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アニメ「ルックバック」を観て思ったこと

もうすっかり寒くなった。勿論気候もそうなのだが、何が寒いって、一番は財布の中。世はすっかり忘年会シーズンだ。飲みたくもない相手と膝を突き合せたり・・という事は今ではすっかりなくなったが、それでもアルコールが飛ぶよりも早くお金が飛ぶ季節であることは言うまでもない。サンタクロースが枕元にいくらかおいてくれないものか。
今、テレビでは自民党が国民民主党の103万円の壁撤廃&178万円までの引き上げ協議を報道している。しかし自民党は中々の居丈高で、快く応じていないらしい。少なくとも自民党は国民の財布は寒々しくてもよいと考えているようだ。

さて話は変わるが、最近私は時間もあるからと、アマゾンプライムの動画をよく観ることにしている。私の今のお気に入りは「ダンダダン」と「魔法使いになれなかった女の子の話」。どちらもオンタイムで放送しているが、私はアマゾンプライムで観ることにしている。それは物語というよりも主題歌OPが好きで観ている。特に「ダンダダン」のオープニングはウルトラマンのオマージュで観ていて面白い。
ただ、今回感想を書こうと思っているのはそれらではない。私が最近のアニメ作品で物語というか表現が好きな作品についてここでは感想を書いてみたいと思う。それは藤本タツキ原作の「ルックバック」だ。

この作品は1時間程で観れるアニメだ。クエンティンタランティーノ映画と比べると2時間程尺が短い。なのでこの作品は厳密には非映画コンテンツなるODS( Other Digital Stuff の略。映画館で上映される映画以外のデジタル映像作品の意。決してトー横ら辺で流行っている、コデインを多量接種する行為の略称ではない)と呼ばれるらしい。実際、公開当時の映画館数も当初は119館のみと少なかった。しかし調べてみるとこれが結構なヒットを生んだらしく、20億円以上の興行収入を誇ったという。確かに観てみると面白い。以下にその面白かった点を書いていく。

〇面白かった点

このアニメ作品の良いところはそのシーンの数々が教えてくれる。私はこの作品が持つメッセージとかよりも純粋にシーンに興味を覚えた。というのも描写というか表現がうまいのだ。

1つ1つそれを挙げていこうなんて気はないが、中でも印象的だった場面は主人公の感情を表すシーン。この物語の主人公である藤野はあるうれしい出来事に遭遇するのだが(ぜひ作品を観てもらいたい)、その表現の仕方が面白い。なぜなら長回しなシーンながらも主人公の歩く姿を通してその感情の変化を表しているからだ。最近のやや直線的で単純なキャラクターが多いアニメ作品と比べると、ちょっと不意を突かれた気分にさせられる。

またあることも挙げておきたい。それは時間の経過を少ないシーンの積み重ねでうまく表現している、という事だ。そのお陰か作品のテンポもよくなっている。そこでもっとも機能的に働いていると思われるのが、四季である。この作品では頻繁に背景が映し出されるのだが、それが青々として夏の風景になったり、または枯れ木、果ては雪、といった具合に四季それぞれの代表物が描かれていて、知らず知らずのうちに時間が経過しているという気分にさせられる。これは日本人に特有の感情かも知れないが、確かに四季を経験する日本人とってみれば時間は常に四季とともにある。こういった点もよかったと思った。

〇題名について

そして題名だ。この映画の題名は「ルックバック」という。この映画に登場した文脈に従うなら、文字通り「背中(back)を見て(look)」という意味なのだろうが、私は洋楽好きだから即座にあの眉毛が濃い方のギャラガーが歌う「Don’t Look Back In Anger」を思い出した。つまり回顧する、とかいう意味の振り返る、という意味である。

実際に主人公の藤野は悲しみに暮れていた所、元相棒である京本との過去を回想することで、励まされたという物語の筋的にもこの意味は当てはまるであろう。私がこの作品に日本語で題名をつけるとしたら「振り返って」ぐらいの題名になるだろう。

〇するとメッセージは何だろう

最後にこの物語は何を描いているか。ちょっと考えてみよう。確かにこの作品には、いわゆる「京アニ放火事件」の要素(犯人が「俺の作品をパクった」といいがかりをつける所などまさしくそうだろう)が挿入されているが、私的には上記にも挙げた「 Don’t Look Back In Anger 」の意味であると考えたい。この言葉を直訳ぎみに日本語に直すと「怒りに任せて過去を振り返らないで」、意訳的には「落ち着いて見つめ直そう」といった具合か。

確かに人はある1つの事件で感情的になったりもする。私だって「京アニ放火事件」には驚きもしたし、怒りを覚えたりした。と同時に表現の無力さというものを感じたりもした。
しかしこのことをいつまでも怒りの中にいては、人は中々前に進めない。いつまでも過去に生きることになるから。

だからこその「ルックバック」じゃないのだろうか、人は時に悲しい出来事に直面し、いくつかの別れを経験するかも知れない。しかしその人や物が決して無になったのではない。思い出の中に生き続けるわけだ。そして私たちはそれを落ち着いて見つめ直すことで、実は自らの励みになるのではないか。そんなことを思う。丁度この作品の主人公がそうであったように。

またバックとは背中の意味でもある。もしかしたらそうした振り返りを通して私たちの背中が押され、希望をもらうのではないだろうか。ちょっと色々と考えすぎたところもあるかも知れないが、私はそんな風にこの作品のメッセージを解してみたい。








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