読書記録:ゆるい職場

古屋星斗:ゆるい職場(中公新書)

今回もタイトルに惹かれて手にした本で,ゆるい職場というものが形成させて背景から現代社会における労働観や人生観について考えさせられた.

現代の若者

現在の日本においては労働に関する法律が充実してきたことから,長時間労働やハラスメントが減少し,若者であっても厳しく𠮟られることは少なくなっている.そのような背景から以前と比較してゆるい職場が増加している.ゆるい職場に対して現代の若者の反応は,仕事が楽になったと好意的な印象を持つだけでなく,職場がゆるいために自分のキャリア等の不安を感じる場合が多くなっている.若者が不安を感じる理由として本書にもあった点が,現代の若者は白紙でない若者が存在するということである.以前は社会を知らない白紙の若者が入社してきて,入社後に自社にあった育て方をすることができたが,現在は入社前の学生時代に社会的経験を得た状態で入社する若者も存在しており,そのような若者に対しては以前のような育て方が通用しない.

少なくとも一部の新入社員はかつてのような,"白紙の状態"ではなくなっている可能性が高い.こうした新入社員に,一律のオンボーディング施策で良いのか,ゆるい職場を前提とし若者の多様性をふまえた育成の見直しが必要なのではないだろうか.

(pp.97)

かつては若者は"白紙"であった.真っ白な紙のような若者に入社後企業が様々に書き込んでいく.しかし現状は,白紙の状態を学校での活動ですでに塗っている若者が存在している.

(pp.196)

そして,社会的な経験があり即戦力人材として会社に大きく貢献してくれるかというとそうでもないようだ.それは現代の若者が,白紙でないだけでなく,「ありのまま」で「なにものかになりたい」と考えているからである.なにものかになりたい若者というのは,「タイパの経済学」という本を以前読んだときにも少し感じた点であり,現代における若者の自己肯定感の喪失が大きいと思う.そういった「なにものかになりたい」という若者は,自社の外の世界を知ってしまうと,ゆるくて成長の見込みのない会社を見切って辞めてしまうだろう.
ここまでが現状であり,そのような状況に対して会社がどのように対応していくべきか書きたいところだが,入社2年目社員の自分がこのような状況に対応していくべきかという若者側の視点で下記進めていきたいと思う.

自ら行動し周囲を巻き込む

このような社会において,会社に頼らずに自ら成長するために,まず手を動かし行動することが大切であると改めて感じた.行動することが大事であるということは以前からも感じており,行動の一つとしてnoteを始めた経緯もあるが,その行動を振り返り,自分のものにしていくことが重要であると感じた.自分のものにしていくことで,自分の成長によりつながると感じた.ついでに実際に行動することで自己肯定感も上がるだろう.

夢や目標を持つことももちろん重要だろうが,性質1を考えれば,今自分ができる一番小さな行動をする,ということは目標が明確でない若者にとっての第一歩になりうる.

(pp.132)

小さな行動を繰り返し,いろいろな世界を知っただけで終わってしまってはもったいない.それを自分のものにするという行動が,最後のポイントである.

(pp.137)

自ら行動した先にあるもの

自ら行動していく先にある社会として,本書では若者と職場の新しい関係として関係社員を増やすことについて記述があった.

現代にいたるまで「100%のA社→100%のB社」という転職がスタンダードであった.しかし,この仕事の移行は大きなリスクを孕んでいる.「こんなはずじゃなかった」という転職者の公開の声は多い.このミスマッチを減らすのが,コミットメントシフトによる仕事の移行,つまり,「100%のA社→80%のA社・20%のB社→20%のA社・80%のB社→100%のB社」といった以降形態である.
~(中略)~
さらにここで大事なのが,原職との関係が退職ではなくなることだ.コミットメントを残しているため,継続的な関係となる.この新たな関係性こそが,ゆるい職場時代の若手離職に関する厄介な問題を解決する突破口になると考える.

