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第1回 株式会社意匠京念珠板倉 辰尾由佳さん

 「北区盛り上げ隊」第一回の取材記事の投稿となります今回ですが、北区の皆さんや地域の強みである“つながり”から「数珠つなぎ」を連想しまして、京念珠で有名な株式会社意匠京念珠板倉の辰尾さんに取材に行ってきました。
 念珠にも玉や糸それぞれの“つながり”が必要で、それによって見え方も大きく変わってきます。今回の取材を通じても、辰尾さんの職人としてのお考えを垣間見れるところと、探究心に溢れた方であり、取材をおこなった学生自身も良い経験になったのではないでしょうか。

株式会社意匠京念珠 板倉さんのご紹介
 代表取締役は辰尾由佳さん。
 世界にたった三人、念珠師として初めて「京都府伝統産業優秀技術者」に認定された京の名工であるご祖母 喜芳さんの技術と想いを受け継ぎつつ、念珠の製造をはじめ、学生とのコラボレーションやサロンまでも行ってらっしゃいます。
URL https://kyo-itakura.com

<目次>
1.想い
2.学生からのQ&A
3.人生哲学、学び
4.読者へのメッセージ
5.取材先のご紹介
 
1.想い
 まず、辰尾さんは板倉の念珠について、持つ人が幸せになってもらいたいという想いで作成していることを語っていただきました。そのためには、箱を開けた瞬間からが商品で、念珠を「きれい」と思ってもらうことが大切であるとしています。それは言い換えると、念珠を通して人の心に届けるということを意味しており、素敵な想いであると感銘を受けました。
 
 また、数珠の意味についても語っていただきました。数珠は、お葬式だけに使用するという印象があります。しかし、数珠は本来、自分のために念ずるための道具であります。だからこそ、前に述べたように、自分のために使うと考えた時に、綺麗と思う道具、ワクワクさせる道具でなければならないとしています。つまり、単に数珠としてではなく、自分の格を上げるよう大切な道具でなければならないとしています。
 
2.学生とのQ&A
Q:伝統産業を守る上で大切にしていることありますか?
A:伝統産業の常識にとらわれず、むしろ身近なものにしていくことです。
→どんな高価なものでも始まりは日常の必需品です。それが時代や文化と共に華美になったのです。昔をたどれば、現在、伝統産業になっているものもかつては生活必需品であったのです。身近なものにしていくことが大切である。
 念珠では、自分のための道具であるということから必要であったとしています。 
 また、一本の核を持ち、それがブレないようにしているとも語っていました。ここでの一本の核は、念珠であります。今や、守りたいものを守るような方法では大切なものは守れない。数珠を守るために数珠を売っていたのでは成り立たない。だから、いろいろな物を作っている。ここで大切なことは、一本の核は失わず持ち続けるということです。それ以外のものなら時代に合わせて見せ方も変えていきます。

Q:なぜ学生との取り組みに積極的に携わってくださるのか?
A:楽しいから。
 してあげているからという感覚ではなく、楽しくて幸せだという感覚。誰よりも自分が楽しんでいる。コロナ禍で大変なこともあったが、その時に社長が不安であれば、従業員の人に対しても不安にさせてしまう。だからこそ楽しむことが大切。
 
Q:好きなこととは?
A:どんなに苦しくてもその事を考えずにいられないことであり、考えてしまうことです。学生はまだまだ若い。それだけで価値があります。人は困った時にしか学ばない。人は誰しも夢中になるものがあります。タイミングは人それぞれです。失敗もしたらいい。それが人を成長させてくれる。

 このように語っていただき、エールを送っていただきました。
 
Q:辰尾さんが考える北区とは?
A:まず、北山や賀茂川の自然の風景が素晴らしい。北海道の様な大自然ではなく、人の手が入った計算しつくされた美しい風景です。
 板倉がある北山は、以前は「北山」というだけでブランド力があったが、コロナ禍で空き店舗が目立ち、北山でなくてもよくなったように思う。北山だけでは地条件として難しい状況になっている。だからこそ、わざわざ行きたいと思わせるような場所にする必要があり、そのように思わせる発信が必要です。また、北山ブランドに頼らない、わざわざ労力を惜しんでも行きたくなるような、心揺さぶられる場所をもっと増やして欲しい。
 
Q:北区盛り上げ隊への期待はありますか?
A:企業人や住民の方々の話を聞く機会は意外と少ない。気軽に話せるオープンな場でいろいろな人と意見交流がしたいです。あとは、北区の魅力的な企業間のツアーを企画してもらいたいです。例えば、ここでは(板倉さんの方では)ワンポイントカラーアドバイス&念珠ブレスレット作りのワークショップを行います。
 実際に足を運んで体験してもらうことが大切です。

3.人生哲学、学び
 ここでは、辰尾さんにお話を伺って、学生の視点から深いと思ったことなどを書いていきます。
 
・家の仏壇はお寺のミニチュア版である。
 →なるほど、お寺にお参りに行かなくても身近にお祈りができるのが仏壇なのか。
 
・物理学の大切なことを漢字で書くとお経になる。
 →物理学では0から1にならない。例えば1になる可能性があるのは、0.00001のようにどこかに1がついている。これがいつの日か1になる。
 逆に考えると、1は0にならない。すなわち無くならない。
 一度、起こったエネルギーは、形は変わるが無くならない。人の命も同じである。(諸行無常)
 
・人は怠惰により困難を知り、学ぶ。
 しかし、物事を成し遂げるためには邪魔くさい、さぼりたいと思うことをしなければならない。
 
・学問は削ぎ落とし。
 どの分野でも学べば学ぶほどシンプルになる。つまりは削ぎ落とされる。
 知識を貼り付けるのではなく、一つの物事に対して思考を分解していろいろなことに気付けるようにしていくことが学問である。
 
4.読者へのメッセージ
 「喜芳工房は持つ人の幸せを願います」
 
 「あなたのお守りのような存在でありたい」
 
 「念いの珠のすべては一粒から」
 →念珠は自分の祈りのカウントの道具として、身近にあり続けるものになってほしい。
 
 
(記者:山戸龍徳)