、地域の皆さまと一緒に「幸せの時間」と「地域の活気」を作っていく場所です。
シェアオーナーの仕組みにご関心を持ってくださった皆さまには、人生を楽しくするためのきっかけづくりの場として、この場所を使って頂きたいと思っています。みんなをHAPPYにしたい、そのために新しい事業や活動をしたいという方に、ぜひご利用頂きたいです。
地域の皆さまにはシェアオーナーが提供するサービスを楽しみに立ち寄って頂きたいと思っています。
また、キタマルコはオープンしたとはいえ、運営の仕方やイベントの企画、ハード面など、まだまだ準備が整っていません。もしわたしたちの取り組みにご関心を持ってくださっている方がいらっしゃいましたら、少しでも一緒に手伝って頂けたら、とても嬉しいです。学生さんでも、年配の方でもOKです。多世代で、一緒に作っていくキタマルコにできたらと思っています。
―この記事を見てご関心を持ってくださった皆さま、ぜひ、わたしたちと一緒に、大曲のまちに「幸せ」と「地域の活気」を作っていきませんか。
シェアオーナーとして。
シェアオーナーが提供するメニューを利用するお客様として。
キタマルコの趣旨にご賛同くださった方はちょっとしたお手伝いとして。
様々な形で関わってくださる方を大募集しています!
お問合せをお待ちしております。
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