(pp.155)

上記のように特定の会社に100%属しているわけではない「関係社員」という位置づけを増やしていくことについて記述があったが,以前学んだ関係人口を増やす話と似ていると感じた.
主に地方部において定住者・人口という部分を伸ばしていくことは現実的でないことが多々あるが,その地域に愛着がある方や定期的に来訪する関係人口が多いと,地域の活性化につながるという話を以前聞いたが,関係社員についても同様のことが言えるのではないかと感じた.
フルタイムの社員が少なくても,関係社員が多く存在することで,その会社は活力のある職場になるのではないかと感じた.関係社員が多いことで,多様な視点で思考することが可能となるだけでなく,関係社員という他の組織に属しながらもその会社に関わろうとする熱意があるため,仕事にも意欲的になるのではないだろうか.
そして,そのような関係社員等の新しい働き方,働き先等について自ら考え,行動する若者の方が離職率が高いという記述が本書にあったが,これは当然のことだと感じた.

自律的な姿勢を身に着けている若者の方が離職率が高い.

(pp.175)

自ら考える自律的な姿勢を身に着けている若者の方が,色々思考し行動した結果,自分に最適な居場所を自社以外に見つけ,行動することが多くなるため,離職率が高まるのは当然である.むしろ,何も考えていない人が大半であるから,そのように自ら考え行動することが「離職した」という目立つ行為になってしまっているのではないだろうか.思考することができる人間として生きているのであれば,思考した結果,自社以外の環境に移るという行動をとるべきではないだろうか.
また,そのような自律的な人ほど,何も考えずにただ単に仕事をしている人と仕事に対する温度差もあり,一緒に仕事をしたくないと感じやすいのではないだろうか.そして,離職という形で若者に逃げられたと感じている会社もそのままで良いのだろうか.若者に逃げられる会社ではなく,若者にキャリアアップにつながると思われる会社に変わっていく必要があるのではないだろうか.

そして,我々がこのような時代に成長し,社会で活躍するために必要なのは現場を知ることであると感じた.職場においては,若者の離職率を考える際に,若者が置かれている状況を知らない人が対策を考えている限りは離職率の問題は改善しないだろうし,現場を知らずに自分のキャリアだけを語っている若者は,いつまでたっても具体性のないことしか考えることができない.
そのために実際に物事が起こっている現場を見て,考えることが重要である.現場を見ることで知ることのできることもあるだろうし,現実世界を生きている以上,現場で起きていることをなかったことにすることはできないし,その条件は平等である.

現場を知り,自ら考え成長していくために重要なこととして,仕事の外側での行動と余白であると感じた.
仕事かどうかに関係なく常に周囲にアンテナを張り続けて,考え続けることで,視野が広がり,自らの成長やキャリアアップにもつながると感じた.そして,そしてそのように行動していくために必要なのが余白であると感じた.長時間労働でなくても仕事等に追われている状態が続くと仕事を捌くことで精一杯なってしまい,せっかく新しいことに出会えるチャンスがあるのに,それがチャンスであることに気づくことが出来ずに,それを見逃してしまう可能性がある.そのためにも,普段の仕事や生活の中で余白を持ち,新しいことを受け入れる場所を確保してくことが重要であると感じた.これは前回の投稿でも記載した「半身で働く」という考えに近いと思うが,余白のある社会の方が豊かな社会であると感じるし,そのような生き方を心掛けたいと感じた.

労働時間の縮減やコミュニケーションスタイルの変化によって成長機会の付与が難しくなり,職場だけで育てることに限界が来ているのであれば,その変化を逆手にとって取りうる方策が一つある.「職場の外を使う」のだ.そして,この方策が第二の難問に対する有効な回答となることもわかってきている.

(pp.180)

仕事にも,育児にも介護にも,そのほかの活動にも,当然その前後に"余白"が生まれる.その"余白"で何をしようが個人の自由なのだ.むしろ,その"余白"の経験が生きる社会にすることにポイントがある.若手を含め,本業以外の割合が増えてきているのだから.

(pp.226)

ゆるい職場から現代の働きかたについての内容であったが,いつ会社を辞めてもいいと感じている白紙ではない身として,その考えが間違ってはいないと感じることができた.また,日々生活していくうえで余白を大事にして,常に考え行動しながら生きていきたいと感じた.そして,現実世界に生きている人間として現場を見ること知ることを大切にして、本を読み,考え,発信するということを続けていきたいと感じた.

#読書記録 #ゆるい職場 #余白


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